書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

岡谷繁実 「蒲生氏郷」

2011年01月31日 | 伝記
 『名将言行録』 3 「巻之二十三」(岩波書店 1943年12月第1刷 1988年2月第2刷)所収。
 2011年01月27日「桑田忠親 『蒲生氏郷』」より続き。
 「猿め死に場所がのうて狂うたか」の逸話はなし。
 第一巻巻頭の「引用書目」(参考文献リスト)のなかに『(蒲生)氏郷記』は入っている。ただし全巻を通じ本文で記述のいちいちに出典の指示はいっさいない。

「『統一韓国、日本に脅威でも中国には脅威にはならない』」 から

2011年01月31日 | 抜き書き
▲「中央日報 Joins.com」2011.01.31 10:29:47。
 〈http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=137108&servcode=A00§code=A00〉 

 世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)が開かれるスイス・ダボスで、韓半島統一後のシナリオをめぐり激論が交わされた。
 29日午後(現地時間)に行われた討論で、日本・中国の専門家らは統一韓国の核兵器保有と米軍の駐留をめぐり意見の違いを見せ、神経戦を繰り広げた。特に中国の現実主義外交政策論を代表する閻学通精華大国際問題研究所長は、統一韓国〔下と違いここでは北朝鮮のこと〕の核兵器保有が中国など周辺国に脅威にならないと主張し、目を引いた。〔中略〕閻氏は「たとえ韓国主導で統一されるとしても、統一韓国が核兵器を使う可能性はなく、米国が容認しないだろう」とし「統一韓国は7000万人を超える人口と経済力を持つことになるため、日本には脅威になるだろうが、中国には脅威にならない」と主張した。


 これが、矢吹晋教授に「ナショナリズム熱中症の中国『バブル大学教授』」と評されたうえ、「マンガ的な空想」「かくも幼稚な核脅迫論」と、糞味噌にこき下ろされた閻学通という御仁か。なるほどなるほど。
 こういうわけのわからぬ妄想を逞しくし、かつ平気で口にする人のことを、最近の中国語では「脳残」と呼ぶらしい。この土曜日に出席したある研究会でおしえてもらった。
 もっともこれは、矢吹先生もあとで書かれているように、本心が「愛国者を自称する中国の『愛国賊』は、疑似市場経済のもとで、原稿料の荒稼ぎ、売れる本なら何でも書こうという魂胆」の那辺にあるのなら、酷評にすぎるだろう。

「Airport Bomber Targeted Foreigners」 から

2011年01月31日 | 抜き書き
▲「The Moscow Times」31 January 2011, by Alexandra Odynova. (部分)
 〈http://www.themoscowtimes.com/news/article/airport-bomber-targeted-foreigners/430013.html

  Prime Minister Vladimir Putin has said Monday's blast was not linked to Chechnya. He did not elaborate.
 
  News reports had linked Nogai Jamaat to both the New Year's and Domodedovo blasts.


 健全な懐疑。

  Russian officials did not comment on the discrepancy in approaches.

 そろそろ原因の究明と責任問題にも矛先が向いてきた。

「凡語 『BBC謝罪』」 を読んで

2011年01月31日 | 思考の断片
▲「京都新聞」2011年01月27日。(部分)
 〈http://www.kyoto-np.co.jp/info/bongo/20110127.html

 ▼BBCの番組に毒があるのは、政府や民間会社から独立した立場にあることを示すために、「有名人たちの尊大さをチクリと刺す」必要があるからだという▼「アホレース」のクリーズ氏は近年の傑作選で、上流階級をからかったせいで爵位を得られなかったと嘆いてみせた。賛否はあろうが風刺を効かせ、またもや笑いを取っている。チクリもなく弱きをくじけば嫌みが残るだけだ。世界で笑いの劣化が進んでいるような気がする。

 BBCの毒は、人間存在あるいは人間社会の現状すべてに対するものではないかと思うが如何。風刺も、笑いも。というより、ある種のイギリス人の皮肉やユーモアはもとからそのようなものではないかとも思える。笑うときも、皮肉るときも、自分も勘定に入っているような。
 だからといって、個別にその毒のある笑いや風刺を向けられた当人が怒るのは当然であるし、怒られれば謝るべきであるのもまた当然であるのだが。

