3.11原発震災直後、元気な麻木久仁子の早朝ラジオ番組で「スマートグリッド」の考えを聞いた。当広場でも「スマートグリッドでエネ新運用2011/6/5」で取り上げました。その後、時々「発・送電分離」とか「スマートメーター」の話は耳にするものの、この国ではスマートグリッドの時代にはまだまだ、ほど遠いところにいます。
震災前の2010年に発行された『スマートグリッド革命』(加藤敏春著)を読んでみました。すでに大震災前にもうここまでの技術的構想があったことに、まず驚く。
スマートグリッドとは、電力、インターネット、通信など各種技術を融合させて電力を需要側、供給側の双方向でやりとりする次世代の電力網。
ユーチューブそしてユーエネルギー!
動画サイトのYouTubeを例にとると分かりやすい。ここでは大衆が映像を見るばかりの受けて一辺倒でなく自ら発信することもできる。YouTubeとは、「あなたが作るテレビ(映像)」の意味。
スマートグリッドの考えは、You Energy!つまり誰もがエネルギー作りに参加できること。個人がエネルギーを作り配電して楽しむ、まさにYouTubeのエネルギー版です。
ゼロ戦の失敗を教訓に
日本でスマートグリッドが進まないのは、「わが国では、すでに電力は高いレベルで運用されている、いまさら不安定な再生可能エネルギーの導入や発・送電分離の必要はない」という自信にあふれた見方が支配的だからだ。著者は「ゼロ戦の失敗を繰り返すな」と警鐘する。
開戦時には、世界最高水準の優秀な戦闘機が、終戦時では敵機に時速100キロも引き離されてしまった。最大の理由は当初段階で完成度が高すぎたことして改良をする技術的余裕がなかったからだと。これと同じようなことにスマートグリッド、エネルギー分野でもならないようにしないと。
再生可能エネルギーの供給安定は蓄電池システムによって解決することができる。日本の電力システムは最高だからとの慢心は、大きなビジネスチャンスを逃がす。
スマートグリッドの効果は
(1)ピークカットやピークシフトで電力設備の有効活用
(2)ユーザーの省エネ、節電を促進し電気料金の低減
(3)再生可能エネルギーを大量導入
(4)プラグインハイブリッド車、電気自動車等の普及
(5)関連する新産業を創生し雇用の増大が見込まれる
(6)電気保全、品質の確保
You Energy で脱原発
すでにスマートメーター=写真(ウキペディアより)=は欧州では普及していてイタリア、スウェーデンでは全家庭に設置され、個人が電力会社も自由に選べるようになっている。メーターだけとってもこの需要は莫大なもの。日本でも原発メーカーである東芝はスマートメーター市場もしっかりにらんで手がけている。
いまの状態は、電力会社が発・送電を握っていて消費者個人は参加していない。YouTube状態の反対。スマートグリッドに本格参入することで、再生可能エネルギー分野は飛躍的に発展を遂げ新しい雇用が同時に生まれる。そうすれば、これ以上原発に依存しないクリーンなエネルギーサイクルが実現し、まさにエネルギー・ウェブ時代の大変革の到来となるでしょう。めざせ、You Energy!!
スマートグリッド革命――エネルギー・ウェブの時代 | |
加藤敏春 著 | |
NTT出版 |