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語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【禅】心を落ち着かせる ~ダルマと恵可の問答~

2018年04月25日 | 批評・思想
 <さらに、恵可はたずねる、「どうか先生、心をおちつかせてください」
 先生、「心をもって来なさい。君に心をおちつかせてやろう」
 すすんでいう、「心を探して、どこにも見つかりません」
 先生、「探せても、どうしてそれがお前の心であろう。おまえに心をおちつかせてあげたよ」
 達磨は恵可につげていう、「おまえに心をおちつかせてあげたよ。おまえは今、わかるか」
 恵可は言下に大悟する。>

 *

 柳田聖山は、京都大学人文科学研究所の元所長、国際禅学研究所の元所長。第32回読売文学賞(『一休-狂雲集の世界』、1981年)、第27回仏教伝道文化賞(1993年)受賞。紫綬褒章(1991年)、勲三等瑞宝章(1996年)受章。

□柳田聖山・責任編集、解説、訳『禅語録 ~世界の名著・続3~』(中央公論社、1974)の『祖堂集』の「菩提達磨」から一部引用

 
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【佐藤優】レッドラインを設けない ~対テロ(8)~

2018年04月25日 | ●佐藤優
 <ところで、テロ対策においては、事前にレッドライン(この線を超えたら反撃するという基準)を示すには及ばないという考えにガノール氏は傾いているようだ。

  〈隣国のアラブ諸国に対するイスラエルの政策に関して、ドゥロールはレッドラインを定める利点についていくつかの疑問を呈している。彼の考えでは、この線を越えればこういった報復反撃を行うという明確なラインをあらかじめ引いておくのは賢いやり方ではない。報復を事前に示唆するのも同じだからだ。
  抑止政策を立案する際の問題は、相手がテロ組織だとより鮮明となる。クレンショーは、テロリストにテロ行為の代償は高く、厳しい刑罰が待っていると納得させねばならないところに難しさがあると主張する。しかし、抑止のメッセージがテロ組織側にどのように受け止められ、どのような影響を与えたかを評価するのは難しい。彼らの価値観は彼らの敵のそれとは違うのが普通だ。彼らにはほかの基準があり、何よりも危険因子に対する態度が違っている。〉(本書113頁) 

 レッドラインを示すと、「その線を超えなければ、何をやってもいい」とテロリストが受け止めるリスクがあるからだ。ガノール氏を含むイスラエルの専門家には、テロリズムを阻止する手段はないという、悲観的な現状認識がある。

  〈1990年代半ばにイスラエルで発生した一連のテロ事件によって、国家のテロを防ぐ能力の低さが問題となった。以前とは違い、イスラエルの政策決定者たちの間で、死を決した自爆テロリストを阻止するのは不可能なのではないかという気分が高まっていた。1994年10月にテルアビブで起きたバスを狙ったテロ攻撃後の政府高官たちの発言を見ればそれがわかる。シモン・シェトリート大臣がイスラエルの対テロ抑止力の強化を提案すると、イツハク・ラビン首相はこう答えている。
 「テロリズムを抑止する手段などない」
 テロ組織を抑止することは可能か、という質問に答えて当時、ISA長官を務めていたカルミ・ギロンは、
 「抑止できるか? ほんの少しなら・・・・レバノンの例を見ればわかるだろう。テロリズムは弱者の武器であると同時に、強者のアキレス腱でもある。無敵のIDFもカチューシャ・ロケットを撃ち込まれた2件のテロに対してどう反応すればいいのかわからない。IDFは右から左に動いている敵3個師団にどう対処すればいいか知っているが、ベドウインの羊飼いたちに対しては役に立たない。〉(本書122~132頁)>

□ボアズ・ガノール(佐藤優・監訳、河合洋一郎・訳)『カウンター・テロリズム・パズル 政策決定者への提
言』(並木書房 2018)の冒頭、佐藤優「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の「(8)レッドラインを設けない」を引用

 【参考】
【佐藤優】インテリジェンスの重要性 ~対テロ(7)~
【佐藤優】テロ対策と国民感情 ~対テロ(6)~
【佐藤優】戦争犯罪とテロリズムの区別 ~対テロ(5)~
【佐藤優】テロリズムの定義 ~対テロ(4)~
【佐藤優】政治(国家)指導者の能力 ~対テロ(3)~
【佐藤優】アート(芸術)としてのインテリジェンス ~対テロ(2)~
【佐藤優】ボアズ・ガノール氏との出会い
【佐藤優】「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の目次

 
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【南雲つぐみ】喫茶去 ~喫茶養生記~

2018年04月24日 | 医療・保健・福祉・介護
 古本街で知られる東京・神田神保町に、数年前まで「喫茶去(きっさこ)」という名の喫茶店があった。古い日本家屋そのままの店内にジャズが流れて、本を読むのにちょうどいい店だったが、とても古く、階段や床もぎしぎし鳴ってよく揺れた。その後、耐震の問題で閉店、移転したと聞いた。
 「喫茶去」というのはもともと禅宗の言葉で「お茶を飲んで出直しなさい」という意味だそうだ。
 お茶が広まるきっかけとなったのは、鎌倉時代の栄西禅師が、留学先の中国から茶の苗木や種を持ち帰ったことにある。栄西はお茶を研究し、「茶は養生の仙薬なり」ではじまる「喫茶養生記」を著した。
 禅宗では、座禅を組んで瞑想を行う。長い時間座ると、次第に疲れてきて睡魔に襲われ、つい体が動いて喝(かつ)を入れられてしまう。
 緑茶を飲むことで眠気が飛び、頭がすっきり爽快になる。カフェインや茶ポリフェノールであるカテキンなどの効き目が、当時の禅を深めるのに役立っていたのだろう。

