書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

消耗したのでひさしぶりに柳沢きみお『大市民』シリーズを・・・

2018年09月18日 | コミック
 昨晩は消耗したのでひさしぶりに柳沢きみお『大市民』シリーズを最初から読んでしばし寛いだ。バブル崩壊直後から始まる作品エピソードのなかには、さすがに今日から見ればずれているものがないでもないが、全体を貫くテーマと美意識自体は、いまもそのままで通用すると思う。というか私がそれを好んでいる。
 主人公の山形は、いつも酒を楽しく飲んで酔っ払っている(シリーズの進行とともに次第にその量は増してゆく)。これは酒がほぼまったく駄目になった今の私にはちょっとうらやましくもあるところだ。
 ひと言でいえば著者の身辺雑記、あるいは私小説みたいなものか。読み始めたときはこちらは30そこそこ、主人公は開始時45才で、「かっこいい中年」キャラクターとして憧れつつ読んでいたのが、いつのまにかこちらがその年をとうに過ぎてしまった。山形も年を取って、後半では60を越えた。作者と同じ年だからいま連載されていたら今年70才になるはずである。
 私は『最終章』まで持っている。だがシリーズとしてまだ終わっていないらしい。いま調べてみたら今年電子書籍で最新刊が出ている。

ひじかた憂峰/たなか亜希夫『リバースエッジ 大川端探偵社』 9

2018年03月21日 | コミック
 ひじかた氏が亡くなったので、たぶんこれが最終巻になるのだろうか。「いいかげんな3人がいいかげんな《落としどころ》を探っているのだ・・・と思いました」のせりふが印象的(「演歌エレジー」)。
 基本いいかげんな人間が、そのいいかげんな生のなかで真面目にもがき、くるしむ、その哀楽をすくい上げ、メロディに載せて唱うのが演歌らしい・・・と暮夜ひとり勝手に合点する。

(日本文芸社 2017年12月)

柳原望 『高杉さん家のおべんとう』 10

2015年08月07日 | コミック
 予想通りのハッピーエンド、と思いつつ、もしかしたらそうならないかもと思わせられつつの6年間(作中経過時間にして作品の掲載時間)だったのでしょう。最初からの読者には。私は昨年から、駆け足でのおつきあいでした。

(KADOKAWA/メディアファクトリー 2015年7月)

柳原望 『高杉さん家のおべんとう』 8

2014年04月26日 | コミック
 ある人に教えられて読んでみるとすこぶる面白いので既刊を大人買いしたシリーズ。最新刊。
 香山なつ希ちゃん、やはり白人とのハーフだったのか。外見からの後付設定かもしれない。だが“後付け”とは作者が当初意識下ではそれと認識していなかった“大設定”かもしれない。なぜあの造形にしたのか。

(KADOKAWA/メディアファクトリー 2014年4月)

原作・西村ミツル 作画・天道グミ 『ヘルズキッチン』 1

2013年12月15日 | コミック
 面白い。西村氏の作品は『大使閣下の料理人』以来である。この作品、「これまでにあるレシピとそれをなぞっただけの料理」ではなく、「見直したレシピとこれからあるはずの料理」が出てくる。そこが好きになった。天道氏の絵も。

(講談社 2010年10月)

井上雄彦 『リアル』 13

2013年11月25日 | コミック
 雑誌連載時には読んでいないが、ウィキペディアによればほぼ2ヶ月に1度のペースだそうである。荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険』の最近の部もそうだが、週刊ではない長期の連載になると、山場でもたらすテンションをあえてやや抑えるという、テクニック上の行き方もあるのだろうか。次の回あるいは巻まで読者が"待ちきれる”ようにする為の。

(集英社 2013年11月)

安野モヨコ 『監督不行届』

2013年11月25日 | コミック
 旦那も嫁も脇役も完璧にイカレテル世界(『スティール・ボール・ラン』風に)。
 庵野監督って、本当にこうなんですか。島本和彦『アオイホノオ』で描かれる若き「庵野秀明」と美事に符合はしますが。

(祥伝社 2005年2月)

石塚真一 『岳』 18

2013年11月17日 | コミック
 三歩死んだのか。

(小学館 2012年9月)

吾妻ひでお 『失踪日記』

2013年10月20日 | コミック
 自分の精神疾患と失踪、ホームレス生活、アルコール中毒に治療のため精神病院入院と、重く悲惨でさえある内容を、ドライなほどのユーモア感覚で他人が読める話にしているところが凄い。これまでに読んだ、この人が自らの経験を基にした『日記』物のなかでは、一番面白いと思う。ほかの日記ものとは異なり、自らの漫画家としての回想記・半生記の側面もあるが故に。

(イーストプレス 2005年3月)

松森正作画 ひじかた憂峰原作 『湯けむりスナイパー PART Ⅲ』 3 (完結巻)

2013年10月06日 | コミック
 あからさまには書かれないが、東北地方太平洋沖地震と福島第一原子力発電所事故が、モチーフと背景になっている。ウィキペディアの記載によれば掲載誌の廃刊で終了となったらしいが、作品世界も、これまでの伏線をほぼ全て回収して、完結している。始まってすぐに生まれた君江の娘の杏子が、中学2年(14歳)になっているのを見て、作品世界も現実と同じ年数を重ねていたのだと知る。

(実業之日本社 2013年9月)