安全問題研究会~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

公共交通と原発を中心に社会を幅広く考える。連帯を求めて孤立を恐れず、理想に近づくため毎日をより良く生きる。

真夏の北陸の旅(第2日目)~富山地鉄に乗る

2023-07-16 20:59:20 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
2日目となる7月16日早朝、ホテルを午前6時に出て、地下鉄で大阪駅へ。「サンダーバード1号」に金沢までの全区間乗る。経営悪化で上下分離の動きが出ている北陸鉄道には「乗れたら乗りたい」くらいの気持ちだったが、朝から35度近い猛暑に加え、北鉄金沢駅の場所がなかなかわからないため、結局乗れずじまいになってしまった。北鉄に乗れなかったために生まれた中途半端な空き時間は、金沢屈指の観光名所である近江町市場や兼六園に行くには短すぎるし、ちょっとした用事を済ますには長すぎる。結局、金沢駅の散策で終わった。

当初計画では金沢10:58発、北陸新幹線「はくたか560号」に乗る予定だった。北鉄浅野川線を往復してから乗り継ぐには最速でもこの列車になるはずだったが、北鉄に乗り損ねたため、予定を早め金沢10:34発「つるぎ706号」(富山行き)に全区間乗り通す。はっきり言えば新幹線に乗るような距離ではないが、新幹線と在来線の乗継割引が多くの区間で廃止となる中、同じJR西日本エリア内ということもあってか北陸本線特急と北陸新幹線とはいまだに乗継割引が適用される。トータルで見るとあまり変わらない。

10:57、富山駅着。昼食を摂るにはまだ早すぎるので、手荷物預かり所にキャリーバッグを預け、電鉄富山駅に向かう。北陸新幹線を1本早めたのだから、富山地鉄も1本速い列車に乗れることを期待したが、……結局、乗り継ぎできるのは当初計画と同じ列車だった。

富山地鉄には初めて乗る。はるか昔は国鉄からの乗り入れや連絡運輸(乗車券類の通し販売)も行われていたが、だいぶ前に姿を消した。駅窓口で聞くと、1日フリーパスがあるという。買おうとしたが、富山地鉄のような営業キロの長い私鉄では、ひょっとすると2日間フリーパスがあるかもしれないと思い、聞けばそれもあるという。おおざっぱな計算でも、今後、当初の計画通りに乗り進められれば確実に元が取れるので、購入する。2日間で4,600円だが、地方私鉄とは思えない富山地鉄の路線の長さを思えば安いものだ。





11:45に電鉄富山駅を出て、まずは不二越・上滝線を岩峅寺(いわくらじ)まで乗り通す。12:20、岩峅寺着。すぐに12:26発の立山線・立山行きに乗り換える。12:54、立山着。

立山駅からは、立山ケーブルで美女平をめざす。ケーブルカーは鉄道事業法適用であるものの、索道に分類され、私の全線乗車ルールでは対象外。乗車しても参考記録扱いだが、多くの登山客やスキー客が訪れる「立山黒部アルペンルート」の一部をなすこのケーブルカーに、ここまで来て乗らない手はない。それに、もし将来「ケーブルカーも乗車対象」とルールを変更するようなことがあったときに、「やっぱりあのとき乗っておけばよかった」とは思いたくない。乗れるものには乗っておけ、と自分を奮い立たせ、駅に並ぶ。

正直なところ、ごった返す登山客でケーブルカーは臨時便を運転しなければならないほどの大混雑。長蛇の列ができていたが、1本待つことで乗れた。何しろ新型コロナの5類移行後としては初の3連休なのだ。

観光地なのだから昼食を摂れる場所は美女平にあるだろうと思ったが、考えが少々甘かった。数軒ある飲食店はどこも満員で、すぐに入れそうな様子には見えない。やむを得ず、帰りのケーブルカーに乗り、再び立山駅に下りる。駅構内に登山客向けの軽食店があったので、うどんを食す。塩分・水分ともに豊富なうどんは、熱中症対策としてはとても適したメニューといえる。

<動画>2023.7.16 立山ケーブル 立山~美女平


立山からは、岩峅寺まで立山線を折り返した後、寺田まで立山線を走り、本線に直通する14:00発電鉄富山行きに乗る。予定通り、15:10電鉄富山駅着。

ここで、地域公共交通活性化再生「優良事例」とされるライトレールをめざす。JR西日本・富山港線時代に一度乗っているが、一部区間は道路上に付け替えられるなどして、旧富山港線とまったく同じではない。少なくとも、ルートが変わった区間には乗っておかなければならない。

