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書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

茨木のり子 『現代詩文庫』 20 「茨木のり子詩集」

2006年01月31日 | 文学
 『二十歳のころ』Ⅰ(→2006年1月7日、「今週のコメントしない本」②)収録のインタビューに惹かれて再読。
 「汲む」と「私が一番きれいだったとき」が、いちばん好み。「自分の感受性くらい」は、言葉遣いがちょっとナマすぎると思うようになった(→2002年6月22日、茨木のり子『自分の感受性くらい』)。

(思潮社 1983年10月第十八刷)

▲今回の麻生太郎外相の「(日本国首相による靖国参拝は)たばこを吸うなと言うと吸いたくなるのと同じだ」発言と、1988年7月、渡辺美智雄自民党政調会長(当時)の「アメリカの黒人等は破産してもアッケラカンのカーだ」発言と、どちらが国益をより損じるであろうか。

今週のコメントしない本

2006年01月28日 | 
 仕事がきついです。仕事がきついと息抜きの漫画の量が増えます。今週の③は全部漫画です。

①感想を書くには目下こちらの知識と能力が不足している本
  櫻井よしこ 『権力の道化』 (新潮社 2004年5月)

  鄒景雯著 金美齢訳 『李登輝闘争実録 台湾よ』 (扶桑社 2002年12月)

②読んですぐ感想をまとめようとすべきでないと思える本
  上坂冬子 『我は苦難の道を行く 汪兆銘の真実』 下 (文藝春秋版 2002年3月) 
  劉傑 『漢奸裁判 対日協力者を襲った運命』 (中央公論新社 2000年7月) (再読) 

  三國連太郎 『わが煩悩の火はもえて 親鸞へいたる道』 (光文社 1984年1月)

③面白すぎて冷静な感想をまとめられない本
  浦沢直樹 『20世紀少年』 4-7 (小学館 2002年4月第9刷ほか)

  吉田秋生 『イヴの眠り』 3-5 (小学館 2005年1月ほか)

  西村ミツル原作 かわすみひろし漫画 『大使閣下の料理人』 2-7 (講談社 2000年12月第7刷ほか)

  東周斎雅楽作 魚戸おさむ画 『イリヤッド』 1-3 (小学館 2003年2月ほか)

  佐藤秀峰 『ブラックジャックによろしく』 13 (講談社 2006年1月)

④つまらなさすぎて感想も出てこない本
  王智新/呉広義 『「反日感情」かそれとも「対日嫌悪感」か 日本側との論争 はたして誰の問題なのか』 (日本僑報社 2005年1月)

⑤出来が粗末で感想の持ちようがない本
  該当作なし

⑥余りに愚劣でわざわざ感想を書くのは時間の無駄と思ってしまう本
  該当作なし
  
⑦本人にも分からない何かの理由で感想を書く気にならない本 
  該当作なし

 もっとも、浦沢直樹『20世紀少年』と佐藤秀峰『ブラックジャックによろしく』は、とても息抜きになりませんでした。読んだ後の仕事がよけいキツく感じます。 
 なお、ユン・チアン/ジョン・ハリディ『マオ 誰も知らなかった毛沢東』上下(→昨日)を⑥に入れなかったのは、読んだ感想はたしかに「時間の無駄」ではありましたが、あの大冊の背後にある著者の労力を考えると、「愚劣」の一言で片付けることはできなかったためです。「初めに結論ありき」の著者の固い頭脳と狭い視野のおかげで(だから著者に関しては躊躇なく「愚劣」と評せる)、せっかく集めたあれだけの貴重な史料や証言の価値がかなり減殺されてしまったとは思いますが。
 来週も漫画は多いか。天道是か非か。

藤岡信勝ほか 『市販本 新しい歴史教科書〔改訂版〕』

2006年01月25日 | 日本史
 もはやいいも悪いも突出した特色のない、普通の教科書。しかし普通の教科書として見た場合、かなりいい出来。
 理由の第一。読みやすい。
 理由の第二。面白く読める。
 理由の第三。第一と第二の結果、書かれた内容を鵜呑みにしない余裕ができる。

(扶桑社 2005年8月)

黄春明著 田中宏/福田桂二訳 『さよなら・再見』

2006年01月24日 | 文学
 再読。これまで思っていたより柄が小さい――人間存在の普遍性にまで達しているところが案外少ない――という印象を受けたが、すばらしい作品群という評価に変わりはない(表題作のほか「りんごの味」「海を見つめる日」も収録)。
 なおこの本は同社『アジアの現代文学』シリーズの第1巻(台湾)である。このシリーズにも食指が動く。  

