河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2353- ラインの黄金、インキネン、日フィル、2017.5.26

2017-05-26 23:17:47 | オペラ

2017年5月26日(金) 7:00-9:50pm 東京文化会館

JPO プレゼンツ
ワーグナー 作曲
佐藤美晴 プロダクション
ラインの黄金    146′

キャスト(in order of voices’appearance)
1-1.ヴォークリンデ、林正子(S)
1-2.ヴェルグンデ、平井香織(S)
1-3.フロスヒルデ、清水華澄(Ms)

2.アルベリヒ、ワーウィック・ファイフェ(Br)

3-1.フリッカ、リリ・パーシキヴィ(Ms)
3-2.ヴォータン、ユッカ・ラジライネン(BsBr)

4.フライア、安藤赴美子(S)
5-1.ファーゾルト、斉木健詞(BsBr)
5-2.ファフナー、山下浩司(BsBr)

6-1.フロー、片寄純也(T)
6-2.ドンナー、畠山茂(BsBr)

7.ローゲ、西村悟(T)

8.ミーメ、与儀巧(T)

9.エルダ、池田香織(Ms)

ピエタリ・インキネン 指揮 日本フィルハーモニー交響楽団

(duration approx.)
序奏 6′
第1場 20′ (場面転換含む)
第2場 44′ (場面転換含む)
第3場 29′ (場面転換含む)
第4場 39′
第4場ハンマー 8′


日フィル東京定期は通常サントリーホールで金土。サントリーが改築中の為、上野での公演。
指揮のインキネンはリングの実績を積んでいるし、日フィルとはワルキューレ第1幕や、ジークフリート抜粋、カミタソ抜粋もやっている。今回は日フィル・リングサイクルの初年になる。

プログラムクレジットは特にないがセミステージでの上演。ソリストはステージ上のオケの前で衣装付き、動きありでの歌唱。指揮者よりも手前で歌うので、指揮者とソリストは阿吽の呼吸、それとアイコンタクト。呼吸は良く合っています。
プロンプター代わりに4台のモニターがシモテからカミテまで並べてある。

今日の初日は2人体調不良でキャンセル。代役ローゲの西村とミーメの与儀は、先達て3月のびわ湖ホールでのラインの黄金の初日に出ている。

2286- ラインの黄金、ハンペ、沼尻、京都市響、2017.3.4 


ホールを暗くし、譜面の明かりだけが光る中、やや音色相違のある複数ホルンソロによる序奏から開始。
1場が始まるところでカミテから歌う順番にノースリーブの思い思いのロングドレスでラインの乙女たち3人衆が登場。
2場4場、それに3場も、ワーグナーのストーリー全部入れてこの長さだと話がごちゃごちゃしていてもう少し長くてもいいような気がするし、2場でローゲが、愛を断念したものが一人だけいるというくだりの下ごしらえとしての1場のレングスは内容も含めてちょうどよいぐらいで、この1場のストーリー展開の比率で言ったらやっぱり2,3,4場はもう少し相応な長さとなってもいいような気がする。特に2場4場はたて込んでいますね。

14ロール中、2場で8人が同時に乗っかるあたりは舞台としても特にたて込んでいる。が、
この8人目の役どころローゲ代役西村が出てきたところで場がギュッと締り、ストーリーを追う面白さも倍増。ホールの空気感が変わりました。3月にびわ湖で同役で出ていたのが大きいですね。あのときはややかたさが見られたが、今日はリラックス、余裕のリラックス。ここの場から最後まで出ずっぱりですし、主役モードですね。動き、ナチュラルなウィット感、役の積み重ねを実感します。歌う劇場がたくさんあればそれに越したことはない。演じて歌う場所があればいくらでもうまくなっていきそうな気配。

1場。
まず3人の乙女たち、動きが結構あるとはいえやっぱり準コンサートスタイルならではのコンディションの良さを感じます。お三方とも声が前に出ていて、と言いますかこのあとの役どころのかたがたも含め全員、歌唱では正面を向くので声の出具合を十分に味わうことが出来る。快感ですな。
この3人の声の強じんさとバランスがとてもいい。最初から堪能。
これにアルベリヒが絡んでくる。ファイフェのバリトン声、魅力的です。ザラザラしてなくて滑らかで高低が自然で良く出ていて聴きやすいもの。少し幅広な声で、突き刺すようなところがなくて最初から最後までものすごくよく出ている。つまり日フィル的な声。
それと動きがいい。アルベリヒの哀しさみたいなものまで透けて見えてくる。俄然素晴らしいアルベリヒ。

