ポポロ通信舎

(旧・ポポロの広場)姿勢は低く、理想は高く。真理は常に少数から・・

真理を追う研究者たち

2019年10月10日 | 研究・書籍
ノーベル化学賞に吉野彰氏、リチウムイオン電池の開発で。71歳。すばらしい!!

化学に興味をもったのは小学生の時から。新任の女の先生が薦めてくれた一冊の本、マイケル・ファラデーの『ロウソクの科学』だったという。以来化学一筋・・・。


結局、人の仕事は若い時に与えられたものを一生かけて解くということなのかとこの頃ふと思う。歴史のような人文系の研究が自然科学と違うところは年をとるほど人生経験を経て人間理解が深まり、若い頃には見えていなかったものが少し見えてくることだが、本書もそうしてできたものと思と述べているのは筒井清忠氏。著書『陸軍士官学校事件』(中公選書 2016年)の「あとがき」から。

「陸士事件なくしてニ・二六事件なし」といわれながら明らかにされなかった謎の重大事件。その真相とは一体なんだったのか?
ノーベル賞の吉野氏と同じ歳の歴史研究家、筒井清忠氏が事件の謎を解く。
歴史のような人文科学系も、化学のような自然科学も真相・真理を究明しつづけようとする学者の姿勢には共通のものがありますね。

ちょうど読み終えた難解な内容の『陸軍士官学校事件』。折しもノーベル賞受賞のニュース。またまた「あなた、そこに反応?」と言われてしまいそうですが・・


【木工さんの写真】矢嶋秀一作 フォト 田口大輔


 

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三国志に見る名言の数々

2019年09月24日 | 研究・書籍

私たちが日ごろ用いている故事至言がなんと紀元2~3世紀の『三国志』に代表される古代中国からのものであることを知りました。

三顧の礼 優秀な人を迎えるときは手厚い礼儀で迎える。劉備が諸葛孔明をスカウトすること3回から。

髀肉之嘆(ひにくのたん) 力量を発揮する機会にめぐまれないまま時を過ごす無念さ。劉備が曹操に追われ鳴かず飛ばずの逃走中に、ももの肉が肥え太ったことを嘆いた。

人生は朝露(あさつゆ)の如し 曹操の詩『短歌行』から。「人生夢幻のごとく」(信長)、「露とをち露と消えにしわが身かな」(秀吉)、「露の世は露の世ながらさりげなく」(一茶)などにも通じますが、紀元2~3世紀という年代に重みを感じますね。

水魚の交わり 魚と水のような関係。親密で離れがたい友情、交際のたとえ。劉備が諸葛孔明を得たことをさした言葉とか。

破竹の勢い 蜀が滅び魏から晋の代になり、晋が呉を攻め滅ぼすときのさま。竹が刃物で最初の一節を割ると、あとは一気に割れること。

月旦」「白眉」「豚児」なども三国志の時代の故事だと知り、古代中国文化の厚さを改めて感じました。

 

(参考)『三国志談義』平凡社 2009年

 

 

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曹操(魏)晩年の詩から

2019年09月19日 | 研究・書籍

烈士暮年壮心不巳

烈(たけ)き士(おのこ)は 暮(お)いし年にも 壮(たけ)き心の巳(よど)め あえず。曹操

 歳をとっても終わらない。自分の抱いた理想は。老年になっても若々しく失われない。。

『三国志談義』(半藤一利、安野光雄 2009年 平凡社)の中での曹操の詩に同感しました。曹操については残虐な面もありますが、武人ながら詩をたしなむ文化人でもあった。この詩はいいです。年を経ても志を持ち続ける・・そうあるべきです、そうありたいものです。

ちなみに同書の中で、三国志の「英雄度」採点がありました。

曹操69点、関羽64点、趙雲59点、孫権58点、劉備57点、袁紹、張飛ともに45点・・

三国志ファンのみなさんはいかがでしょうか?私はまだ採点するまでには、もう少し知識を得てからにしたいと思います。

 

 

 

