今年のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」は初代群馬県令(群馬県知事)楫取素彦(かとりもとひこ)とその妻、文の物語だという。群馬県人としてはこれは見ないわけにはいかない。
予備知識として角川の文庫本『楫取素彦と吉田松陰の妹・文』を読んでみた。新春の初読書です。
まず最初に「楫取」の字が読めなかった。「かとり」は長州(山口県)萩の人の姓。楫取素彦は吉田松陰の義弟で、松陰が投獄された後事の松下村塾を託された人物であり、後に群馬県令(群馬県知事)にもなり群馬県とはゆかり深い偉人。
吉田松陰に比べ楫取素彦はその功績に比べ知名度が低いと言われている。著者、一坂太郎氏はそのことについて、「松陰は天才肌で思いついたら即行動、信念を貫くためなら法を犯すことも常識を打ち破ることも厭わない。感情の起伏も激しくそれゆえ30歳で逝ってしまった。一方、楫取はコツコツと努力をする秀才タイプであり、決して道を踏み外すような言動はなく、だから藩主も安心して身近に置いて仕事をさせたのだ」と評している。
楫取は長州藩主の側近として、坂本竜馬を桂小五郎に紹介して薩長同盟の端緒役にもなっている。
県庁は高崎か、前橋か
本書で面白かったのは「県庁は高崎か、前橋か」の節。明治9年、楫取は熊谷県に着任し熊谷県令となる。がすぐに熊谷県は廃止になり栃木県管下となっていた東毛三郡を戻して群馬県が生れた。楫取も熊谷県令から群馬県令に肩書が変わる。当初、県庁所在地は高崎にと中央政府は決めていた。しかし高崎城は陸軍の直轄で県庁舎は各地に分散、また高崎に県庁が来ると言うことで物価や地代がにわかに上がった・・。前橋では新築したばかりの約16万坪の前橋城が廃藩置県で無用の長物なっている。楫取“知事”は前橋の生糸商人の下村善太郎(後の初代前橋市長)ら有志に前橋城を県庁舎とすることの他にいくつかの条件を出した・・。
てっきり高崎に県庁が来るものと信じていた高崎住民たちの怒りはすさまじかった・・。
今年の大河はどんなストーリーが群馬との関わりで展開されるのか楽しみです。姉の死後、後妻に入り群馬でも久しく生活を送る文の役は、われらが明大OGの井上真央。ドラマは楫取素彦ではなく文が主役のようだ。
楫取素彦と吉田松陰の妹・文 (新人物文庫) | |
一坂太郎著(萩博物館学芸員) | |
KADOKAWA/中経出版 |