□南雲つぐみ(医学ライター)「喫茶去 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2018年4月17日)を引用
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【佐藤優】インテリジェンスの重要性 ~対テロ(7)~

2018年04月24日 | ●佐藤優
 <さて、テロ対策においては、インテリジェンス活動が死活的に重要になる。

  〈シャブタイ・シャビットもインテリジェンスの重要性を強調する。
  「私の考えでは、質のいいインテリジェンスがあれば、問題の50パーセント以上はすでに解決している。・・・・インテリジェンスの質が良ければ良いほど、テロリズムに対するほかの武器の使用をより少なく、あるいは制限することができる」
  情報収集はほぼすべての対テロ活動に欠かせない準備作業である。〉(本書95~96頁) 

 興味深いのは、イスラエルの現首相のネタニヤフ氏が、国家首脳も「生のインテリジェンス」を受け取る必要性について述べていることだ。通常、首脳を含む政治家は、インテリジェンス機関で分析、評価された「加工されたインテリジェンス」を受け取るが、テロ対策については異なるルールが適用されるというのがネタニヤフ氏の主張だ。

  〈ネタニヤフは、調整の必要性はインテリジェンスの領域よりも、主に対テロに関係したほかの分野にあると考えている。
  「問題は物事が行われる秩序であり、インテリジェンスの調整ではない。首相も生のインテリジェンスを受け取る。情報はふるいにかけられるというが、それでもデータは得られる。知らないうちに何かが起きているということはあり得ない。だが、ある機関が他の機関と衝突したり、競合したりする状況はある。調整機関があれば、物事をオーガナイズすることが簡単になる。行政的な権限はない。首相が物事を実現させるのだ。そうすれば組織間の競争が減る。〉(本書108頁) 

 ネタニヤフ氏の見解に関しては、インテリジェンス専門家からは、情報の素人である政治家が「生のインテリジェンス」を処理すると、過ちを犯す可能性が高いという理由で批判がなされると思う。しかし、テロ対策は迅速な決断を必要とする。したがって、「生のインテリジェンス」を精査する時間的余裕がない場合には、政治家の勘に頼るしかない局面も生じるというのが現実だ。>

□ボアズ・ガノール(佐藤優・監訳、河合洋一郎・訳)『カウンター・テロリズム・パズル 政策決定者への提
言』(並木書房 2018)の冒頭、佐藤優「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の「(7)インテリジェンスの重要性」を引用

 【参考】
【佐藤優】テロ対策と国民感情 ~対テロ(6)~
【佐藤優】戦争犯罪とテロリズムの区別 ~対テロ(5)~
【佐藤優】テロリズムの定義 ~対テロ(4)~
【佐藤優】政治(国家)指導者の能力 ~対テロ(3)~
【佐藤優】アート(芸術)としてのインテリジェンス ~対テロ(2)~
【佐藤優】ボアズ・ガノール氏との出会い
【佐藤優】「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の目次

 
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【南雲つぐみ】味覚の老化 ~味蕾~

2018年04月24日 | 医療・保健・福祉・介護
 食べ物の味を感じるのは、舌の表面のブツブツした突起にある「味蕾(みらい)」という器官。まだ、母親のおなかの中にいる胎児期の後半には、すでに大人と同様の味蕾があり、胎児は味を感じているという。
 味蕾の数は生まれてからも増え、その数は乳児期に最も多いそうだ。このため、乳幼児は味にとても敏感だ。初めて食べるものには明らかに表情が変わるし、少しでも違和感があると口から出してしまうこともある。
 これは、味蕾が多いせいだけではない。舌触りや噛みごたえなど、口の機能全部を使って、食べ物を感じ取っているからだ。
 成長するにつれて、塩分の強いものや香辛料などの刺激物を取り、アルコールやたばこを口にすることで、味蕾は減っていく。
 大人になると、苦手だったものも食べられるようになる。「食べ物の味が分かるようになった」というが、実は「味に鈍感になった」のだ。
 塩味や甘味に鈍感になると、塩分や砂糖の取り過ぎにつながるので気を付けたいものだ。

□南雲つぐみ(医学ライター)「味覚の老化 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2018年4月16日)を引用
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【佐藤優】テロ対策と国民感情 ~対テロ(6)~