三国志 予告紹介

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病を得て人は成熟する

2019年09月17日 | 研究・書籍

新書『がんから始まる生き方』を読ました。 帯のキャッチがいい。

「病を得て人は成熟する」

 「いいかげん、がんをタブー視するのはやめましょう」

 この夏7月10日第1刷発行。患者、治療者、助言者の3者がそれぞれの立場でがん体験を語る。

 「自分もがんの2つや3つはある」(養老孟司)

 「キャンサーフリーの人はいない」(中川恵一)

 人間は生まれた時からみな不治の病にかかっている。昔は若い人は大病をすると人間が成長し大人っぽくなった。人間全体が子どもっぽくなった今はどうだろう・・

「完治できないものは寛解(かんかい/治癒までいかない軽減の意味)となり、生活の仕方が急がずゆっくりに生産性を考えずにひたすら本を読むこと」(柏木博)

お三方のがんに対する姿勢、大いに参考になりました。

 

人間「卒業」までは、がんばるのみですね。

 

 

Simon & Garfunkel - The Sound of Silence - Madison Square Garden, NYC - 2009/10/29&30

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読書はエンターテイメント

2019年08月10日 | 研究・書籍
長く都内の書店に勤め2016年に退職した著者、人見廣史氏の『書店人のはんせい』(新評論 2018年)を読みました。

いったい何を反省しているのかと思いましたら、「本を読むことは裃(かみしも)を身に着けて、知識を高めるものではなく、本はエンターテイメント!」である、と悟られたことを指す。エンターテイメント、つまり娯楽、気晴らし、子どもがお父さんに連れられプロ野球を見るような臨場感で読書も、と。

著者は埼玉県浦和市生まれですが、現在、同県熊谷市在住。そのため「暑いぞ!熊谷」の話や市内の人気居酒屋店「甲子園第二球場」、同店の店長さんが熊谷商の名選手だったことなどが紹介されていて、まことにライブ感にあふれたタッチだ。それでいて、知性的な本の紹介もしている。

もっとも好きな作品は、子どもと一緒に成長できる『赤毛のアン』(金の星社)。その他は満州引き上げの惨状の手記『流れる星は生きている』(藤原てい)、『自動車絶望工場』(鎌田慧)なども紹介する。
「戦争の実態」の項では、17万人以上が帰って来れなかった満蒙開拓団の苦難の歴史を伝える「満蒙開拓平和記念館」(長野県阿智村)に言及されている。

なんだか、つかみどころがないようでいて、どこでもつかむような感じ。
「本を読むのにルールはない」という著者の「はんせい」、大いにうなずけた。


【木工さんの写真】矢嶋秀一作 フォト 田口大輔

 
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亡命公使・太永浩、怒りの執筆

2019年07月15日 | 研究・書籍

『コミック版二十歳の原点』ではタイムスリップして1960年代の世界に戻りましたが、新刊『北朝鮮外交秘録』では、国境を越え謎の多い北朝鮮の姿を内部から見ることができました。読書の醍醐味です。

三階書記室の暗号 北朝鮮外交秘録』(文藝春秋 2019年6月第1刷発行)は、元駐英北朝鮮公使、太永浩(テ・ヨンホ)が著した実録のものです。巻頭の日本語版への序文では「金一族による世襲政治が70年以上続く、北朝鮮の国民は奴隷のような人生を送っている。北朝鮮の国民と日本人拉致被害者がそんな日々から解放される日を一日でも早めるため、私の人生をささげるという気持ちに迷いはない」と2019年5月の記載。

「平壌心臓部を生き抜いた元高級官僚が誰も知らなった新事実を怒りの執筆!」まさに。 どの話もすごいことばかりでとどめ置かなくてはならないことばかりですが、その一つ 張成沢(チャン・ソンテク)の粛清では、張成沢一家ばかりでなく彼の側近たち1万名余りを粛清し尽くしたという。高官であってもいつ足をすくわれるかわからない。粛清の名のもとに人命がいとも簡単に消されていく。

著者がイギリスで、エリック・クラプトン公演に訪れた金正哲(金正恩の兄)の案内役をした苦労話は、当方もクラプトンは興味があるだけに注目した。 https://youtu.be/mTi14zcU1l8