(めこん 1991年3月第8刷)

▲「asahi.com」2006年1月23日、「輸入牛肉の全量検査『物理的に不可能』 農水次官表明」
 →http://www.asahi.com/special/bse/TKY200601230218.html

 忘れないよう、メモ。

今週のコメントしない本

2006年01月21日 | 
 仕事中ですので要点だけを。

①感想を書くには目下こちらの知識と能力が不足している本
  渡辺治編 『日本の時代史』 27 「高度成長と企業社会」 (吉川弘文館 2004年8月)

②読んですぐ感想をまとめようとすべきでないと思える本 
  B.V.A.レーリンク/A.カッセーゼ著 小菅信子訳 粟谷憲太郎解説 『レーリンク判事の東京裁判 歴史的証言と展望』 (新曜社 1996年8月) 

  福田みどり 『司馬さんは夢の中 2』 (中央公論新社 2006年1月)

  チャールズ・R・ジェンキンス著 伊藤真訳 『告白』 (角川書店 2005年11月5版)

  砺波護 『馮道 乱世の宰相』 (中央公論社版 1988年3月) (再読)
  犬養健 『揚子江は今も流れている』 (中央公論社版 1984年2月) (再読)

  上坂冬子 『我は苦難の道を行く 汪兆銘の真実』 上 (文藝春秋版 2002年3月)

③面白すぎて冷静な感想をまとめられない本
  平山洋 『福沢諭吉の真実』 (文藝春秋 2004年8月) (再読)
 
  浦沢直樹 『20世紀少年』 1-3 (小学館 2001年6月第3刷ほか)

  吉田秋生 『イヴの眠り』 1・2 (小学館 2004年2月ほか)

  西村ミツル原作 かわすみひろし漫画 『大使閣下の料理人』 1 (講談社 2002年10月第11刷)

  二ノ宮知子 『のだめカンタービレ』 14 (講談社 2006年1月)

  木村政雄 『やすし・きよしと過ごした日々 マネージャーが見た波瀾万丈回想記』 (文藝春秋文春文庫版 2005年11月)

④つまらなさすぎて感想も出てこない本
  余秋雨著 新谷英明ほか訳 『余秋雨精粋 中国文化を歩く』 (白帝社 2002年9月)

⑤出来が粗末で感想の持ちようがない本
  該当作なし

⑥余りに愚劣でわざわざ感想を書くのは時間の無駄と思ってしまう本
  該当作なし

⑦本人にも分からない何かの理由で感想を書く気にならない本 
  該当作なし

 ところで先日メガネを新調しました。セルロイドの濃い灰色で、一見ほとんど黒。妻に「やっさんみたい」と言われた。怒るでシカシ。それはさておき正月にテレビで観た北村一輝氏の横山やすし師匠はそっくりだったなあ。

石井孝 『明治初期の日本と東アジア』

2006年01月20日 | 日本史
 冒頭からこんな調子である。

“一一八五年(明治一八)福沢諭吉は、日本の「主義とする所は唯脱亜の二字に在るのみ」と主張し、「西洋の文明国と進退を共にし」、中国・朝鮮に対しては「正に西洋人が之に接するの風に従て処分す」るという、かの有名な「脱亜論」を発表した” (「はじめに」 本書本文部分3頁)

 これで開巻早々、著者のテキスト読解能力と学識に深刻な疑惑を抱く(→2005年6月24日、桑原三郎『福沢諭吉の教育観』)。 

“しかしそれは、ずっと前から明治政府によって実践されてきた外交路線なのであった” (同上)

 なぜなら明治日本は“天皇制軍国主義”だから。
 あの重厚緻密な研究『日本開国史』(→2005年11月30日)を書いたのは同姓同名の別人なのだろうか。そう思えるほどに粗末な思考である。
 もっとも実際には、言葉遣いはもう少し学問的論述めかしく飾られてはいる。

“明治維新をへて成立した天皇制政府は、欧米諸国に対しては欧化を前提に、条約改正の動きを示すとともに、東アジア諸国(中国・朝鮮)に対しては「脱亜」の姿勢のもとに、軍事力による強圧・侵略の態度をあらわにした。ここに、日本軍国主義の国際政局への登場がある。のちに「極東の憲兵」とされる日本軍国主義の原点を探るのが、本書の最も大きな目的である” (「はしがき」 本書2頁)

 しかしつまりは、すべて天皇制=日本軍国主義が悪いということである。
 「天皇制軍国主義」という概念をまちがって理解しているという反論が著者からなされるかもしれないが、では正しい理解とは何であろう。書中、どこにも定義が見あたらない。

(有隣堂 1982年11月)