2018年04月24日 | ●佐藤優
 <ガノール氏は、民主主義国家においてはテロ直後の大衆の怒りが、無視できない影響を与えることを軽視すべきでないと強調する。

  〈クレンショーは、対テロ政策の多くは、テロ攻撃発生直後の一般大衆の怒りの感情が頂点に達している時に策定・実行される、と述べている。この状況では、最善策はテロを無視することだったとしても、民主主義国家では政府は支援者たちの信頼を失わないようにテロに対応することを余儀なくされる。クレンショーはこう表現している。「あまりにも多くの人々が見ているため、政府はゲームをプレイすることを拒否できない」
 興味深いのはクレンショーがイスラエルの例を使ってこの議論を支持していることだ。彼女の分析では、イスラエル政府は国民からのプレッシャーで、テロ攻撃が起きるたびに報復を強いられている。イスラエルの対テロ活動を検証してみると、カウンター・テロリズムに関して言えば、成文化された政策も、一貫した戦略すらない。歴代の政府は、攻撃的・防御的・懲罰的行動において同じような対テロ手段を使っており、違いはどの手段に重点を置くか、またそのタイミングなどだけだった。
 おそらく対テロ政策が成文化されてこなった理由は、政策決定において柔軟性を維持すること、また政府が自ら定めた戦略原則を満たしていないとうに国民の目に映ることを避けるためであろう。〉(本書92頁) 

 民意の影響を受けやすいことも、対テロ政策を成文化することの支障になっているという指摘はその通りと思う。>

□ボアズ・ガノール(佐藤優・監訳、河合洋一郎・訳)『カウンター・テロリズム・パズル 政策決定者への提
言』(並木書房 2018)の冒頭、佐藤優「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の「(6)テロ対策と国民感情」を引用

 【参考】
【佐藤優】戦争犯罪とテロリズムの区別 ~対テロ(5)~
【佐藤優】テロリズムの定義 ~対テロ(4)~
【佐藤優】政治(国家)指導者の能力 ~対テロ(3)~
【佐藤優】アート(芸術)としてのインテリジェンス ~対テロ(2)~
【佐藤優】ボアズ・ガノール氏との出会い
【佐藤優】「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の目次

 
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【南雲つぐみ】春ニンジン ~出荷量最多は徳島県~

2018年04月24日 | 医療・保健・福祉・介護
 ニンジンの旬は、一般的には10月から12月。その時期を土の中で過ごし、3月から5月に収穫される春ニンジンは、普通のニンジンよりも水分が多く、甘くて軟らかいのが特徴だ。
 出荷量が一番多いのは徳島県で、特に4、5月は全体の6~7割を占める(東京都中央卸市場年報、平成23年)。
 春ニンジンは、煮物などにして火を通すと、甘さが強く出る。甘い野菜が苦手な人は、スティック状に切って生でぽりぽり食べるのもいい。
 泥付きのニンジンでない限り、最近は表面を洗浄して出荷されていて、軽く水洗いすれば、皮をむかずに調理できる。皮の周りにはニンジンの主要な栄養素であるベータカロテンが豊富に含まれているので、皮はむかないほうがいいようだ。
 ベータカロテンは脂溶性で、油脂と一緒に取ると吸収率が高まる。生で食べる場合もオリーブオイルなどのドレッシングで食べるのがお勧めだ。
 ベータカロテンは体内でビタミンAとなる。この物質は、皮膚や目の粘膜を正常に保ち、肌荒れや風邪を予防するなどの効果があるとされる。

□南雲つぐみ(医学ライター)「春ニンジン ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2018年4月20日)を引用
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【池大雅】旅する画家--日本の風景を描く

2018年04月23日 | 批評・思想
 大雅は、多くの旅を重ねた画家だった。26歳の時、江戸に遊んだ大雅は、そこから塩竃、松島にまで足を延ばし、その美しい景色に目を奪われる。翌年には北陸地方を遊歴したほか、20歳代後半から30歳にかけて、伊勢や出雲など各地を旅したことが知られている。なかでも、38歳の時に友人の高芙蓉、韓天寿とともに白山・立山・富士山の三霊山を踏破した長途の旅行は特に有名なもので、豊富なスケッチを含む「三岳紀行図屏風」(作品番号111)によってその詳細を知ることができる。そしてこの旅の成果は、「浅間山真景図」(作品番号108)という江戸時代絵画史においても傑出した風景表現へと見事に結晶した。
 大雅の旅は、万巻の書を読み万里の道を行かねば偉大な画家にはなれないという、中国の文人画家の考え方に触発されたものだろう。旅を重ね、自然を肌で感じることこそが、優れた山水画を描くために必要だと考えたのである。旅先で目にした自然の実感にもとづく風景表現(真景図)は、大雅の画業を特徴付ける主要テーマとなっていく。のみならず、40歳代以降に顕著となる広やかな空間表現など、自らの表現様式の確立にも多大な影響を及ぼすことになるのである。

□京都国立博物館、読売新聞社『池大雅 天衣無縫の旅の画家』(読売新聞社、2018)の「第5章 旅する画家--日本の風景を描く」の冒頭を引用

 