生まれたときから苦労を知らずに育ったお坊ちゃまの金正哲ではあるが「王子の孤独」にも垣間見たようだ。 著者が帰宅して、すでにうわさで知っていた子どもたちからの反応が冷静だったという。「お父さんは金正哲を案内していたんだ。一般市民には腐った資本主義の音楽など聴いてはいけない。聞けば大学から追放までされる。人民には苦難の行軍を強要しながら、金一族はやりたい放題だ。ロンドンで一日に何千ドルも浪費して、ありえない」

北朝鮮の瀬戸際外交で知られる「外交巧者」のゆえんも書かれていた。今、朝鮮問題に関心のある人にはぜひ読んでいただきたい一冊です。(敬称略)

 

それではさいごに「腐った資本主義の音楽」から一曲。エリック・クラプトン『チェンジ・ザ・ワールド』♪

 

 

Eric Clapton - Change the World

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『コミック版二十歳の原点』

2019年07月08日 | 研究・書籍
書店で見かけました。『コミック版二十歳の原点』(原作・高野悦子、作画・岡田鯛 双葉社)。
帯には「200万人に読み継がれてきたベストセラー。今のままじゃダメだと感じている全ての人に。学園紛争がピークを迎えた1969年、立命館大学に在学中の高野悦子が残した魂を揺さぶるメッセージ」とある。

早速購入して読んでみました。余談ですが最近、書籍は「店頭買い」に回帰しています。通販や電子書籍の利用はぐっと減りました。書店の雰囲気は良いものです、捨てがたいですね。新刊などはもっぱら紙媒体に戻りました。
『コミック版二十歳の原点』は、2018年の今を生きる二十歳の女子大生、杉田莉奈が過去にタイムスリップして高野悦子さんと出会い対話をすると言うものです。

独りであることこと 
未熟であること
これが私の二十歳の原点である


原作にあった高野悦子さんの言葉が随所に現れ、時代を超えて心に響きます。学生運動用語なども分かりやすく説明があります。
オリジナルの『二十歳の原点』(新潮社)と比較してみました=写真

『二十歳の原点』の発行は1971年5月定価450円、コミック版が2019年6月発行、1080円。当時は女性が喫煙することが同権の象徴で勇姿ともとれた。煙草一つとっても今とは全く違う常識に。しかし現在もあの時と変わらぬ個々の生き方、課題は突きつけられています。わたしも主人公と一緒に、しばし時空を超え高野さんに会えたような気がしました。
 

 

 

 

映画『二十歳の原点』

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週休5日の隠居生活

2019年06月29日 | 研究・書籍

『20代で隠居 週休5日の快適生活』。著者の大原扁理さんは愛知生まれ東京在住。高校卒業後3年間ひきこもり海外一人生活などを経て現在隠居中。

フリーターではない、ひきこもりともちがう。ハードワークでなくソフトワークで週二日働く「ご隠居」。このようなライフスタイルもこれからの一つの提案ですね。
著者のひきこもりのきっかけも、前回の内閣調査でみたように「仕事」が原因でした。本屋でのアルバイト店員だった時に店のスタッフとのやり取りに憤怒して隠居入りを決意させたとしています。

次世代型の隠居は人里離れたところに住むのではなく都会に住んでいます。
その条件の一部を書かせていただくと
・郊外の小さい安い家賃のアパートに住む
・働くのは週2回(著者の場合は重度身障者の介護業務)
・ケータイ、テレビは持たず(ラジオは愛用)
・社交(交際)せず、人に迷惑かけず・・
こんな感じのザ・人畜無害。

人間関係では「来る者は拒まず」ではなく「来るものはてきとうに拒む」これが極意?
遊びの誘いは断る。趣味は読書と図書館通いというものいい。
20代にしてとても「大人(高齢者)」のイメージです。さすがご隠居さん。
「隠居男子がブームになれば日本の未来はちょっと明るいです」とは辛酸なめ子さん。
「隠居女子」もあって良いようにも思いますが・・

生活レベルは落としても日常に困らない自然な生き方は十分できますね。
若者たちよ、他人の評価は気にせず胸を張ってのんびり行きましょう!!