「Egypt's Crisis Grows, So Do the Anxieties in Israel」 から

2011年01月31日 | 抜き書き
▲「Time.com」Sunday, Jan. 30, 2011, by Karl Vick / Jerusalem. (部分)
 〈http://www.time.com/time/world/article/0,8599,2045166,00.html

 2011年01月30日「『エジプト騒乱 改革の遂行以外に安定はない(1月30日付・読売社説)』 を読んで」より続き。

  〔...〕Egypt under President Hosni Mubarak observed the 1979 peace treaty with the Jewish state, helped tighten the noose on Hamas from its border with the Gaza Strip, nursed peace talks with the Palestinians, worked to thwart Iran and, along the way, provided Israel with 40% of its natural gas. 〔...〕
  Most important to a tiny, heavily militarized country preoccupied with risk reduction, analysts say, Mubarak's posture toward Israel served to restrain other Arab states ― not to mention the 80 million Egyptians whose attitudes about Israel are among the most negative in the world, according to polls.


 私の仮説は案外的はずれでもなかったのかもしれない。時事問題を取り扱ううえでの専家たるジャーナリストでも同じような見方をする人がいる。

『科学の名著』 2 「中国天文学・数学集」

2011年01月31日 | 自然科学
 収録文献は「劉徽注九章算術」(川原秀城訳)、「周髀算経」(橋本敬造訳)、「霊憲」(橋本敬造訳)、「渾天儀」(橋本敬造訳)、「晋書天文志」(橋本敬造訳)。

 中国では論証的な幾何学がまったく発達しなかった。論証幾何学はギリシア数学の大きな成果であって、西暦前三世紀のユークリッドの『幾何原論』に展開された。定義、公理、公準より出発し、その基礎の上に立って定理の証明が行なわれる。一九五三年のころアインシュタインは次のような手紙を書き送った。
 「西洋科学の発展は二つの大きな成果に本づいている。すなわちギリシア哲学者による形式論理の体系の発明(ユークリッド幾何学に見られる)と系統的な実験による原因・結果の関係をみつける可能性の発見(ルネサンス期における)である。私の考えでは中国の賢人たちがこの順序を踏まなかったことに驚く必要はない。驚くべきことは、これらの発明がすこしもなされなかったことである。」
 中国で近代科学が発達しなかった理由の一つとして、アインシュタインは論証幾何学が存在しなかったことを挙げている。
 (藪内清氏の解説「中国の数学と天文学」本書19頁)

 太字は引用者による。この太字部分は、林思雲氏が『新・中国人と日本人 ホンネの対話』(日中出版 2010年11月)で引用されたアインシュタインの発言と同じ箇所であろう。ただ、林氏の引かれた中国語訳からの引用文は、最後の部分が異なって、「驚くべきなのは、近代科学が西洋で誕生しえたことこそなのだ」となっている。

 「西洋科学の発展は、ふたつの偉大な達成の上に築かれている。それは、ギリシャ哲学家の発明した形式論理体系(ユークリッドの幾何学における)と、系統的な実験を通して見いだされた因果関係の発見(ルネサンス時期)である。中国の賢人たちは、この二つの道を歩まなかった。中国に近代科学が生まれなかったのは驚くに当たらない。驚くべきなのは、近代科学が西洋で誕生しえたことこそなのだ」(『アインシュタイン文集』、中国語版、商務印書館、一九七六年から)
 (林思雲「総論 中国人の思考様式」、同書257頁、金谷譲日本語訳。太字は引用者)

 どちらか、あるいは両方が間違っている。「双方意訳」で収まる範囲内ではない。

(朝日新聞社 1980年11月)

翻訳者としての福澤諭吉・中江兆民・加藤弘之の技量瞥見

2011年01月30日 | 
 加藤周一/丸山真男校注 『日本近代思想体系』 15 「翻訳の思想」(岩波書店 1991年9月)を材料に、福澤「アメリカ独立宣言」(慶応2・1866年。丸山真男注)、中江「非開化論」(明治16・1883年。宮村治雄注)加藤「国法汎論」(明治5・1872年。村上淳一注)を読む。
 中江「非開化論」は原典フランス語、加藤「国法汎論」は同ドイツ語のため、この二者の翻訳の正確さおよび水準の判断・評価にあたっては注者の注釈・説明に依拠した。
 三者について、私の判断と評価。