 ★池大雅「比叡山真景図」
 

 
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【佐藤優】戦争犯罪とテロリズムの区別 ~対テロ(5)~

2018年04月23日 | ●佐藤優
 <なお、ガノール氏は、国家による戦争犯罪とテロリズムとは明確に区別されるべきであると主張する。

  〈もうひとつの疑問は、国家がテロを行うことは可能かという点だ。西側その他の多数の政治家や治安担当者が、テロリズムは意図的に民間人を殺傷することを意味する明確な定義を採用するのを恐れている。ある状況下では自分たちの軍事行動がテロリズムと解釈される恐れがあるからだ。広島と長崎への原爆投下をテロと見なすことができるかもしれない。テロリズムに対する国家のアカウンタビリティの問題について答えると、国家の方が組織よりもモラルが上とは限らないということだ。しかし、国家の違法行為にテロリズムという言葉は必要ない。国際条約では戦時に国家の人間が故意に民間人を殺傷すれば戦争犯罪人となる。戦時以外の場合、人道に対する罪を犯したことになる。逆説的だが、国家には禁じられているが、いまだに組織には禁じられていないこともある。広島と長崎の例は、テロリズムの定義を考えるには適切ではない。これは戦争犯罪として議論されるべ問題だからだ。この観点から見れば、テロリズムの定義は、現在ある国際条約に何かを加えたりするわけではない。国家が守られねばならない戦争法規を定めている倫理規定をテロ組織にもあてはめているだけなのだ。〉(本書70頁) 

 私もこの見解に賛成する。米国による広島、長崎への原爆投下は、戦時国際法に違反する無差別爆撃だ。また、このような大量破壊兵器を使用することは戦争犯罪である。しかし、テロリズムではない。>

□ボアズ・ガノール(佐藤優・監訳、河合洋一郎・訳)『カウンター・テロリズム・パズル 政策決定者への提
言』(並木書房 2018)の冒頭、佐藤優「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の「(5)戦争犯罪とテロリズムの区別」を引用

 【参考】
【佐藤優】テロリズムの定義 ~対テロ(4)~
【佐藤優】政治(国家)指導者の能力 ~対テロ(3)~
【佐藤優】アート(芸術)としてのインテリジェンス ~対テロ(2)~
【佐藤優】ボアズ・ガノール氏との出会い
【佐藤優】「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の目次

 
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【心理】職場のストレス対処法 ~ABC理論、ストレス日記、四つのR、GNN~

2018年04月22日 | 心理
(1)ABC理論
 金太郎(かねたろう) さあ、今日はいよいよ本題の「ストレス対処法」だね!
 得子(とくこ) では、まず質問。一言でストレスっていっても、とらえ方次第で変化するって、知ってた?
 金 いや、知らなかった。
 得 それじゃあ、ストレスとうまくつき合うための「ABC理論」から説明するわね。
 金 ABC?
 得 そう。Aは「Activating event(出来事)」。Bは「Belief(信念・価値観)」で、その人なりの物事のとらえ方のことを指すわ。難しい言葉で、「認知」というのよ。最後のCは「Consequence(結果)」。出来事の結果として表れる感情や体調の変化のことをいうの。
 金 ABCの意味はわかったけど、どう関係しているの?
 得 ストレスの原因となる出来事(A)を受けた結果として、今の心身の状態(C)が決まると思いがちだけど、違うの。AとCの間には、Bというフィルターがあるのよ。

(2)「ストレス日記」
 金 難しくなってきたな。
 得 簡単よ。例えば、「プレゼン資料の内容について、上司から厳しく叱責(しっせき)された」という出来事があった、と仮定しましょう。金ちゃんなら、どう感じる?
 金 そりゃ落ち込むに決まってるでしょ。
 得 でも、例えば「僕の将来のことを考えて叱ってくれた」「人前ではなく、個室に呼んで叱ってくれた」と考えてみたらどう?
 金 ちょっと気が楽になるかな。
 得 でしょ? これは「認知を変える」というのよ。精神療法の一種「認知療法」を応用した考え方よ。
 金 でも、今の上司のことを考えると、そう簡単に前向きにはなれないなあ。
 得 うん、わかるよ。そこで一つの方法として、日記をつけることをお勧めするわ。その日のストレスの元になった出来事を書き出すの。そのときの怒りや落ち込みなど、浮かんだ感情のキーワードを点数化してみて。何日か経って、少し客観的に日記を読み返すと、その点数が下がっていると思うわ。新しい点数は、赤字で「上書き」してね。
 金 日記をつけるコツはある?
 得 数日後に日記を読み返すとき、「こうあるべきだ、と決めつけていないか」「悪いことを、針小棒大にとらえていないか」「完璧主義に陥っていないか」などを意識するの。これを繰り返していくと、自分の「考え方の悪い癖」がわかって、少しずつ前向きな考え方ができるようになるはずよ。

(3)「四つのR」と「GNN」
 金 よし、やってみよう! あとは、どんな対処法があるの?
 得 「四つのR」と「GNN」ね。
 金 何かアルファベットの頭文字が多いなあ(笑)。
 得 覚えやすいからね。四つのRは、(1)Rest(休息)、(2)Recreation(遊び・気晴らし)、(3)Relaxation(神経を休める)、(4)Retreatment(転地療法)のことよ。(1)は睡眠やマッサージ、(2)はスポーツやカラオケとかね。(3)は、例えば呼吸法やアロマセラピー、(4)は旅行とか森林浴など、非日常の場に身を置いてリフレッシュすることね。
 金 GNNは?
 得 それゃ、決まってるじゃん。義理、人情、浪花節だよ、人生は! 成果主義の導入などで、今の日本の会社には、そういう人間的な温かさが減ったのよ。無駄話の多い職場はメンタルの健全度が高い、ともいわれてるわ。実は、GNNが職場のストレス改善に一番大事かもね。