 

 
こちら週休5日でなく「週休2日節」。子供ばんどの曲。動画41分30秒ごろに収録。
たまの休みさ、ボロボロのウィークエンド、湧き上がるエネルギーじっとしちゃいられない♪ 隠居さんとは対照的なギラギラな休日(笑)

 

実録 子供ばんどの歴史

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野菜は小さい方を・・

2019年06月22日 | 研究・書籍

 大きい野菜は栄養がスカスカ!?
野菜は大きい方が美味しそうに見えお得感もあります。
しかし野菜には「本来の大きさ」があり、その大きさには意味があるのです・・と。

篤農家、環境活動家の岡本よりたか氏の著『野菜は小さい方を選びなさい』からです。お店で野菜を買う時の見分け方など、なるほどと感心するものが多く参考になりました。

生物は不揃い、多様が自然

「不揃(ふぞろ)いは本物の証(あかし)」は、著者の人生哲学にも通づるものでもあるかのよう。今、店頭に並ぶ野菜の大きさは、揃(そろ)っています。消費者もそれがきれいで当たり前と思っていますが、植物は本来不揃いで多様性があり、それには理があり、種が必ず生き残れるようになっているからなのです。
生物たちの屍(しかばね)の上に積もった土が地球の大地。先祖の生物たちの屍に放射性物質をばら撒き、工場排水を流し、汚染された化学物質や不自然な農薬、化学肥料で汚してはいけないと著者は警告しています。

うなずけること多いのですが今の世の中、逆方向に流れているようでいてとても虚しさを感じてしまいます。

 

 

岡本よりたか「農業と食料支配」 《異説真説》

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生命は100万回か1回か

2019年06月13日 | 研究・書籍

絵本のロングセラー『100万回生きたねこ』(佐野洋子・作)を読みました。

100万年も死なない(虎)猫がいました。。と物語は始まります。

最初は王さまの猫でした。戦争で流れ矢に当たって死んでしまいました。次に生まれ変わって船乗りの猫になりましたが船から落ちて死ぬ。その次はサーカスの猫に、今度は事故で・・。

いろいろな環境で生きたり死んだり、その数なんと100万回にも。 やがて誰からも飼われない自由な野良猫になりました。 美しい白猫と所帯を持ち子猫たちに囲まれます。

やがて愛妻の白猫が亡くなり、そして後を追うように虎猫も。もう虎猫は、決して生き返りませんでした・・。

飼われていた不自由な100万回と自由に生きたさいごの1回。どちらが幸せだったでしょうか。そんな問いかけを読むものに投げかけているように感じました。

「ひょっとすると大人のための絵本かもしれない」との書評も。 100万回も生きたということは、死んでも死にきれない無念さが復活させたようにも思えます。やがて命は再び「生まれ変わる」の輪廻の死生観・・。

一方で、一度だけの「生き方」を、今のこの時を、愛をもって大事に過ごすという命の在り方。 とても意味の深いテーマがこの絵本から感じ取れました。

この本、わが家に2冊もあったこと気づきませんでした。

 

 

 

100万回生きた猫

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後悔しない死に方

2019年04月24日 | 研究・書籍

 題名に引かれて手に取りました。
『どんな病気でも後悔しない死に方』(大津秀一著 角川新書)

死に方の4パターン
(1)状態が良い時期が続いて最後の1~2カ月で急速に悪化(がん)
(2)悪くなることを繰り返し最後は、機能不全(心、肺)
(3)ゆるやかに状態悪化を来たす(脳、認知、老衰)
(4)突然死を来たす(心筋、不整脈、くも膜下)

「死に方」と題していますがいわゆるノウハウ本ではなく、後悔しない最期を迎えるための“知識本”でした。

患者本人と家族の思いのズレは興味深い。
本人:「生きたいけれど無理ならば苦しまないで長引かず死にたい」
家族:「大切な人ができるだけ長く生きてほしい」
終末期になると患者本人は生きたい願望はありますが、家族に迷惑をかけることを恐れる気持ちも強い。延命治療の判断の参考にもなりますね。

本書は
「皆さんは死にます。私も死にます・・」
と書き始めています。
緩和医療医の著者ならではの哲学的な死生観も感じられ参考になる一冊でした。

 

 

 

 

アメイジング・グレイス / 本田美奈子.

