書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

高山信武 『二人の参謀 服部卓四郎と辻政信』

2008年03月24日 | 日本史
 この本を、服部・辻両人を弁護するものとして批判する向きがあるらしい。
 二人を直に知る著者による、服部・辻についてのいわば“再評価”の論点は、詰まるところ、以下である。
 
 ・他者の意見をよく容れる人だった。(服部卓四郎)
 ・私心のない、強い信念の持ち主で、それを何処でも、誰にでも平気で主張し、押し通した。(辻政信)
 ・戦術家として優れていた。(服部卓四郎・辻政信)
 ・みずからの職務遂行に邁進した、忠良な軍人だった。(服部卓四郎・辻政信)

 これを言い換えれば、いいひとだった、ひとりよがりな奴だった、戦略眼がなかった、はかりごとを帷幄の中万里の外に運らすべき身でありながら葉武者のように振舞った、ということである。
 これは、公人もしくは歴史的存在としての彼らを弁護していることになるのだろうか。

(芙蓉書房出版 1999年7月新版第1刷)

石塚正英編 『金子堅太郎・回顧録 日露戦争・日米外交秘録』

2008年03月23日 | 日本史
 フランクリン・ルーズヴェルトは、新渡戸稲造『武士道』(英語版)を我が子に渡して、この中の「天皇陛下」とある箇所を「星条旗」と置き換えればそのまま米国人が学ぶべき処世の原則となるからよく読めと言った。「日露戦役当時に於ける我邦内外の事情 上」、講演、昭和2乃至3年、本書105頁。

(長崎出版 1986年4月)

稲田正次 『明治憲法成立史の研究』

2008年03月21日 | 日本史
 中江兆民が明治7(1874)年に訳した『民約論』は、「何カ政府ヨリ談ジラレ、鼻ヲ拭ウテ捨テタ」わけではないらしい。さもなければ兆民の朱筆入り原稿が弘文荘の反町茂雄の手に入るはずはなく、そして反町から原稿を購入した筆者によって、全文が写真つきで本書の冒頭を飾ることもまたなかったであろう。

(有斐閣 1979年4月)

澁谷由里 『「漢奸」と英雄の満洲』

2008年03月20日 | 東洋史
 日中戦争(第二次世界大戦)後、中国が戦犯を人道的に扱ったのは、国際法を遵守する態度をソ連を初めとする世界に見せることによって、誕生まもない中華人民共和国の国際的な地位を高め、さらにはソ連の後押しを得て、国連の承認を得ようとしたため(それだけではないが)という観点。
 なお管理所における戦犯教育は、洗脳ではなかっただろうが、誘導ではあったろうというのが本書を読んだ後の感想。

(講談社 2008年1月)

楊海英 『モンゴルとイスラーム的中国』

2008年03月20日 | 東洋史
 張承志『殉教の中国イスラム 神秘主義教団ジャフリーヤの歴史』、同『回教から見た中国 民族・宗教・国家』の姉妹編にして、それを補う者。
 感想は、日本人にも、(漢系)中国人にも、話してもまず徒労に終わるので、わざわざ苦しんで書く気にならず。勝手にしやがれ。

(風響社 2007年5月)

井上勲 『文明開化』

2008年03月16日 | 日本史
 文明開化とは、海外から安価な砂糖が大量に輸入できるようになって日本料理がおしなべて甘くなったということと、それまで禁色だった紫色を誰でも使えるようになったということでもあると知る。

(教育社 1987年8月新装第2刷)