 取材協力・渡部卓さん(帝京平成大学現代ライフ学部教授、ライフバランスマネジメント研究所代表)
 (構成・佐藤陽)=全4回

 【職場のストレス対処法は?】
●ABC理論→同じストレスの元になる出来事でも、物事のとらえ方次第で、不快な感情は減らせる
●物事のとらえ方をポジティブに変えるため、「ストレス日記」をつける。怒りや落ち込みを点数化し、数日後に見直すことを繰り返す
●休息(レスト)や気晴らし(レクリエーション)など「四つのR」も重要
●義理、人情、浪花節の「GNN」も大切に

□「(知っ得 なっ得)ストレスとつき合う:2 どう対処すればいい?」(朝日新聞デジタル 2018年4月14日)を引用、かつ、小見出し追記
(知っ得 なっ得)ストレスとつき合う:2 どう対処すればいい?
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【佐藤優】テロリズムの定義 ~対テロ(4)~

2018年04月22日 | ●佐藤優
 <ガノール氏はまず、「テロリズム」について定義することの意義について説明する。

  〈「テロリズム」という言葉が定義されない限り、それぞれ異なるテロ組織の共通理解も、テロ組織を非合法化することも、彼らの資金集めや国際的なマネー・ロンダリングを阻止することもできない。国際会議や地域レベルの国家間の話し合いなどを見れば、世界中がテロの脅威を真剣に受け止めていることはわかるが、そういった会合に参加する国々がテロリズムの定義で合意できなければ、意味のある結果は出ない。
  「テロリズムとは何か」について共通する考え方がなければ、テロリズムを支援する国家にその責任を問うことも、世界レベルでテロに対抗する方策を考え出すことも、またテロリスト、テロ組織とその支援者たちと効果的に戦うこともできない。さらにテロリズムの定義がなければ、反テロの国際条約を締結することは不可能だし、間接的にでもテロリズムに関係した国際条約が文書化・署名され、それを実施しようとしても機能しないだろう。
  その非常にわかりやすい例は、犯人の引き渡しである。全世界で多数の国が、さまざまな犯罪に関係した二国間、または多国間条約に署名している。それらの条約は普通、テロリズムだけに関係したものではなく、一般的な犯罪を犯した者が対象となっており、その多くは犯罪に政治的な背景があれば、引き渡す必要はないと明記している。テロリズムは常に政治的な背景がある。この抜け穴によって多くの国がテロリストを引き渡す義務を怠ってきた。〉(本書50頁) 

 なぜこのようなことを説明するかというと、行政官は、テロリズムが定義されることによって、テロ対策に縛りがかかることを嫌う傾向があるからだ。以下の指摘が興味深い。

  〈定義することに反対する者に言わせれば、政策決定者(安全保障エスタブリッシュメントを含めて)には共通したテロリズムの定義などなくてもまったく構わない。「テロリズムは見ればそれとわかる」が彼らの基本的な考え方だ。テロリストが行うのは本質的に強盗、放火、殺人といった刑法で禁じられた通常の犯罪行為と同じ、と彼らは主張する。つまり、テロリズムを定義して新たな犯罪を作らなくてもテロリストを罰することはできるということだ。〉(本書54頁) 

 ガノール氏は、テロリズムの政治性を強調する。プロシアのカール・フォン・クラウゼヴィッツは『戦争論』(初版1832年)で、「戦争は政治の延長である」と指摘したが、ガノール氏は「テロリズムも政治の延長である」と考える。

  〈テロリズムの基礎をなす目的は、常に政治的なものである。現存する政府を転覆させる、政府の形態を変える、政府の人事を変える、経済や社会その他の政策を修正させる、社会経済的なイデオロギーを広める、宗教的ないし国粋的な目標等々といった政治分野での目標を達成することを目的とする。
 政治的な目的なしに市民に暴力をふるうのは、純粋に刑事事件、凶悪犯罪あるいは単なる狂った人間の行為であり、テロリズムとはまったく異なる。こうした観点から、われわれはテロリズムを過激主義者の政治的反対運動と見るべきである。〉(本書58頁) 

 テロリズムは、バンダリズム(破壊主義)とは異なるのである。ガノール氏は、テロリズムに関して、以下の暫定的定義に従って議論を進める。

  〈テロリズムとは、政治目標(民族的、社会経済的、イデオロギー的、宗教的ほか)を達成するため、意図的に民間人に対して暴力を行使する闘争の一形態である。〉(本書65頁) 

