フランスの大統領選挙の一回目の投票は来る23日に行われる。極右政党国民戦線のマリーヌ・ルペン党首がトップに立つかどうかが注目されている。国民戦線創設者のジャンマリ・ルペンと比べると穏健だといわれるが、「国境を取り戻す」という主張にもとづき、政策的としてEU離脱をめぐる国民投票の実施を掲げており、それが支持するフランス国民が増えてきているのである。5月7日の決戦投票で勝つことは無理にしても、父親の時代の壁であった得票率10パーセントを軽く突破するのは確実である▼ファシズムやナチズムに関して「非合理的な狂気の支配」と断罪すればすむと思っている識者が多い。しかし、そんな生易しいものではないのである。広松渉は「全体主義的イデオロギーの陥穽」において、ハイデッガーやカール・シュミットらの名だたる思想家について「彼らのすべてがナチズムの思想に全面的に賛成したわけではないけれども、ファシズムの思想性が多くの学者たちにとって『思想的に偉大なもの』として了解されたという歴史的事実を覆うことはできない」と書いている▼広松はインテリ層の「思想的自己了解の内在的論理」を問題視するのである。広松が指摘するようにファシズムは「既成の議会制民主主義を真っ向から批判しつつ、しかも経済機構の再編をめぐって一連の“社会主義的”な要求をすら掲げたのであり、政権奪取にいたる過程では“革命的”な大衆行動を下から組織した」ことも忘れるべきではない。今もなお避けて通ることができないのがファシズムの思想なのである。
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