河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

PC版に一覧等リンクあり。
OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

1 カスクをカクス

2006-12-11 00:01:00 | 六本木にて

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静かな悪友S「カスクってぇのはどういう意味なんだい。」

河童「樽らしい。」

「木樽かい。」

「そうだね。ドラム缶じゃない。」

「その木樽でお酒が寝てるのかい。」

「そうらしい。」

「木の効果は?」

「僕は思うんだ。木は気に通じるんだ。空気の気、大気、雰囲気、気配、色気。。

大地に根をはやした木は地上の全ての気を吸い、呼吸しているんだ。その深い呼吸がしみこんだ木で作られた樽でお酒が寝てるんだ。ある意味良いウィスキーが出来上がるのはむしろ当然ではないのかな。」

「なるほど。でも多けりゃいいってもんでもないだろ。」

「どういう意味?」

S「森林さんって知ってるかい。もりばやしさんって。」

河童「わからん。」

「気が多い人間をもりばやさんっていうんだ。この漢字、見てごらん。木が5本もある。」

「森森さんだと6本だな。」

「気が多すぎるのも問題だ。じゃぁ、うどの大木(たいぼく)って知ってるかい。」

「役立たずのことかい。」

「うどの大森(たいもり)ってのは?」

「それならよく知ってるよ。IT革命を、イト革命って読んだ亡国の首相だろう。木が3本の。」

「よく知ってるね。」

「そりゃそうさ。君、学校の後輩だろうが。」

「すまん。かえり血だね。」

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S「それでその熟成なんだが、ホワイトオークの樽で寝てるだけでいい酒ができるのかね。」

河童「僕は思うんだ。使用済みの樽もいいけど、まっさらな樽を使って欲しいときもあるね。」

「たとえば?」

「そうだね。真新しい樽に寝かせながら、音楽を鳴らし続けるというのはどうかな。1年でも2年でも10年でも。」

「蒸留所で音楽をね。でも生演奏を10年も続けるわけにはいかんな。」

「そうさ。本当はグラスゴーのスコティッシュ・ナショナル管弦楽団のような透徹した透明感のあるサウンドでも鳴らし続けたいところだが、そうもいくまい。

今はオートチェンジャーのCDプレーヤーがあるから停電でもない限り鳴らし続けることができるわけさ。」

「いい考えだ。で、誰の曲を?」

「それなんだ、問題は。どんな周波数の波長を流せば、樽にどのような振動をもたらし、それがお酒にどのような効果があるのか。これって誰も何も今まで検証してないよね。ときが長いだけに実地検証は無理だ。」

「じゃ、想像してみよう。」

「まず、ベートーヴェンはだめだね。特に中期のドツキの音楽はお酒に悪い。音楽の浮き沈みが激しすぎて、寝かせるというよりもお酒を起こしてしまう。」

「モーツァルトなんかはあまりにもつきなみで面白みがない。新しいのになめらか過ぎるみたいな。」

「そうだな。ショスタコーヴィッチあたりの音楽も少しすっぱ過ぎるしね。」

S「困った。」

河童「僕のイメージはあるよ。それはマルティヌーだね。」

「へぇ、マルティヌーね。」

「そう、ミニマル風に繰り返すさざ波。満ちては引く無限感。ときにビートで目覚め、あるときは予定調和的な美しいハーモニーを奏でる。いい音楽だ。」

「この音楽で埋め尽くされたウィスキーを一度飲んでみたい。」

「そうだね。」

「じゃぁ、どうしてもこの一曲を選べって言われたらどうする。」

「それもあるよ。それはウェーベルンの‘夏の風の中で’だね。さわやかだけど全てがストーン・ペイヴメントで敷き詰められたような。ポットスチルが3個書いてあった絵のかつての‘バラの岸’がこの曲で満たされていたらどんなにうまかったことか。締まった軽さというか、加水時の空気感とウェーベルンの初期傑作の周波数が同時にマチュアしていい感じだったと思うよ。」

「よだれが出そうだ。つまみはなんだ。」

「指揮棒とオーケストラ。」

「さて、今晩のお話もだいぶ酔っぱらってきたね。」

「最初から酔ってる。」

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S「ところで、カクスってぇのはどういう意味なんだい。」

河童「カクスってぇのは、隠すっていうこじゃないか。」

「何を。」

「そうだね。探されてもいないのに隠す。当たった2億円のロトシックスみたいなものだな。だまってりゃ誰にもわからないのに、何故か隠したくなる。だれも探してるわけじゃないのに隠したくなる。ここにあるよって、自分から意思表示してるようなもんだ。」

「だから酒飲みはみんな論理が飛ぶのか。」

「そうともいえる。良く言えば飛躍的にね。」

「手がつけられんな。それでなにか隠したいものでもあるのかね。」

「しゃべってしまったら隠したことにならないじゃないか。」

「そうれはそうだが、秘密は告白のためのプレリュードとも言う。」

「なかなかいいこと言うじゃないか。モリ君の後輩とは思えん。君もそろそろ酔いがまわってきたな。」

「いいから、それで?」

「最近、六本木にいいお酒を飲ませてくれるお店があるらしい。」

「おっ、河童バーだな。」

「いやいや、河童は余計だぁ。」

「じゃぁ、バーなんとか?」

「河童もバーもつかない名前だったと思うよ。これからちょっと行ってみようか。」

「おっ、今晩もお河童さまのお供が出来るってわけだ。今日はどこに連れってくれるんだろう。」

「今日もハシゴだね。六本木の夜は長いし。」

「はいはい。」

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Webern  Im SommerWnid (1904)

ウェーベルン作曲

夏の風の中で (1904年作曲)

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