2場。
神様夫婦の登場。ラジライネンはもう、何回観たかわからない状態。このオペラではローゲに役をくわれる、その前によく歌っておこうといった気配でもない。通常のジョブですな。
フリッカのパーシキヴィは初めて聴く。大柄で声も大きい。やや硬めの声質。ダンナにとっては山の神みたいなもの。その雰囲気よく出ている。このシーンの二人のやりとりを見ておいてワルキューレ2幕にはいれば、また味わいも格別だろう。フリッカは裏表の陰がないストレートな歌唱でした。

フライアが可憐な歌唱をする中、巨人二人が人間サイズで登場。ちょっと裏社会的ななり。ファーゾルトがメインとなる歌唱。ファーゾルト斎木はアルベリヒと同じく柔らかい声で大きく歌う。聴きやすい声質ですね。キャラクター的にもきまっている。ファフナーの声での出番は最初の方はあまりありません。この場と4場、要所を突くきかん坊的な歌いくちでこれもはまっていました。

フライア窮地に兄弟登場。フロー片寄の黒光りテノール。贅沢なキャスティング。力強いテノールで素晴らしい。次作のジークムントお願いします。

ということで2場、ここまで7人登場。8人目が冒頭に書いたローゲ西村ということになります。ストーリーもここから面白くなるし、自然な振る舞い、ローゲキャラ全開。余裕ですな。この役どころ、歌い込むほどに引き締まったいいテノール声にさらに躍進できそうな気配です。2場のここから、それと次の3場。ほとんどローゲが主役の大活躍。絶賛拍手。

インキネン棒は、オペラにあるような極端な濃淡はせず、歌い手とのコンタクトをうまく取りながらオーケストラを煽り立てることなく抑揚コントロール。場面転換はなだらかな表現で場そのものと同じく流れが自然。オーケストラはインキネンについていくようなところもありますが、自分たちが音楽を作っていくという強い意思、張り切り具合、それに研ぎ澄まされた神経、コンセントレーションがコンマス以下全員に。編成上ブラスにトラは多いもののミスタートロンボーンをはじめとしてトランペットからチューバまで、見事なプレイ。ブラスセクションの柔らかい力感、奥行き感は、同じ指揮者によるワルキューレ第1幕を思い起こすに十分な演奏で、お見事!

3場。
ミーメ、短い役どころながら与儀さんの歌いこまれたテノール。ここも贅沢キャスティング。キャラ越えか。
3人のやりとりでは、ヴォータンは歌の出番があまりなくて、アルベリヒのファイフェとローゲの西村のやりとりは聴きごたえ満点。アルベリヒがだんだんと気持ちが動いていくさま、ローゲの変わらない策士ぶり、双方秀逸。ストーリー展開が陳腐に陥らずハイレベルの歌唱を堪能。大蛇は天井にそれらしき姿があらわれたが蛙はそうもいかず。

4場。
エルダがストーリーを割らないと先に進めない。大事なポイント。先のことが見えるエルダというのなら、ヴォータンがそのまま指環をせしめた時空もあるということか。
エルダ池田も、もう何度も見ている。役得のように思えるのはオネーギンのグレーミンみたいなものか。
14キャラ中エルダのみ舞台前面ではなく、シモテからオケに向かい雛壇中腹あたりでの歌唱。透る声でオケサウンドをものともせず強じんなエルダぶしを唱える。彼女用の音場がステージ全体に広がっていくようだ。スバラシイ。

この4場はストーリーがたくさんあってたて込んでいる。50分ほどの中に詰め込まれてしまっている。ここ100分は欲しいですね。
シリアスな神様連中、半神ローゲのウィットなたたずまい。音楽はどっちに寄っているのだろうか。神様たちにか。
ハンマーの後、神様ワルツが盛大に鳴る中、入城。そのワルツはワルキューレ冒頭の3拍子へと続く。
おわり