河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

PC版に一覧等リンクあり。
OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2324- 悲愴、熱情、横山ピアノリサイタル、2017.5.3

2017-05-03 13:15:31 | リサイタル

2017年5月3日(水) 11:00-11:50am 金沢市アートホール

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第8番ハ短調 悲愴  7-5-5′

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調 熱情  10-6+7′

ピアノ、横山幸雄


ガル祭2017、ベトソナ全集企画とは別の公演。
前の晩のベトソナ企画第一夜でワルトシュタインを弾いた横山さんの単独リサイタル。
熱情のコントラストの妙が際立っている。両端楽章の深刻さ、過激さ。鮮やかです。それにサンドウィッチされたアンダンテ、シンプルな進行は冷静な横山さんのもう一つの面かもしれない。多様なベートーヴェンの心の動きが見事に表現される。スバラシイ。

1曲目に置かれた悲愴は、リズミックというよりもさざ波小波のような音の運び。独特な音響が醸し出される。アダージョ・カンタービレでも流れるようなさざ波感が美しい。

ワルトシュタイン、悲愴、熱情、聴き応えありました。このあと月光、コンチェルトの1番などがひかえていますね。楽しみです。
おわり


2323- ベトソナ全曲演奏 第1夜、2,9,12,16,21,22,26,27,28、ヴァリアス・アーティスト、2017.5.2

2017-05-02 23:10:55 | リサイタル

2017年5月2日(火) 6:30-9:45pm 邦楽ホール、石川県立音楽堂

オール・ベートーヴェン・プログラム
ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ 全曲演奏 第1夜

第2番イ長調 平野加奈 5-6-2-7′
第9番ホ長調 松井晃子 5-3-4′
第12番変イ長調 葬送 山田ゆかり 8-3-6-3′
第16番ト長調 石田えり子 5-11-6′

int

第21番ハ長調 ワルトシュタイン 横山幸雄 8-4+9′
第22番ヘ長調  塚田尚吾 6-4′
第26番変ホ長調 告別 鶴見彩 7-4+6′
第27番ホ短調  木米真理恵 5-8′
第28番イ長調 田島睦子 4-5-9′


石川・かなざわ
風と緑の楽都音楽祭2017
ベートーヴェンが金沢にやってきた


ベートーヴェンの企画もの、4日間でベトソナ全32曲、同期間3日間でベトピアノ協全5曲、同期間ベト交全9曲、等々を行うもの。
ピアノソナタは32曲を4日間19名のソリストでプレイ。前代未聞、超破格の企画。29番は予定していたソン・ヨルムがキャンセル、バリー・ダグラスが急遽出演。

ベトソナ1日目、途中休憩は15分ほど。約3時間で9曲。この日は男性ピアニスト2名、女性ピアニスト7名、全て違うプレイヤー。壮観ですね。

第2番
4日間の最初の曲は作品2の3曲のうち2番からスタート。1番の駆け上がるような音形の逆を行くような下降する音形で始まる。平野さんのピアノはその下降形さえ上昇していくような息づかい。きっちりとした音価レングス、正確でクリア、霧が晴れていくような気配。
作品2の3曲は4楽章構成で規模が大きく、聴く方としてはシンフォニックな構えがインプットされているので、まぁどこまでも聴いていける楽しさはある。手ごたえ十分の演奏でした。

第9番
2個の作品14のうち一つめ。リズミックでやや愁いのある運びの曲。松井さんのピアノは性急にならず、柔らかいタッチが印象的。リズムが強調されるあたりでやや冷たい感じも。悲愴の整理体操のような雰囲気が醸し出される曲ということかな。

第12番 葬送
黒のロングドレスで葬送を弾いた山田さん、多彩な表現力、緊張感を作り出す独特な間、ゴツゴツと変化していくパッセージを、ドラマチックにパウゼしながら、数珠のようにつないでいく。ベートーヴェンの作り出したストリームを自分のものとして噛み砕きつつ再構築していく様は再創造を越えている。20分越えの緊張感。形式感よりテンペラメント、第3楽章のみならず全楽章全てに才気爆発、ベートーヴェンのエモーショナルな心の動きにインスパイアされたほれぼれする演奏、お見事。感動しました。

第16番
石田さんのピアノは殊の外ダイナミックな演奏で、時折バスがピチカート風に聴こえてくる。ナイスサウンド。進むにつれてデリカシーが増してくる。気持ちの多様なあたりが垣間見える。

ここまであっという間の4曲。4人の女性プレイヤーによる多彩な表現。クラクラしてくる。
ここで休憩。
30分ほど休めるかなと思ったが、あまい。ナビゲーターの潮さんは簡潔明瞭なご案内でいいもの。それでも休憩は15分ほどしかとらせてくれない。演奏あるのみですな。3泊4日来た甲斐があるというものよ。ひたすら演奏、いいですね。

第21番 ワルトシュタイン
横山さんの弾くワルトシュタインは思いもかけず、なんだか、ぬけた明るさのようなものがあった。
余裕を感じさせる弾き、各主題フレーズ頭の歌いくちには大いなる余裕を感じさせてくれる。いやみにならず自然、というよりもこの余裕技、ピアノにもともとある一つの技巧エレメントなんだよといった手慣れたもの。至芸ですな。
アダージョ・モルトから終楽章の水面(みなも)を走る水切りの輪のような魅惑的なベートーヴェンリング水模様。鍵盤を浅く手前に軽く掻くようにして、かつ滑らかな響きはビューティフルの極み。第1楽章の激しさとの対比もバランスしていて、何から何までうなる演奏。横山さんはこのような対比感覚もさえていますね。お見事すぎる演奏で大満足。