 この定義を敷衍して、ガノール氏はこう説明する。

  〈この定義は3つの要素に基づいている。
  (1)行動の本質--暴力闘争。この定義では、暴力を行使しない行為はテロリズムにはならない(たとえばストライキ、非暴力デモ、納税者の反乱など)。
  (2)テロリズムの目標--常に政治的。政府の打倒、統治形態の変更、権力者の交代、経済、社会その他政策の変更、イデオロギーの拡散といった政治的な目標を達成することを目的とする。政治的な目標のない行為はテロリズムとは見なされない。政治目的のない民間人への暴力行為は単なる重犯罪、あるいはテロリズムとは関係のない狂気の行動に過ぎない。政治目標の根底にある動機は、テロリズムを定義する目的にはそぐわない。動機にはイデオロギー的なもの、宗教的なもの、社会経済的なもの、ナショナリズムその他さまざまだが、この点についてはストールとデュバルの『政治的テロリズム』の概念には動機は関係ないという指摘に注目したい。ほとんどの研究者はこのことを認識しておらず、さまざまな動機を挙げてテロリズムを説明しようとする傾向にある。
  (3)攻撃の標的--民間人。これでテロリズムをほかの形態の政治的バイオレンス(ゲリラ戦、民衆蜂起など)と区別することができる。提案した定義では、テロリズムは暴力的な政治活動が行われている地域に偶然居合わせた民間人たちが暴力に巻き込まれてしまった結果ではなく、はじめから民間人を殺傷するのが目的であることが強調されている。テロリズムは民間のターゲットの脆さ、また激しい恐怖とメディアへのインパクトを利用している。〉(本書65~66頁) 

 この定義は、現下、世界的規模で流行になっている「生きているテロリズム」を分析するにあたってとても有益だ。

□ボアズ・ガノール(佐藤優・監訳、河合洋一郎・訳)『カウンター・テロリズム・パズル 政策決定者への提
言』(並木書房 2018)の冒頭、佐藤優「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の「(4)テロリズムの定義」を引用

 【参考】
【佐藤優】政治(国家)指導者の能力 ~対テロ(3)~
【佐藤優】アート(芸術)としてのインテリジェンス ~対テロ(2)~
【佐藤優】ボアズ・ガノール氏との出会い
【佐藤優】「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の目次

 
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【本】戦前から日本は変わらず ~1940年体制~

2018年04月21日 | 批評・思想
★野口悠起雄『1940年体制/さらば「戦時経済」』(東洋経済新報社、1995/増補版の出版は2010年)

 日本型経済システムと呼ばれるものの多くが、戦争の遂行のために1940年(昭和15年)ころに骨格が作られたものだという。生産者を大切にし、地域間や階層間の調整まで目配りをしたこのシステムは、戦後の高度経済成長期の日本を支えた。しかし、その残像が、新たな変化への対応を困難にしていると指摘する。
 国民への説明はともかく、改革はいつの世も政権の課題解決のために行われる。ただ、その成果は必ずしも想定通りに生じるわけではないし、政権が享受するとも限らない。私たちに求められているのは、その改革の本当の狙いを見極め、後の世代に及ぼす影響に思いを致すことではないだろうか。法政策リテラシー(判断して応用する力)の必要性を考えさせられる。
□吉田利宏(元衆議院法制局参事)「戦前から日本は変わらず ~名著味読再読~」(「週刊ダイヤモンド」2018年4月28日-5月5日号)

