河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

PC版に一覧等リンクあり。
OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2403- ツェルハ、夜、ボールチ、リーフ・ファブリック、ハース、VC2クックソン、夏夏の夜に於ける夢、ヴォルコフ、東響、2017.9.7

2017-09-07 22:48:47 | コンサート

2017年9月7日(木) 7:00-9:15pm サントリー

フリードリヒ・ツェルハ 夜 (2013)  jp  20′

ゲオルグ・フリードリヒ・ハース ヴァイオリン協奏曲第2番 (2017) wp  26+6′
  ヴァイオリン、ミランダ・クックソン

Int

キャサリン・ボールチ リーフ・ファブリック (2017)  wp  11+3′

ゲオルグ・フリードリヒ・ハース 夏の夜に於ける夢 (2009) jp  3+15+2′

イラン・ヴォルコフ 指揮 東京交響楽団


現存する作曲家3人による日本初演2本、世界初演2本、つまり国内では4曲ともに初物というプログラム。オーケストラのみ日本陣容という凄味のある配色。
この種の演奏会では盛況と言える入りでやるほうもきくほうも気合が入る。

結果的に最初のツェルハの夜。これが一番面白みがなかったという聴後感なんですが、プログラム冊子にある彼の一文には全く同感するので、どうも痛し痒しの気持ちにはなる。
昼は私は時間のもの、夜は時間は自分のもの、そう言うツェルハの夜。流星が帯状落下、カーテンのようになる。そのように見える一種の心象風景なのだろうか、そう思うとイメージは湧いてくる。雨を線で表現した歌川の絵が見えてくるようだ。面白みは無かったが、2013年作深みは増しているのかもしれない。
ヴォルコフの棒はほぼ3拍子振りの明確なもの。ワルツのようではなかったが。
ウィンドはオーボエが抜けた一列整列。しもてからフルート、クラ、バスーン。その後ろに同じく一列でトランペット、ホルン6、トロンボーン。ウィンドの前の弦は変則16-6-6-6。それに奥におびただしい数のパーカス類。
のっけからヴォルコフの現音オーソリティのクリアな棒が見事に冴える。

次の曲はこのフェスティバルのテーマ作曲家ハースの本年2017作のヴァイオリンコンチェルト2番、これは世界初演。
ハースがこの作品をデディケートしたヴァイオリニスト、ミランダ・クックソン自らのプレイ。タブレット譜面を見ながらの演奏。
9個のピースが連続演奏される。1プレリュード、2カデンツァ、3残響とフィードバック、4三声のインヴェンション、5ズグラッフィート、6ソット・ヴォーチェ、7インテルルデウム、8純性音程、9アリア。
副題が九つもあれば曲自体の副題は不要なのだろうね。バラバラの事を言っているようで何故かまとまりのある作品となっていて魅惑的。飽きさせない曲。解説をチラ見しながら聴く初物遭遇の醍醐味を満喫できました。
曲は途切れないがはっきりとモードが変わるので初物でも明確に追うことが出来る。最後のアリアが長い。安息の調性回帰的なモードが感じられる。
ヴォルコフ棒は最初から非常に速い4拍子主体。速いのだが、出てくる音はゆっくりとしている。別の二つの進行が感じられるものでユニークでした。おそらくあのように速く振らないと演奏のほうが成立しない曲なのだろう。細かい箇所での小さな動きが絶妙。東響の演奏が見事過ぎた。この表現力、指揮者のヴォルコフのみならず、コールされて登場した作曲家ハースも大満足の東響プレイであった。
という具合で、ヴァイオリン協奏曲とは言うもののオーケストラの魅力が非常に大きな作品でした。ソロヴァイオリンはやや太め、離れ業的パッセージ走行よりも終始高音で奏でられる微妙な音程でのプレイ、心的慎重さを伴うような表現がメイン。水銀の丸い膨らみがプルプルと動きながら静止。
全9ピースの解説は圧倒的にわかりやすかった。これ、日本人作曲家の自前解説では決して得ることのできないもの。冒頭のツェルハの一文にはここでも納得(笑)。

休憩を挟んで後半一曲目は1991年生まれ、コロンビア大学在学中のハースの弟子、キャサリンの本年2017年作品。世界初演作。インスパイアは、ヨーロッパアカマツが内部で水が循環するときに発するパチッ、ポンッといった微細な超音波音響。
作品は別な二つのものから成り立っているのが明らかにわかる。一つ目はアカマツサウンド。二つ目は派手なサウンド。維管束組織音響の描写とのこと。つまり両方とも野外録音をもとにしていながら、現実とイメージの世界をくっつけたような作品になっている。
奇抜な発想の曲で閃きを感じさせてくれる。閃きが他人に伝わる、これポイントです。
現音スペシャリスト・ヴォルコフの棒はますます冴えてくる。この作品も4拍子主体で、一見大振りでありながらポイントで要所をつく素晴らしく明快な棒、唖然とする見事さ。2008年に都響相手にトゥーランガリラを振った時とは見た目は少し変容しましたけれども、冴える棒はさらに深みを増した。細身で軽そうでよく動けるのもいいですね。
キャサリンさん登場しました。満足気です。世界初演ですからね。

最後の曲はハースに戻って、タイトルだけ見て、ははんとわかるもの。メンデルスゾーンへのオマージュ。
この作品もパーツが見事によくわかるもの。
ざわめき-真夏の夜の夢ov.-フィンガルの洞窟-真夏の夜の夢.メロドラマ-静かな海と楽しい航海-それらのシャッフル的カオス-ざわめき
わかりやすい。
ハースはメンデルスゾーンを音色旋律の使用、十二音技法的な旋律の使用の観点で当時の前衛作曲家との位置づけ。そのようなスタンスで作曲されたオマージュものなのだろうからそれを頭の片隅に置きつつ聴くと異様に面白かった。音色旋律はハースの味付けがかなり濃い。これだけの大編成オケにして初めて可能となったものと思いますね。何やら会場空気の位相がねじれていくような雰囲気となる。ディープでフレッシュ。十二音ももちろんそうなのだろうがこれは聴くほうは既に慣れていますしね。
冒頭のざわめき、ヴォルコフは棒を構える前にズボンの右ぽっけからスマホを取り出し、デカい譜面と一緒に指揮台に置く。指の指示回数は時間指定のものなのだろうかと眺めながら思う。ざわめきが終わったところでポッケにしまう。最後のざわめきでは活用されない。
最後のざわめき前のシャッフルカオスは前4主題の錯綜が圧倒的でした。こうゆう曲を聴くと現音を聴いているという気持ちの安定感のようなものを感じることが出来る。心地よい。

と、ハースのメンデルスゾーン賛美で即座に思い出したのがバレンボイムの弁。どこの一節だったのか今判然としないのだが、メンデルスゾーンはいてもいなくてもよかった、みたいな文脈がどこかにあったなぁ。
作曲家と演奏家の違いなのだろうか、多様なフィーリングの世界。

素晴らしい初演もの。満喫しました。ありがとうございました。
おわり


サントリー芸術財団 サマーフェスティバル2017
サントリーホール国際作曲委嘱シリーズ No.40(監修:細川俊夫)
テーマ作曲家<G. F. ハース> 管弦楽