 福澤「アメリカ独立宣言」・・・・・・極めて正確。そのため余計な補筆もない。日本語としてもとても平易で明晰な訳文。
 中江「非開化論」・・・・・・自分の思想(理想)にひきつけた意訳が見られる。その結果としての原典を離れた補筆もしばしばある。それから自分一個にしか通用しない独自の語彙(僻典からの漢語)が多くて読みにくい。
 加藤「国法汎論」・・・・・・不的確な訳もしくは誤訳のため、つじつまがあわなくなると補筆が入る。加藤は、語学力以前に翻訳対象の分野に関する知識が不足していたと思われる。三者の中で一番水準が低い。

大鳥圭介 「学問弁」 から

2011年01月30日 | 抜き書き
 松本三之介/山室信一校注 『日本近代思想体系』 10 「学問と知識人」(岩波書店 1988年6月)所収。
 明治19(1886)年3月13日 東京学士学院に於ける講演(山室信一氏の注より)。

 古来亜細亜の学科に欠けたるものは宇宙間至要の物理学なり。物理学は現在耳目に触るゝもの(の)原因を探るの学にて、火の燃ること、水の流るゝこと、雨の降ること、風の吹くこと、雷電の閃動することは如何なる訳か、日月は如何なるものか、世界は如何なるものかと云ふことを研究し、事実を挙げて証拠となし、人間朝夕の実益を進むる学にて、今日万国富強の本は唯〔ただ〕此学の原理より発〔おこ〕ると云ふも不可なきなり。本邦にては今日已に先哲の所見あり、大小の学校に於て之を教授し、少年輩の惑を解くこととはなれり。而して支那にては未だ此〔この〕無比緊要の実学を講習する人希〔まれ〕にして、古伝の空文に心酔して曽て暁る所なく、通俗一般の唯陰陽五行の説を唱へ、山川に祷り、日月を拝し、鬼神を恐れ、風水方位を卜し、立派なる宿儒も之に昏迷して毫も発明する所なく、天地人に通ずるを儒といひながら其寸分も弁へざるは気の毒千万なり。
 (上掲書、90-91頁。原文カタカナ。太字は引用者)

 福澤諭吉と同じことを言っている(→「物理学の要用」)。というか、「東洋になきものは、有形において数理学」(『福翁自伝』)という認識は当時においては常識に類するものだったのかもしれない。「物理学の要用」は、明治15(1882)年3月22日の『時事新報』に掲載された社説である。
 それにしても、“惑”という語を使うところまで(福澤は同じことを“惑溺”と呼んだ)そっくりであり、その酷似していることに驚く。

「『大絶滅』生き延びた恐竜 70万年後の骨、米で発見」 から

2011年01月30日 | 抜き書き
▲「asahi.com」2011年1月30日5時3分、ワシントン=勝田敏彦。(部分)
 〈http://www.asahi.com/science/update/0130/TKY201101290401.html

 白亜紀末の恐竜大絶滅が起きてから70万年ほど生き延びた恐竜がいたことが、カナダ・アルバータ大などの研究でわかった。論文が米地質学会の専門誌に掲載され、同大が28日、発表した。

 驚愕。

 研究チームは「気候変動が起きても一部の草地は残り、草食恐竜が生き延びることができた可能性がある」と指摘している。

 それでも驚愕。

「菅首相夫人『疎いじゃない、知らなかったと言うの!』」 から

2011年01月30日 | 抜き書き
▲「asahi.com」2011年1月30日9時33分、竹田真志夫。(部分)
 〈http://www.asahi.com/politics/update/0129/OSK201101290153.html

 日本国債の格下げをめぐり、菅首相が「そういうことに疎いので」と発言、批判を浴びたことについて、「『疎い』なんて言うんじゃない、『知らなかった』と言うんですよ、と(首相に)言いました」とぴしゃり。

 「今初めて聞いた。(衆院)本会議から今出てきたばかりで、ちょっとそういうことに疎いので、改めてにさせてほしい」 (こちらから引用)

 実際の発言の前後を確認して、さらに映像でみると、文脈から、「知らなかった」(いまはわからない、答えるための材料がない)の意味で言っておられると思った。前回の批判は私の早とちりである。菅首相とこのブログを見て下さっている方々に陳謝する。