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ネットの何がいけないのか

2019年04月15日 | 研究・書籍
ミスターインターネットの村井純の『インターネットII〜次世代への扉〜』 (岩波新書)を読み直してみました。

1998年の出版。Windows98の頃の書ですね。村井氏はこの3年前には『インターネット』 (岩波新書)を出しています。
今やこの間約20年、スマホの登場でインターネットは国民的な手軽なアイテムとなりました。かなり完成されましたが、それでもまだ課題はあります。

たとえばネットでラジオ放送などを聞いていますとタイムラグ、時間差はありますね。生中継>衛星放送>デジタル衛星放送の順で遅い。これなどはデジタル通信の前処理の部分に関わるもので引き続き追究される技術課題と本書でも指摘されています。

「何がいけないか」では、ネット上の詐欺、ねずみ講、スパムメール、ポルノ情報の氾濫、クレジットカードの犯罪などが挙げられている。20年経た今もそれらの問題点は解決されていません。利用者と非利用者との情報格差の拡大も加わっています。もっとも詐欺やねずみ講などの犯罪は実社会でも同じようなことが繰り返されていますから、ネット特有とも言い切れないことかもしれませんね。
知的所有権との関連ではドメインのしくみなど教科書的な基礎的な記述も多く、まだ捨てられない本でした。

 

1998年、Windows98の頃のヒット曲、Kiroro『 長い間 』、キミの声はまだ「受話器」からだった・・♪



Kiroro 長い間

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『体育ぎらいの子』はつくられる

2019年03月23日 | 研究・書籍

さか上りができない、徒競走はいつもビリなど、小さな胸を痛めている子どもは大勢います。体育ぎらいが高じて学校ぎらいになってしまう子さえいます。体育の本来の目的は何なのか、点数で評価できるものだろうか等の疑問に答えながら、体育の苦手な子を中心とした授業の実際を紹介し、どの子も生き生きと取り組める指導のあり方を考える書。

1983年の発行当時、宮城教育大学教授だった中森孜郎氏の『体育ぎらいの子』。この本は、なぜかタイトルの割には印象が薄く 積読(つんどく:購入して未読)の部類でした。同じ頃の書『女の子はつくられる』(佐藤洋子著 白石書店)の方はしっかり熟読した記憶があります。

長く本箱で眠っていた本書を今回じっくり読み直しました。
もともと、子どもは体育が好き。体育ぎらいの子が増加するのは学年が進むにつれて。それは、思うように動作ができなかったり結果が出せず他人の目を意識し劣等感、恐怖心、屈辱感に苦しむからだ。ビリでゴールするくやしさ、跳び箱の前で立ち止まってしまった無念さ・・。

「勝敗主義」「記録主義」が顕著になりがちな体育ですが、このことは体育に限らず「勉強ぎらい」にも通ずるものがあるようにも。前述の『女の子はつくられる』とも共通しているな、とも感じました。

「評価」の問題はむずかいしい。いっそうのことテストの点を廃止すれば、すべて解決するでしょうか。習得度、理解力の尺度として数値化することは、それ自体は悪いこととはいえないでしょう。もちろん頻繁なテスト漬けで子どもたちを序列化してしまうことは良くないとは思います。

むずかしいですね。「古くて新しい問題」を本書は提起しています。その内容はまったく今日的にも通用するものでした。特に体育の先生にはぜひ読んでいただきたい良い本でした。

 

【木工さんの写真】矢嶋秀一作 フォト 田口大輔

 

子どもと教育を考える 体育ぎらいの子
中森孜郎 著
岩波書店

 

 TOP OF THE WORLD / 西田ひかる

 