 【参考】
【本】いかに“米中戦争”を避けるか ~歴史から国際政治を類推する~
【本】つげ義春は文章も面白い ~『つげ義春とぼく』~
【本】バブルを描く古典的名著 ~『バブルの物語 暴落の前に天才がいる』~
【本】塩野七生、最後の歴史大長編 ~『ギリシア人の物語3』~
【本】日本銀行はどのようにして政治的に追い込まれたのか ~『日銀と政治 暗闘の20年史』~
【本】最悪の選択は現状維持と分析 ~黒田日銀の5年間を問う好著~
【本】麻薬撲滅のための経済学思考 ~アピールと説得の理論と方法~
【本】モンゴルのユーラシア制覇 ~『モンゴルvs.西欧vs.イスラム 13世紀の世界大戦』~
【本】歴史はどう繰り返すのか ~『歴史からの発想』~
【本】社会変革のヒントを得る ~『フィンランド 豊かさのメソッド』~
【本】時流に流されないために ~『誰か「戦前」を知らないか 夏彦迷惑問答』~
【本】戦争の矛盾がよく理解できる/存在自体が珍しい軍事技術書 ~『兵士を救え! (珍)軍事研究』~
【本】北朝鮮核危機を描く労作 ~『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン』~
【本】スウェーデンの高福祉で高競争力、両立の秘密 ~『政治経済の生態学』~
【本】ネット時代のテロリズムはどこから生まれてくるのか ~『グローバル・ジハードのパラダイム: パリを
【本】1920年代の経済報道に学ぶ ~『経済失政はなぜ繰り返すのか メディアが伝えた昭和恐慌』~
【本】朝日新聞・書評委員が選ぶ「今年の3点」(抄)
【本】著者の知的誠実さに打たれる日韓問題を深く理解できる書 ~『「地政心理」で語る半島と列島』~
【本】人の判断はなぜ歪むのか/2人の研究者の友情物語 ~『かくて行動経済学は生まれり』~ 
【本】エネルギーの本質を学ぶ ~『エネルギーを選びなおす』~
【本】JR九州の勢いの秘密を凝縮 ~読んで元気が出る人間の物語~
【本】日本は英国の経験に学べ ~『イギリス近代史講義』~
【本】噴火の時待つ巨額損失のマグマ ~『異次元緩
【本】“立憲主義”の由来を知る ~『立憲非立憲』~
【本】日本語特殊論に与せず ~『英語にも主語はなかった』~
【本】小国の視点で歴史を学ぶ ~『石油に浮かぶ国/クウェートの歴史と現実』~
【本】日本における婚姻を考える ~『婚姻の話』~
【本】元財務官僚のエコノミストが日本経済復活の処方箋を説く ~『日本を救う最強の経済論』~
【本】歴史を知らずに大人になる不幸 ~『戦争の大問題 それでも戦争を選ぶのか。』~
【本】私たちの食卓はどうなるのか ~工業化された食糧生産の脆さ~
【本】歪み増殖していく物語に迷う ~『森へ行きましょう』~
【本】加工食品はどこから来たのか ~軍隊と科学の密な関係~
【本】80年代中世ブームの傑作 ~『一揆』~
【本】万華鏡のように迫る名著 ~『新装版 資本主義・社会主義・民主主義』~
『【本】『世界をまどわせた地図』
【本】率直過ぎる米情報将校の直言 ~『戦場 -元国家安全保障担当補佐官による告発』~
【佐藤優】宗教改革の物語 ~近代、民族、国家の起源~」」
【本】舌鋒鋭く世の中の本質に迫る/地球規模で読まれた洞察の書 ~『反脆弱性』~
【本】【神戸】「自己満足」による過剰開発のツケ ~『神戸百年の大計と未来』~
【本】英国は“対岸の火事”にあらず ~新自由主義による悲惨な末路~
【本】人材開発でもPDCAを回す ~戦略的に人事を考える必読書~
【本】仮想通貨が通用する理屈 ~『経済ってそういうことだったのか会議』~
【本】進化認知学の世界への招待 ~『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』『動物になって生きてみた』~
【本】「戦争がつくっった現代の食卓」 ~ネイティック研究所~
【本】IT革命、コミュニケーションの変容、家族の繋がりが希薄化 ~『「サル化」する人間社会』~
【本】生命はいかに「調節」されるかを豊富な事例で解き明かす ~『セレンゲティ・ルール』~
【本】メディアの問題点をえぐる ~『勝負の分かれ目 メディアの生き残りに賭けた男たちの物語』~
【本】テイラー・J・マッツェオ『歴史の証人 ホテル・リッツ』
【本】中国から見た邪馬台国とは
【本】核兵器は世界を平和にするか ~著名学者2人がガチンコ対決~
【本】『戦争がつくった現代の食卓 軍と加工食品の知られざる関係』
【本】梅原猛『梅原猛の授業 仏教』
【本】東芝が危機に陥った原因は「サラリーマン全体主義」 ~『東芝 原子力敗戦』~
【本】バブル崩壊後の経済を総括 ~『日本の「失われた20年」』~
【本】20世紀英国は実は軍事色が濃厚 ~通念を覆す『戦争国家イギリス』
【本】時代による変化、方言など ~『オノマトペの謎 ピカチュウからモフモフまで』~
【本】冷笑的な気分に喝を入れる警告と啓発に満ちた本 ~『日本中枢の狂謀』~
【本】物質至上主義批判の古典 ~『スモール イズ ビューティフル』~
【本】日本近現代史を学び直す ~『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』~
【本】精神の自由掲げた9人の輝き ~『暗い時代の人々』~
【本】遊牧民は「野蛮」ではなかった ~俗説を覆すユーラシアの通史~
【本】いつも同じ、ブレないのだ ~『ブラタモリ』(1~8)~
【本】分裂する米国を論じた労作 ~『階級 「断絶」社会 アメリカ』~
【本】否応なきグローバル化、つながることの有用性 ~「接続性」の地政学~
【本】読書の効用、ゆっくり丹念な ~より速く成果を出すメソッド~
【本】国谷裕子『キャスターという仕事』
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【佐藤優】政治(国家)指導者の能力 ~対テロ(3)~

2018年04月21日 | ●佐藤優
 <それでは、本書の内容について読者に若干の道案内をしたい。
 ガノール氏は、テロ対策によって政治(国家)指導者の能力が測られると考える。

  〈テロリズムは、誰にでも明らかに結果がわかる政策決定者の能力テストとなる。彼らはプレッシャーの下、指導力とその場その場で決定を下していく能力が試される。指導者のテロの脅威への対応能力はすぐに国民の知るところとなり、その政治生命に多大な影響を与える。これが時折、発生したテロ問題を迅速に解決しようと、選択肢も、それがもたらす結果も深く考えずに間違った決定を下してしまう原因になることがある。こういう時の決定ミスの代償は高くつくことが多く、経済的、政治的、国際的に副次的な損害が出るだけでなく、人命が失われることもある。〉(本書43頁) 

 この指摘のとおりだ。特に代議制をとる国家では、テロ対策に失敗すると政治家は失脚するリスクがある。同時にテロ対策との口実で、国家が国民の権利と自由を不当に侵害する危険もある。政治(国家)指導者には、これらの要因を総合的に判断し、具体的な政策をとらなくてはならない。これは実に難しい課題だ。
 ガノール氏はテロ対策における論点として、インテリジェンス、攻撃力、抑止力、法整備、処罰、カウンターインテリジェンス、広報、教育、国際協力、マスメディアなどをあげる。
 