富山駅は、もともと駅南側を走っている市内電車と、北側を岩瀬浜まで走っていた旧富山港線転換ライトレールを直通運転できるようにするため、富山駅をぶち抜き、線路を駅構内でつなげるという大胆なもの。市内電車からやってきたLRT車両に乗る。途中、単線区間があるためLRTはなかなか富山駅を発車できなかったが、対向列車が富山駅に入線するとようやく道路信号が青になった。

道路信号に従いしばらく路面区間を走る。「奥田中学校前」電停付近で、LRTは大きく左折して道路を外れると、旧富山港線のレールに乗る。ここで右側を見ると、道路の向かいに遊歩道のような細い道があり、これが旧富山港線の跡地だとすぐにわかった。長年、鉄道ファンをやっていると、廃線跡は何となくわかるようになる。

旧富山港線区間に入ると、LRT車両は急にスピードアップする。60~80km/hくらいは出していることが速度計からわかる。停留所の数は旧富山港線時代より大幅に増えた。国鉄系気動車から床面の低いLRTに変わったため、JR時代のプラットホームは廃棄され、新たに電停が作られている。

岩瀬浜に到着すると、駅前のロータリー付近で待機していた「フィーダーバス」がロータリー内に進入してくる。列車とバスの乗り換え待ち時間をなくすためで、全駅ではないものの、主要駅では行われている。正直、「ここまでやるのか!」と驚かされるが、冷静に考えれば、列車の到着に合わせてバスを運行するというのは、乗客目線で考えれば当たり前のことだ。この「当たり前」が日本ではなかなか実現せず、近年ではできなくて当たり前というある種のあきらめムードが支配的だった。富山港線時代は乗れば必ず座れるほど空いていたのが、いまや始発駅でも座れないのが当たり前なほど車内は混んでおり、しかも休日のせいか、明らかに中高生とわかる若年層が多いことも特筆すべきだろう。



なるほど、国が地域公共交通活性化再生「優良事例」に挙げたくなるのもわかる。「当たり前」のことを、当たり前にやることが実は最も難しいのだ。その当たり前のことを、当たり前に実現した富山市の努力を多としたい。

同時に、指摘しておかなければならないのは、日本中、どこでも富山市のようにできるわけではないということである。もともと、富山地鉄という地元に広く定着した有力な私鉄が長大な路線網を持っており、その会社にJRのローカル線を引き受けてもらうことができた。市内電車と旧富山港線転換ライトレールがうまく接続できたのも、両者が富山地鉄という1事業者の中で完結しているという背景を抜きにすることはできない。複数の公共交通事業者の枠を超えた連携という、国がめざす本来の活性化再生の域にはまだ達していない。それに、富山のような好条件が重なっている場所はほとんどない。地元に根ざした有力な私鉄も市内電車も持たない他都市が同じようにしたくても、できないのが実情だろう。

国が、地域公共交通活性化再生の旗を振ることに反対はしないが、他のすべての地域にこれと同じことを求めるのは、「みんなに大谷翔平になれ」と求めるようなものだ。所与の条件が揃っているのかどうかを見極めてからでないと、単なる公共交通のコンパクト化、縮小だけに終わりかねない。そんな危惧も同時に感じた。

富山駅に戻ってきた私は、午前中、預けたキャリーバッグを手荷物預かり所で回収。富山地鉄本線を、電鉄黒部まで乗る。あいの風とやま鉄道・黒部駅にほど近い「ホテルアクア黒部」に投宿。明日も早朝の出発になるため、早めに就寝、猛暑下の遠征による疲れの回復に努める。

<完乗達成>〔新規乗車〕富山地方鉄道不二越・上滝線、立山線、〔奪還〕富山ライトレール(富山駅~岩瀬浜)、〔参考記録〕立山ケーブル

※立山ケーブルは索道のため参考記録。また、富山ライトレールは旧富山港線時代に一度全線完乗しているが、富山駅~奥田中学校前電停付近までは旧富山港線時代の場所から、道路上にルートが変わっている。このため、富山駅~奥田中学校前までの区間を新規乗車区間とみなし、富山ライトレールの富山駅~岩瀬浜を「奪還」(完全乗車達成後、線路付け替えにより再び未乗車区間が発生した場合において、当該未乗車区間の全部に再度乗車し、全線乗車状態を取り戻すこと)として整理した。

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