新疆ウイグル自治区に居住するウイグル人のなかには、「エイヌ(Äynu)」という名の被差別民がいるという。
クチャ、カシュガル、ヤルカンド、ホータン、カラカシュ、ロプ、ケリエ、チェリエなど、タクラマカン砂漠周辺の都市部に居住しているが、一般の住民とは離れて、町はずれに彼らだけの集落を作って住んでいるらしい。彼らの伝統的な職業は乞食および割礼者であった。現在では農業や商業に従事しているが(注1)、彼らはこんにちでも「割礼者のカースト」と呼ばれている(注2)。人口は自治区全体で三千(注3)とも、一万(注4)とも、あるいは三万(注5)ともいわれる。宗教はイスラム教で、新疆ウイグル自治区のムスリムが大抵そうであるようにスンナ派とされる(注6)が、シーア派という資料もある(注7)。
研究者の説くところによれば、彼らはもとはテュルク系ではなくペルシア系で、数百年前にペルシアからこの地へやってきて定住した遊牧民の子孫であるという。例えば彼らの話す言語は、他のオアシス住民(ウイグル人)のものとは異なり、文法・音素はウイグル語だが、語彙はペルシア語のそれであることがその論拠とされる。研究者によっては、ペルシア語に分類する人もいる。
彼らの話す言葉は彼ら自身以外、誰にも理解できない。よって彼らは例外なく家庭もしくは集落内でのみ使われる自身の言語と、そこを一歩出ると使用することになるウイグル語との二重言語生活者である。しかしながら、彼らが独自の語彙を用いるのは外部の者に会話の内容を知られたくない時だけであり、また、この言葉は主に男性同士で用い、女性はこの語彙をあまり知らないようだという調査結果もある(注8)。
一般のウイグル人やそのほかの民族からは、彼らは「アブダル」と呼ばれている。これは非常に侮蔑的な呼称で、彼ら自身は決してこの名で自らを呼ばない(注9)。
中国政府は彼らをウイグル族として分類し、独立の民族としては扱っていない。
注1 『ウィキペディア』「エイヌ語」 (
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%82%A4%E3%83%8C%E8%AA%9E)
注2 『Äynu profile from Christian organization Asia Harvest』 (
http://www.asiaharvest.org/pages/profiles/china/chinaPeoples/A/Ainu.pdf)
注3 林徹「エイヌ語彙の言語学的特徴」(周縁チュルク国際コロキアム(1999年12月20日)) (
http://www.gengo.l.u-tokyo.ac.jp/hayasi/PeriTurk/peri.html)
注4 『Äynu profile from Christian organization Asia Harvest』 (
http://www.asiaharvest.org/pages/profiles/china/chinaPeoples/A/Ainu.pdf)
注5 『Wikipedia』「Äynu people」 (
http://en.wikipedia.org/wiki/%C3%84ynu_people)
注6 『Äynu profile from Christian organization Asia Harvest』 (
http://www.asiaharvest.org/pages/profiles/china/chinaPeoples/A/Ainu.pdf)
注7 『Wikipedia』「Äynu people」 (
http://en.wikipedia.org/wiki/%C3%84ynu_people)
注8 林徹「エイヌ語彙の言語学的特徴」(周縁チュルク国際コロキアム(1999年12月20日)) (
http://www.gengo.l.u-tokyo.ac.jp/hayasi/PeriTurk/peri.html)
注9 林徹「エイヌ語彙の言語学的特徴」(周縁チュルク国際コロキアム(1999年12月20日)) (
http://www.gengo.l.u-tokyo.ac.jp/hayasi/PeriTurk/peri.html)