河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2181- ユジャ・ワン、ピアノ・リサイタル、2016.9.7

2016-09-07 23:45:15 | リサイタル

2016年9月7日(水) 7:00-9:45pm サントリー

シューマン  クライスレリアーナ  28′

カプースチン  変奏曲op.41  6′

ショパン バラード第1番ト短調op.23  9′

Int

ベートーヴェン  ピアノ・ソナタ 第29番変ロ長調  12′3′16+12′

(encore)
シューベルト(リスト編)  糸をつむぐグレートヒェン  3′
プロコフィエフ  ピアノ・ソナタ第7番第3楽章 4′
ビゼー(ホロヴィッツ編)  カルメンの主題による変奏曲  3′
モーツァルト(ヴォロドス/サイ編)  トルコ行進曲  2′
カプースチン  トッカティーナop.40  2′
ラフマニノフ  悲歌op.3-1  4′
グルック(ズガンバーティ編)  メロディ  3′


ピアノ、ユジャ・ワン


この前の日曜に神奈川県立音楽堂にユジャを聴きに行ってきまして、今日は2回目。
2016.9.4(日)リサイタルはこちら

その日と同じく前半プログラムは変更。日曜はクライスレリアーナ、カプースチン変奏曲、この2曲に変わったが今日は、その2曲にさらにショパンのバラード1番を追加し、前半だけで3曲の1時間コース。

クライスレリアーナの1音目から始まりました。が、あらためまして、サントリーホールの音響の悪さをまず実感。いつものことながら、ピアノの縁取りがピンボケになるというか、もやーとしてしまう。コンチェルトでも同じで曇り空の先を、目を凝らして見る感じ。
どなたの時か忘れたが高音ピッチがフラットになっていくのを明瞭に聴くことがあった。あのときは他の方も同じ感想があって、このホールの音響の悪さはピアニストにとっては弾く前から、何も悪いことはしていないのにペナルティーを科せられたようなもので、大いにマイナスですね。
神奈川県立音楽堂とは比べものにならず、上野の大小はここよりはるかにいい。サントリーは来年前半、半年かけて改修するようなので、音響の改善もしてほしいものだ。ピアノだけでなく全てのインストゥルメントで同じような傾向だと思いますし。
まぁ、著名演奏家出演の時は、聴衆側もある程度、音を補正して聴いていて、イメージをより正しい方向に持っていっているのではあるまいか。このホールでやる力量のプレイヤーは相応に大変だと思う。
今日の最初の直感としては、ユジャさんはもしかしてこのホール音響の悪さを認識しているのではないか。


こんななか、ピアニシモからメゾフォルテあたりのアンプリチュードで弾くユジャの極美ニュアンスは、上記の事を少し忘れさせてくれる。ガラスのようなピアニシモは耳をそばだてるほどに切れ味良く、美しい。どこにあっても物憂げなフシが多くを占めるシューマン。ドロリとしない彼女のピアノは現代的だと思う。これまでに無い感性だと思います。
ドロリとしない。起伏のあるパッセージでフォルテからピアニシモに移るとき、情を込めたようなタメのようなものを一切作らない。それでいて角張ったところが無くて自然な進行に聴こえてくる。彼女の技でしょうね。こういった自然な技はベートーヴェンではさらに生きてくる。打楽器さながらのいかついた叩きは彼女の頭の中にはなくて、これを聴いている聴衆もそんなことはワイプアウトされている。
クライスレリアーナ、なんだかとっても小品に見えました。

2曲目のカプースチンの変奏曲。憂さ晴らしといっては語弊があるかもしれないが、プレイヤーではなく、作曲者がシューマンに対しての憂さ晴らしのような曲に聴こえてしまう。この前聴いて今日も、立て続けに2回聴くと底の浅さが見えてくる。理解が深まる感覚とは異なる。
前半の締めはショパン。最初のシューマンと同じようにウェットなところがない。ドライな義務的な表情も無い。輝くガラス細工。暗さと明るさが綯い交ぜになった曲。響きは精緻を極めほれぼれする中、ホール音響の事はようやく忘れることが出来た。美しい演奏でした。


後半の大曲。いきなりミスタッチからスタート。すぐに立ち直りました、といいますか、それは聴いている側の心の動きだけなのかもしれない。
この前の演奏と同じように、第3楽章全部、それに終楽章の序奏部分、ここらあたり、普通の演奏とだいぶ印象が違う。この前はラヴェルの新作を聴いているようなフレッシュな感覚と書きましたけれども今日も同じような錯覚に陥った。このアンダンテ・ソステヌート、隙間をまるで感じない。この空気感。別次元の位相。
音の強弱は何層もありそうだ。それもシームレスに変えられていく。微妙な強弱で流れていく。極美ニュアンス。
正確で均質な音価レングス、冷静なコントロールとバランス感、知的な奥行きフィーリング。
色々言葉が出てくる。
両指が大きく広がり、同じレベルの意思が働いているのか、ぶれがなく均質に鍵盤が押さえられていく。ピアニシモの清らかな流れは聴きものですね。ベートーヴェンが聴いたらどう思うだろうか。心の耳。
素晴らしい表現力。位相が格段に違う別次元ベートーヴェンワールドを満喫しました。
ありがとうございました。

鳴りやまぬブラボーと拍手。アンコールはなんと、7曲。実力と人気兼ね備えたスーパーピアニストに誰も帰らない。自席からよく見えたタッチパネルの譜面を持って下がったところでようやく、幕。


ホールは主催者側でおそらくコントロールしているバックのP席以外は満員の盛況。
P席は3,4列ほど埋めていたようですが、それを見た客が後半、ほかの席から移ってきて空いているところに着席。スタッフに自席に戻されていたが、女性6名がスタッフの指図に従わず頑として動かず、と見ました。これで後半開始が少し遅れましたね。別席から眺めていると、彼女たち自分たちの立ち位置が見えていないというのがよくわかって興味深いものがあった。
なぜP席上部を空席にしたのかは主催者に尋ねないとわかりませんが、当夜は収録するということだったので、もしかしてあすこらあたりに座っていた方々は事前に映されていいという承認をしていたのかもしれない。(想像)

ユジャさんは、前半、薄いパープルのロングドレス。後半、シースルー風のロングドレス。この前とは少し違いました。
おわり
 

 


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