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死生学のデーケン先生

2019年03月15日 | 研究・書籍

小学生の孫に「笑いながら怒ってみよう」といったら二人とも、とても妙な顔になり、大笑いしました。

それというのも、「笑って怒るは私、デーケンでもでけんです」と死生学の大家、アルフォンス・デーケン先生が語っていたからです。

職場でも家族でも一人が腹を立てて怒鳴っていたら暗い雰囲気になる。しかしユーモアと笑いは心の安全弁としての機能を果たし周囲の人たちにやさしい愛と思いやりを示す。外国のホスピスへ行くと実に明るくユーモアに満ちている、と。

よく生き よく笑い よき死と出会うアルフォンス・デーケン著(新潮社 2003年)を読みました。あつい信仰心を持つ友からの推薦図書です。

期待通りの良い本でした。
「死生学」の入り口を知りました。それに著者、アルフォンス・デーケンの人生がすごいことにも。

病気の4歳の妹が、子供なりにも心の準備ができていて最期に家族一人ひとりに「さよなら」と挨拶を交わし「また天国で会いましょう」と小さいがはっきりした声で言い、息を引き取ったシーンは感動的で涙が出ました。著者はその時8歳、初めての身近な死。

ドイツ人ですが著者の一家は、みな「反ナチス」。それだけに連合軍がやってきたときは祖父が歓迎の白旗を振って出迎えた。しかしなんと祖父は目の前で連合軍の兵士に射殺される。連合軍といえども父の高級時計は取り上げられ、若い姉が司令官の命でレイプされそうにもなった。戦争の生死と狂気をまざまざと見せつけられた。

著者が日本に興味を持ったのは豊臣秀吉のキリシタン迫害で殉教した長崎のルドヴィコ・茨木という当時12歳のキリスト教少年の伝記を図書館の本で読んで感銘したからとか。

来日してからは上智大学の先生として「死生学」の研究に取り組む。死とは何か? 死を不吉で避けて通ろうとしていた70年代当時の日本の風潮に「死生学」という新しい学問の概念を定着させた功績は大きい。

人間は死に向かって歩き続ける旅人なのです」と著者。さあ一緒に「笑いながら怒ること」に挑戦しましょう(笑)

 

 

よく生き よく笑い よき死と出会う
アルフォンス・デーケン著
新潮社

 

A.デーケン博士--「死とは何か」

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美味しかったカルピスの歴史も

2019年02月21日 | 研究・書籍

最近気がついたのですが、カルピスはアサヒ飲料(株)から出されていて登録商標も同社に帰属しているのですね。

子どものころから飲み親しんでいるカルピス。その歴史が『カルピスをつくった男 三島海雲』(山川徹著、小学館)を読んでよくわかりました。
カルピスはモンゴル高原の遊牧民の乳製品がルーツだったのかあ~。
カルピスの強みは(1)美味であること(2)安心安全であること(3)健康に良いこと(4)経済的であること。
戦時中はぜいたく品ではなく軍需物資として認定され海軍御用品だった。
キャッチフレーズの「初恋の味」は大正デモクラシーの1921年に誕生。その頃の社名はカルピス製造株式会社。戦後は1948年(昭和23)カルピス食品工業に変更。1990年、味の素の傘下に入る。さらに2012年アサヒグループに買収される。しかし商品のカルピスは生きている。

創業者の三島海雲のヒストリーも面白かったが、著者の山川徹氏がなぜカルピスのルーツに関心を抱いたのかも興味深かった。
著者が22歳、内モンゴルを背景にした長澤まさみのCMが流れていた頃、中国・モンゴルを旅していた。道中、同じ年の親切なモンゴル女性と知り合った。モンゴル語、中国語、ドイツ語、英語、日本語も少し話す彼女はフリーの通訳と自称。著者はいつしか好意をもつ。しかしある日、彼女は意を決したように自身のことを語り出す。。。
 
まさに著者自身の「初恋の味」でもあったわけです。ノンフィクションライター山川徹さん、これからもきっと良い作品を出し続けると思います。
 
 
カルピスをつくった男 三島海雲
山川 徹 著
小学館

 

 

【人気CMまとめ】 【長澤まさみ@CM】 【カルピス】 長澤まさみの10年をカルピスとともに

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