第22番
塚田さんは上背のあるかたで鍵盤に突き刺さりそうな骨っぽい感じ、演奏もそうでしたね。19,20とこの22番は規模が小さくてシンプルなものですけれども、相応な味わいがありました。ジャストフィットな演奏でした。良かったと思います。

第26番
ちょっとやにっこい序奏のあと提示部はワルトシュタインの終楽章のモードを大いに感じさせてくれるといつも思う。鶴見さんの進行は非常にバランスのいいもので均整がとれていて形式の美しさを感じさせてくれる。対楽章の平衡感覚もよかったです。

第27番
この第2楽章は一度聴いたら忘れられないメロディー。メロディーメーカーベートーヴェン、少しあまくて、木米さんの演奏は、淡々としていそうに見えて徐々にしなりが効いてくる。丘を二人でかけている感じ。その起伏は柔らかく流れていく。

第28番
田島さんのピアノはすぐに没頭ベクトル。呼吸が自然で音楽が息づいている。
楽章が進むにつれて機能美的なサウンドとなっていくもので、深淵な世界にベートーヴェンが踏み込んでいる感じ濃厚。
といったあたりの両面を見事なハイブリッド演奏で魅せてくれました。


ということで、後半あっという間の5曲、初日全9曲。夢のようなひと時。思う存分楽しませてもらいました。ありがとうございました。
明日、明後日、明々後日、続きます。
おわり








2322- ベトソナ1,8,22,26、松本明 ピアノ・リサイタル、2017.5.1

2017-05-01 23:31:03 | リサイタル

2017年5月1日(月) 7:00pm 小ホール、東京文化会館

オール・ベートーヴェン・プログラム

ピアノ・ソナタ第1番ヘ短調  6-5-3-8′
ピアノ・ソナタ第8番ハ短調 悲愴  9-5-5′
Int
ピアノ・ソナタ第22番ヘ長調  7-5′
ピアノ・ソナタ第26番変ホ長調 告別  8-4-6′

(encore)
シューベルト 即興曲 Op.142-3  8′
シューベルト 即興曲 Op.142-4  6′

ピアノ、松本明

駆け上がるような勢いのベートーヴェンの1番の入り、これまで幾度となく演奏してきているのであろう、そのステップはやや遅めの開始。積み重ねてきた年月を感じる。熟成したスタイルなのかも知れない。
エネルギーの照射、放射といった聴衆との火花、熱といったことよりもフォルム重視、作品の構成感への親近性をより強く感じる。ベートーヴェンのドラマチックな表現、位相が曲がるような激しい演奏ではない。飽くまでもあるべき形式が次々に陳列されているような趣き。したがって第1番全部を聴き終えた聴後感というのはフラットで、なにやら4楽章全て等速だったような錯覚に陥る。それから、ときに速いパッセージで左バスを中心にやや鍵盤に音が押し潰されるように聴こえてくる。腕を垂直に大きく跳ね上げる時があるのはそういったことを意識的に排除しているからなのかもしれない。
この1番では第2楽章のストイックでいながら抜けたような妙に明るいプレイが印象的。

プログラム冊子にある解説は演奏者自身が書いたものと思われます。その中で悲愴の第2楽章について、当初9番の緩徐楽章として書かれたが、9番が緩徐楽章無しで完成してしまい、行き場を失って8番に転用されたのではないか、と推測しているようです。それは一つの私見の開示であってこの冊子全文を貫いているのはほぼ、形式や構成感などについて、演奏もそういったことの主張が色濃い。
この悲愴においても、作品そのものが持つ構成感を構造から説明している。序奏と再現する序奏のスリルはベートーヴェンのソナタ形式、圧巻の表現で、プレイは有名すぎる次の楽章よりも第1楽章のフォルムの説得力のほうが圧倒的ですね。

第22番の第1楽章はこのままでは終わらないという事を最後の最後で魅せつけてくれるベートーヴェンの技。この楽章大詰めで呼吸を大きくとったいかにもベートーヴェン的で精神的な!高まり、松本さんのプレイはそれを逆手に取ったような消沈するベクトルのほうをピアニシモでゆっくりと強調して魅せてくれた。独特の解釈ですね。
第2楽章の機械仕掛けのような音楽はフォルム重視で、流されない演奏、お見事。

告別の序奏のあとの提示部第1主題には、毎度、ワルトシュタイン終楽章からのつながりを感じてしまうのですが、今日はあまり余計なことを考えずに聴くことが出来ましたね。
プログラム冊子にあるこの曲の標題音楽的進行をオーヴァーラップさせながら聴くことにより別の趣向で楽しめました。

全4曲にわたり細かい音符の進行が、さざ波の様にならず、物理的一音の集合体である。といったことまでわかる深彫りされた演奏だったように思います。
お初で聴いた演奏家でしたけれども色々とイメージできました。

それとアンコールではシューベルト2曲、大物アンコール、絶品でこれも楽しく聴くことが出来ました。
ありがとうございました。
おわり