2017年5月3日(水) 6:30-9:45pm 邦楽ホール、石川県立音楽堂
オール・ベートーヴェン・プログラム
ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ 全曲演奏 第2夜
第3番ハ長調 菊池洋子 12-6-3-5′
第7番ニ長調 木米真理恵 5-8-2+4′
第8番ハ短調 悲愴 米谷昌美 8-5-5′
第10番ト長調 近藤嘉宏 7-6-4′
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第11番変ロ長調 渡邉康雄 8-7-3-6′
第14番嬰ハ短調 月光 横山幸雄 6-2-5
第17番ニ短調 テンペスト 石本えり子 6-8-5′
第24番嬰へ長調 テレーゼ 山田ゆかり 4-3′
第25番ト長調 竹田理琴乃 5-3-2
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ガル祭2017
昨晩の初日は9曲、今日も9曲、男性陣が一人増えて3名、女性6名という布陣。
作品2の3曲のうち、この日は3番からスタート。
第3番
菊池さんはメトロポリタン・エリアでのコンサートによく出ていて、モーツァルトのコンチェルトを何度か聴きました。
今日は30分に迫ろうかという大曲。小菅さんやアリスさんのCDを取り出す機会多いのですが、こうやって生で聴く3番は格別。
シンフォニックで大がかり、第2楽章アダージョの頭は、楕1楽章アレグロのメロディーラインそのままではないのかと思わせてくれる親近性の強いもので、なにやらそういった気配が随所に聴かれる。強い構成力を感じる。この両楽章で言いたいことはあらかた尽くされている感じ。まぁ、だまっていてもフォルムは自然に出来上がるのでその部分はベートーヴェンに任せておいて、といった演奏もありですね。
菊池さんのタッチはみずみずしいものですが決して角張らない。鋭角になることのない響きで、まるで真綿の手袋をしていてそれ越しに鍵盤を押さえているような鳴り。以前聴いたモーツァルトよりも柔らかでやや幅があるような印象。
曲は尻つぼみというわけでもないが収束していく、響きはさらにまろやかになる具合でプレイヤーの存在が徐々に大きくなる、充実の演奏でした。
第7番
昨晩27番を弾いた木米さんが弾く。この曲は20分ほどあり規模が大きく、ものものしい旋律が1,2楽章と続く。ちょっと軽くした3,4楽章が好み。しっかりとしたリズムの中、進むにつれウェットな詩情がさわやかに流れてくる。短い後半楽章のさりげないプレイが魅惑的な演奏でした。素敵でした。
第8番 悲愴。
今日午前、横山さんのリサイタルで聴いたばかり。今度は米谷さんの演奏で。一日に2回も聴ける。ハッピーですな。
横山さんとは別路線。間の取り方が独特、体の動きを見ていないと次の展開への入りがわからなくなるようなところもありますね。緊張感を作り出すための間というわけでもなくて、なんというか、デリカシーな流れと一体化したような具合です。
ひとつのカクテル、作り手によって大いに味わいが異なる。その違いも楽しめる。贅沢の極み。
第10番
近藤さんの出番。さっそうと登場。周りの聴衆からほぉとため息が漏れる。偉大なものは単純である(F)、軽々しさを一瞬たりとも見せない。集中したプレイでした。第1,2楽章のつながりを強く感じさせてくれるのはそのコンセントレーションのたまものですよ。
正確でウィットに富んだ表現、音がきれいに弾む。スバラシイ。
ここまで4曲、あっというまの出来事でした。昨晩と同じく短い休憩。
後半は11番から。
第11番
御大登場。この曲も規模がデカい。このままオケ用に編曲すればシンフォニーになるのではないのか。指揮者の渡邉暁雄のシベリウスなどは殊の外豪快な筆の運びで、見た目と違ったところがあったが、御大は力が抜けていて力まず、きれいな音で、大きな体躯、ピアノを抱え込んでしまいそうな勢いのようにみえるけれども、出てくる音楽はクリアな鳴りのベートーヴェン。進むにつれてフォルムの塊から火花がビビッと出てくる。味わいのある演奏でした。
第14番 月光
横山さんの演奏は昨晩ワルトシュタイン、今日の午前は悲愴、熱情を聴きました。ここで、月光。
楽章の対比感、コントラストがどこまでもよく効いている。楽章毎のメリハリのよさにとどまらず楽章対楽章が呼応するような具合で全体俯瞰が素晴らしくよい。終楽章の過激さはエキセントリックな様相を呈する。そんな中、冷静に見つめるもう一つの目があるような気配。
第17番 テンペスト
昨晩16番を弾いた石本さんが今度はテンペストを。
魅惑的な曲ですが、ニ短調はだいたいやにっこい。ブル9、第九、シュマ4だいたいやにっこい。聴き手の積極的な受け入れる力を求められますね。まぁ、好きですが。
石本さんの演奏は第1,2楽章のつながりを素晴らしく良く感じさせてくれるもの。ほとんど一体化している。終楽章はなにやら別の魅惑的な曲を聴いているような趣きで、2曲聴いた様な聴後感。
第24番
短い序奏が魅惑的な曲。短い序奏とはいえ曲自体短いものなのでバランスとしてはちょうどいい。山田さんにはちょっと物足りないかな、弾き足りない感じに見えました。
主題の曲想変化の妙というよりも、断片的なアクセントとその連鎖のように聴こえてくる。それはそれでお見事なもので印象的でした。
第25番
竹田さんが登場。今度は男の聴衆からほぉとため息がもれる。
シンプルな曲で両端楽章は楽しそうに弾いている。音楽もその通りにリズミックなもの。
中間の短調楽章が物憂げで印象的。ここらへんにも彼女の真価があるのではないか。
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ということで、前半4曲、後半5曲。初日に続き今日もみなさんの素晴らしいベートーヴェン、堪能しました。
おわり