▲「青空文庫」より
〈http://www.aozora.gr.jp/cards/000051/card2709.html〉
蒲生氏郷が秀吉のことを「猿」と呼んだ話の出所が気になって、先ず(多分)定石通りに、露伴の史伝に当たってみる。
出てこない。
それよりである、当初は伊達政宗のことがその若年の砌から延々と語られて、いったい何時になったら本題になるのやらと半ば呆れた。露伴という人は心の赴くまま、流れるように文章を綴った人なのだなと思った。理屈で構成を組み立てる人ではない。たしかに、蒲生氏郷の生涯の後半部の山は、会津移封後、その地の旧領主で秀吉に取り上げられた故地回復の機会を虎視眈々とねらう政宗との確執となるので、政宗というのは蒲生氏郷伝を書く上で書くことのできない重要人物なのだが、それにしても、ここまで政宗の生まれ育ちや人となりを長々と語り重量をかける必要はない。題を見ずにひもといたら、政宗伝かと思うほどである。露伴という人は、何かを話しだしたらどんどん話題が縦横斜めに膨らんで、しまいには何を話そうとしていたのか本人もわからなるくらいだったというが(たしか山本夏彦氏の仄聞)、たしかに、この作品を見ると、さもありなんと思える。テーマに関連する話柄を、興趣の湧くがままに脳裏から取り出し筆を運んでいることが、行文からよく伺えるからだ。
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蒲生氏郷が秀吉のことを「猿」と呼んだ話の出所が気になって、先ず(多分)定石通りに、露伴の史伝に当たってみる。
出てこない。
それよりである、当初は伊達政宗のことがその若年の砌から延々と語られて、いったい何時になったら本題になるのやらと半ば呆れた。露伴という人は心の赴くまま、流れるように文章を綴った人なのだなと思った。理屈で構成を組み立てる人ではない。たしかに、蒲生氏郷の生涯の後半部の山は、会津移封後、その地の旧領主で秀吉に取り上げられた故地回復の機会を虎視眈々とねらう政宗との確執となるので、政宗というのは蒲生氏郷伝を書く上で書くことのできない重要人物なのだが、それにしても、ここまで政宗の生まれ育ちや人となりを長々と語り重量をかける必要はない。題を見ずにひもといたら、政宗伝かと思うほどである。露伴という人は、何かを話しだしたらどんどん話題が縦横斜めに膨らんで、しまいには何を話そうとしていたのか本人もわからなるくらいだったというが(たしか山本夏彦氏の仄聞)、たしかに、この作品を見ると、さもありなんと思える。テーマに関連する話柄を、興趣の湧くがままに脳裏から取り出し筆を運んでいることが、行文からよく伺えるからだ。