＜「コリント（Collint）」という術語がある。「コレクティブ・インテリジェンス（Collective Intelligence）」の略語であるが、最近では、ＡＩ（人工知能）との関係で用いられることが多く、「集合知」という訳語が与えられている。しかし、「コリント」は、本来、諜報（インテリジェンス）用語で、日本外務省では「協力諜報」と訳している。ＣＩＡ（米中央情報局）、ＳＶＲ（ロシア対外諜報庁）、モサド（イスラエル諜報特務庁）などの対外インテリジェンス機関は、それぞれ得意分野と不得意分野がある。それだから、自分の得意分野に関する情報をそれぞれ提供することで、インテリジェンス・コミュニティ全体のレベルを上げていこうとするのが「コリント」だ。それぞれの国益が対立している分野では、対外インテリジェンス機関も、互いに激しい抗争を展開している。マスメディアで報道されるのはこのような対立面がほとんどであるが、対外インテリジェンス機関は、各国の利害が一致する分野では踏み込んだコリントを行っている。イスラム教スンナ派過激組織「イスラム国」（ＩＳ）を封じ込め、解体する過程においても、ＣＩＡ、ＳＶＲ、モサドなどは「コリント」を積極的に推進している。
本書は、世界が激動する中で、宗教について「コリント」の手法を適用した最初の試みと思う。本書のもとになったのは、２０１７年８月１９日（土）に有楽町朝日ホール（東京都千代田区）で行われた「連続シンポジウム 激動する世界と宗教－私たちの現在地 第１回 宗教と資本主義・国家」の記録を編集したものである。当日の行事は以下のように進められた。
第Ⅰ部 対談（９０分）
宗教は資本主義を超えられるか
・池上彰（ジャーナリスト）
・佐藤優（作家）
第Ⅱ部
講演①（３０分）
「人間中心でなく、見えないモノへの多層的視座をもつこと」
・若松英輔（批評家）
講演②（３０分）
「日本の近代仏教を紐解くと中世より面白い」
・碧海寿広（龍谷大学アジア仏教文化研究センター博士研究員）
第Ⅲ部 パネルディスカッション（９０分）
・松岡正剛（編集工学研究所所長）
・Ⅰ部、Ⅱ部の全登壇者
ジャーナリストとして広範な問題に通暁し、宗教についても造詣が深く、現場での取材を重視する池上彰氏と、基礎教育がキリスト教（プロテスタント神学）で外交実務の経験もある私が、宗教と資本主義について、第Ⅰ部で「問題の場」の設定を行った。第Ⅱ部では、カトリック神学、宗教哲学に通暁し、文芸批評の分野で活躍する若松英輔氏と日本近代仏教研究の第一人者である碧海寿広氏が、最新の学知を踏まえた上で、それぞれのテーマについてわかりやすく話をした。これらを踏まえ、日本の知性を代表する松岡正剛氏の見事な手さばきで、「生きている宗教」と「現実に存在する資本主義」の関係について、議論を深く掘り下げていった。
その内容については、本文を読んでいただければわかるので、ここで屋上屋を架すような解説はしないが、まさに本書の議論の進め方と、議論の収斂の仕方が「コリント」なのである。＞
□池上彰・佐藤優・松岡正剛・碧海寿広・若松英輔『宗教と資本主義・国家 激動する世界と宗教』（KADOKAWA、２０１８）の「おわりに」から一部引用
【参考】
「【佐藤優】人間が借りているもの ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】行動経済学とファシズムの親和性 ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】宗教とジャーナリズム ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】宗教者とは、貧しき者、虐げられた者たちとある者だ ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】キリスト教にとってのお金 ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】オウム事件が他人事ではない理由 ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】革命再考 ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】時間とお金を何に使うか ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】資本主義的な論理を超えて ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】「本来の宗教」は存在するのか ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】死生観の変化が私たちにもたらすもの ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】独身であることと権力 ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】個別性と普遍性 ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】宗教に関する訳語 ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】宗教が土着化するということ ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】沖縄における魂観 ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】国が追悼施設をつくるべきではない（靖国問題） ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】「国家主義教」 ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】出世教、学歴教、etc. ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】お金という神さま ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】人間の思考と魂の根底に迫る ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】『宗教と資本主義・国家 激動する世界と宗教』の目次」
本書は、世界が激動する中で、宗教について「コリント」の手法を適用した最初の試みと思う。本書のもとになったのは、２０１７年８月１９日（土）に有楽町朝日ホール（東京都千代田区）で行われた「連続シンポジウム 激動する世界と宗教－私たちの現在地 第１回 宗教と資本主義・国家」の記録を編集したものである。当日の行事は以下のように進められた。
第Ⅰ部 対談（９０分）
宗教は資本主義を超えられるか
・池上彰（ジャーナリスト）
・佐藤優（作家）
第Ⅱ部
講演①（３０分）
「人間中心でなく、見えないモノへの多層的視座をもつこと」
・若松英輔（批評家）
講演②（３０分）
「日本の近代仏教を紐解くと中世より面白い」
・碧海寿広（龍谷大学アジア仏教文化研究センター博士研究員）
第Ⅲ部 パネルディスカッション（９０分）
・松岡正剛（編集工学研究所所長）
・Ⅰ部、Ⅱ部の全登壇者
ジャーナリストとして広範な問題に通暁し、宗教についても造詣が深く、現場での取材を重視する池上彰氏と、基礎教育がキリスト教（プロテスタント神学）で外交実務の経験もある私が、宗教と資本主義について、第Ⅰ部で「問題の場」の設定を行った。第Ⅱ部では、カトリック神学、宗教哲学に通暁し、文芸批評の分野で活躍する若松英輔氏と日本近代仏教研究の第一人者である碧海寿広氏が、最新の学知を踏まえた上で、それぞれのテーマについてわかりやすく話をした。これらを踏まえ、日本の知性を代表する松岡正剛氏の見事な手さばきで、「生きている宗教」と「現実に存在する資本主義」の関係について、議論を深く掘り下げていった。
その内容については、本文を読んでいただければわかるので、ここで屋上屋を架すような解説はしないが、まさに本書の議論の進め方と、議論の収斂の仕方が「コリント」なのである。＞
□池上彰・佐藤優・松岡正剛・碧海寿広・若松英輔『宗教と資本主義・国家 激動する世界と宗教』（KADOKAWA、２０１８）の「おわりに」から一部引用
【参考】
「【佐藤優】人間が借りているもの ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】行動経済学とファシズムの親和性 ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】宗教とジャーナリズム ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】宗教者とは、貧しき者、虐げられた者たちとある者だ ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】キリスト教にとってのお金 ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】オウム事件が他人事ではない理由 ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】革命再考 ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】時間とお金を何に使うか ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】資本主義的な論理を超えて ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】「本来の宗教」は存在するのか ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】死生観の変化が私たちにもたらすもの ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】独身であることと権力 ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】個別性と普遍性 ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】宗教に関する訳語 ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】宗教が土着化するということ ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】沖縄における魂観 ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】国が追悼施設をつくるべきではない（靖国問題） ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】「国家主義教」 ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】出世教、学歴教、etc. ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】お金という神さま ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】人間の思考と魂の根底に迫る ～宗教と資本主義・国家～」
「【佐藤優】『宗教と資本主義・国家 激動する世界と宗教』の目次」
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