▲「YOMIURI ONLINE(読売新聞)」2011年1月30日02時57分。
〈http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20110129-OYT1T00759.htm〉
アラブ随一の大国エジプトで、30年に及ぶ独裁を続けてきたムバラク大統領の退陣を求めるデモが先鋭化している。
ムバラク大統領の前任者のサダト大統領が暗殺されたのは1981年である。私は大学生だったが、暗殺の瞬間を伝える映像をテレビニュースで見た記憶は私のなかではいまも生々しい。しかしたしかにあれから30年経っている。
長いといわれるカザフスタンのナザルバエフ大統領でもまだ20年(正確には21年)である。
だが、ムバラク大統領の“独裁”は、エジプトひいては西アジアの平和に寄与していたのかもしれない。第三次中東戦争でイスラエルに敗れて以来、エジプト国家は国民にエジプト人として愛国心を涵養するよりも、アラブ人としてまたイスラームの徒としてのアイデンティティを重視する教育方針に切り替えた。エジプト人とは、「エジプトという歴史的土地あるいは現代のエジプト国家内に居住しその国籍を有する人間」の謂である。放っておくと、ほかの国のアラブ人(とくにパレスチナ人)と連帯して、イスラエルとの対立が激化しかねないので、それをふせぐための強権ではなかったか。その状態が30年間続いているのではなかろうか。そしてその結果として様々な弊害が山積している――もう時勢に適わないということも含めて――のではないか。いまのエジプトの義務教育内容を確かめていないから、あくまで仮説にすぎないが。
〈http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20110129-OYT1T00759.htm〉
アラブ随一の大国エジプトで、30年に及ぶ独裁を続けてきたムバラク大統領の退陣を求めるデモが先鋭化している。
ムバラク大統領の前任者のサダト大統領が暗殺されたのは1981年である。私は大学生だったが、暗殺の瞬間を伝える映像をテレビニュースで見た記憶は私のなかではいまも生々しい。しかしたしかにあれから30年経っている。
長いといわれるカザフスタンのナザルバエフ大統領でもまだ20年(正確には21年)である。
だが、ムバラク大統領の“独裁”は、エジプトひいては西アジアの平和に寄与していたのかもしれない。第三次中東戦争でイスラエルに敗れて以来、エジプト国家は国民にエジプト人として愛国心を涵養するよりも、アラブ人としてまたイスラームの徒としてのアイデンティティを重視する教育方針に切り替えた。エジプト人とは、「エジプトという歴史的土地あるいは現代のエジプト国家内に居住しその国籍を有する人間」の謂である。放っておくと、ほかの国のアラブ人(とくにパレスチナ人)と連帯して、イスラエルとの対立が激化しかねないので、それをふせぐための強権ではなかったか。その状態が30年間続いているのではなかろうか。そしてその結果として様々な弊害が山積している――もう時勢に適わないということも含めて――のではないか。いまのエジプトの義務教育内容を確かめていないから、あくまで仮説にすぎないが。