  〈本書では対テロ戦争で政策決定者が直面する主要な問題を取り上げる。インテリジェンス、攻撃、抑止、そして防御活動に関する問題、法と刑罰、また情報と教育に関する問題、国際協力、マスコミその他に関係する問題などである。それぞれの分野でポイントとなる事柄をいくつか検証し、いろいろな解決法をまず考える。そして各解決法の長所と短所を議論したあと、イスラエルが長年にわたるテロとの戦いで得てきた経験に基づき、問題を解決するためのひとつの選択肢を推薦する。
  本書は、テロリズムにどう対処していいかわからない人々のガイド、政府のリーダーや議員、治安機関の長、軍人、警察や緊急事態に対処する組織で働く人々など、すべてのレベルの政策決定者のツールとして書かれた。また学者、学生、多国籍企業の社長、ビジネスマン、そして一般大衆の役にも立つはずだ。残念ながら一般の人々でもテロの台風の目の中にはいってしまい、どうすれば次のテロ攻撃の犠牲者にならずにすむかを考えなければならないことがあるからだ。〉(本書44頁) 

 ここでガノール氏が述べている通り、本書は、政策決定者、テロ問題の専門家にも一般の読者にも役立つ構成になっている。

□ボアズ・ガノール(佐藤優・監訳、河合洋一郎・訳)『カウンター・テロリズム・パズル 政策決定者への提
言』(並木書房 2018)の冒頭、佐藤優「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の「(3)政治(国家)指導者の能力」を引用

 【参考】
【佐藤優】アート(芸術)としてのインテリジェンス ~対テロ(2)~
【佐藤優】ボアズ・ガノール氏との出会い
【佐藤優】「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の目次

 
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【佐藤優】アート(芸術)としてのインテリジェンス ~対テロ(2)~

2018年04月21日 | ●佐藤優
 <本書で、ガノール氏は、テロリズム研究における学際性を強調する。

  〈テロリズムはほかの事象と比較して学際性が高い問題である。ほとんどすべての学問分野(政治学、国際関係論、中東学、社会学、心理学、経済学、コンピューター科学、法律、生物学、化学、物理その他多数)がテロリズムのひとつかそれ以上の側面と密接に関連している。このため、テロリズムに対抗するにはできるだけ幅広い視点と分析能力が求められる。学究システムは、あらゆる関連知識と情報が利用できるように準備されたものでなければならない。この取り組みの一環として、卓越した知性人を備えた国際的な学究ネットワークを設立すべきである。彼らをとくに予防機関に関連する問題の研究に向かわせ、必要な財政資源を提供し、世界中のさまざま研究者をリンクして作業部会を開催し、共同の学問データベースの構築を支援する。(本書339頁)〉【注】 

 ガノール氏も私に、空軍のインテリジェンス部隊を離れ、民間のシンクタンクであるICTを立ち上げたのは、そうしないとテロリズム研究の学際性が担保されないと考えているからだと述べた。確かにその通りと思う。
 ところでインテリジェンスに関して、それは究極的にアート(芸術)と考える人とテクネー(技法)と考える人がいる。もちろん実際のインテリジェンスには両方の要素があるのだが、ガノール氏の場合、インテリジェンスをアートと考えている。特別の才能を持った人のひらめきなくしてインテリジェンスは成立しないという認識が、本書の行間から読み取ることができる。ガノール氏もアートとしてのインテリジェンスを体得している特別の才能を持った人であることは、本書を読んでいただければよくわかる。事実、国際テロリズムに関するこのような学術的水準の高い包括的研究書を1人で書くことができるのは、全世界でもガノール氏以外いないと私は思っている。>

 【注】原書では、引用は全文2字下げだが、ここでは〈 〉内に示す。

□ボアズ・ガノール(佐藤優・監訳、河合洋一郎・訳)『カウンター・テロリズム・パズル 政策決定者への提
言』(並木書房 2018)の冒頭、佐藤優「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の「(2)アート(芸術)としてのインテリジェンス」を引用

 【参考】
【佐藤優】ボアズ・ガノール氏との出会い
【佐藤優】「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の目次

 
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【南雲つぐみ】ボルダリング ~東京五輪新競技~

2018年04月20日 | 医療・保健・福祉・介護
 岩を登るスポーツ全般をロッククライミングという。その中でボルダリングは、命綱を使わずに手足だけで登っていくスポーツだ。岩をつかみ、傾斜の険しい壁を登るなど、体力も筋力もない人間には無理だと思っていたが、まったくの初心者でもなかなか楽しめた。
 ボルダリングを行う人工壁には、さまざまな形や大きさの岩(ホールド)が付いていて、決められたホールドの順番に手足を掛けて登っていく。ゴール(G)と書かれたホールドにたどり着くか、天井にタッチできればゲームクリアとなる。
 決められたホールドしかつかんではいけなので、体の動かし方が重要になる。バランスの取り方などを考える頭脳ゲームでもあり、「体を使ったチェス」といわれることもあるそうだ。
 ボルダリングは、今話題の「マインドフルネス」に活用できるという。マインドフルネスとは五感を通して、「あるがまま」を受け入れること。心のエクササイズとして注目されている。今この瞬間、どうやって岩をつかむかに意識を集中することで、脳が余計な悩み事から解放されるのだ。

□南雲つぐみ(医学ライター)「ボルダリング ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年11月18日)を引用
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