元来韓〔愈〕・柳〔宗元〕は唐の人にて、当時辞賦駢儷の尤も盛んに行わるる時代にありて、『文選』の如きは、其の熟読する所で、殆ど暗記する所であつたが、其の頭の中にある漢魏六朝の文字をば其の儘に使用せず、即ち形を換えて古文といふ形式の文をかり材料にした。それ故に、韓・柳の文は読み難い訳であるが、それと同時に、文に古色含蓄ありて雄勁なり。宋以後は古文といへば、達意の文と心得て、唯すらすらと書くから、読み易きと同時に平板なり。〔中略〕両者互ひに用をなすという事を知らざるに由るなり。 (「第一章 古文 第四節 陽湖派」本書159-160頁。原文旧漢字)
(みすず書房 1984年6月)
(みすず書房 1984年6月)