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分割民営化による「国鉄解体・JR発足」30年 破たんしたJRを清算し、再国有化を実現する議論と国民運動を/安全問題研究会

2017-04-01 22:03:32 | 鉄道・公共交通/交通政策
<安全問題研究会声明>
分割民営化による「国鉄解体・JR発足」30年 破たんしたJRを清算し、再国有化を実現する議論と国民運動を

 国鉄を民営7社に分割する1987年4月1日の国鉄「改革」から30年を迎えた。

 分割民営化に反対する国労組合員らを「人材活用センター」と称する労働者いじめ機関に送り込み、労働者から鉄道員としての誇りを奪い去ることで利益第一に変貌させようとする「新生」JRの枠組みを見て、反対派が危惧し、恐れていたことのすべてが、30年後の今日、最悪の形で現実になった。東中野駅事故、信楽高原鉄道事故、そしてJR最大の悲劇となった福知山線脱線事故で、乗客150人以上の命が奪われた。この間、自殺に追い込まれた国鉄労働者は200人に及んだ。物言う労働組合の解体は、日本の全労働者を「賃金定額制使い放題」のどん底に追い込む新自由主義「構造改革」の端緒となった。

 全路線キロの半分が維持困難と発表されたJR北海道で、自分たちの雇用・身分や職場の将来に関わる重大問題であるにもかかわらず、声明などの形で何らかの見解を発表したのは少数派であるJR連合-北海道労組のみ。道内で集会などの闘いを組織したのも道労連-建交労のみにとどまっている現実がある。無慈悲に実行された労働組合解体と、企業活動に対する監視・チェック役不在の深刻さ、罪深さを物語っている。

 JR東海の鉄道事業営業収益は5556億円であるのに対し、JR北海道はマイナス483億円。3島会社とJR貨物を合わせた4社の営業損失は741億円だが、本州3社で最も収益構造が脆弱なJR西日本でさえ1242億円と、4社合計の営業損失を大幅に上回る営業収益を上げている。これは、3島+貨物の全体をJR西日本だけで救済でき、お釣りが来ることを示している。これほどの凄まじい会社間格差を、心ある人なら誰も容認しないであろう。強い会社はより強く、弱い会社はより弱くなる格差拡大と弱肉強食こそJRの歴史であったことが鮮明になった。

 分割民営化から30年を迎えた1日、札幌市で「JR30年を検証する札幌集会」が、当研究会も参加して開催された。会場では、JRの減便で沿線の高校生の部活動がまともに成り立たなくなっている実態や、廃線・減便のため沿線住民が通院をあきらめざるを得ない深刻な事例が次々と報告された。国の政策の誤りによる被害が最も弱い立場の者から始まることは古今東西共通であり、ここで闘わなければ1%の支配層以外のすべての市民にとって明日は我が身となるであろう。

 会場で配布された1986年当時の資料「ペテン師たちの国鉄つぶし~分割・民営化のウソとホント」(国鉄の分割・民営化に反対する北海道共闘会議)には「分割・民営化されると北海道の国鉄路線はたったの5線に!」「国民の移動の権利を侵害」「大量首切り法案」「赤字のツケは国民に」「ローカル線はバッサリ切り捨て」との記述がある。30年後の今日、振り返ってみると、分割民営化反対派の「予言」は身震いするほど的確であった。

 農協労組の組合員からは、北海道と本州を結んで走る貨物列車の輸送の4割が農畜産物などの食料品であることも報告された。北海道は、昔も今も鉄道輸送を通じて全国各地の食料を支え、そのことに誇りを持ってきた。その北海道が、分割・民営化当時、全路線の3分の1を失うという大きな犠牲を強いられた。それから30年後の今日、再び残った路線の半分が廃線の危機に瀕している。食料輸送の根幹を支える鉄道の除雪や保線の費用をみずから負担しながら、全国で最も多くの国鉄労働者が解雇され、最も多くの路線を失い、最も早く地域衰退に直面し、最も高いJR運賃に耐えてきた北海道に、これ以上どのような犠牲が必要だというのか。もしこれ以上の犠牲を強いられるなら、北海道民は、国鉄分割民営化とそれを生み出した政府・自民党に対し、重大な決意をもって臨むことになる。北海道に拠点を置き、活動している当研究会は「食料自給率1%の東京が200%の北海道より豊かな暮らしをしている根拠は何か。そこに正当性はあるのか」を全国民に問いたいと考える。

 JR北海道に続き、JR四国も路線別の収支を公表する構えを見せている。北海道に続き四国でも路線維持問題が遠からず噴出するであろう。持続可能な範囲をはるかに超える会社間格差の拡大は、JR体制を崩壊に導く爆弾になりつつある。

 石破茂・元地方創生担当相が「JR北海道は誰が経営しても無理」と発言、麻生太郎副総理兼財務相までが「根本に手を付けずにこの問題を解決するのは無理」と国会で答弁するなど、自民党内の一部にも危機感を持つ人が出てきている。2000年にハットフィールド脱線事故を起こした英国は線路保有部門を再国有化、民営でスタートした米国の鉄道アムトラックも国有化されるなど、鉄道の「民営から公共的企業形態へ」は国際的潮流だ。この事実から目を背け、国民本位の公共交通再建に向けたJR改革を未だ拒み続ける最大の抵抗勢力は国交省である。

 国民の公共交通であった国鉄を解体し、新自由主義を社会の隅々にまで浸透させ、絶望と対立と分断の淵に全国民を追いやる端緒となった国鉄「改革」。労働者、乗客・利用者、地方にすべての犠牲を押しつけ、利益はJR株主・経営者と財界が総取りしてきた「犠牲のシステム」――これこそ30年の歴史を通じて見えてきたJRの真実だ。

 この巨大な犠牲のシステムと闘い、勝利するためには、これを単に地方や社会的弱者のための交通権の維持という課題にとどめることなく、みずからの生存権を確保する闘いにバージョンアップする必要がある。公共交通維持の社会的使命を失ったJRと、それをもたらした新自由主義の時代に終止符を打ち、全国の鉄道網が持続可能な新たな枠組みに向けた端緒を切り開くことは、今や日本の全市民に課せられた義務である。

 当研究会は国鉄分割民営化の検証と責任追及、JR再国有化を通じた国民本位の公共交通、国民の足の再建を、政治・行政に対して強く求める。全国全市民が叡智を結集してこの問題を議論し、国民運動を起こすよう改めて呼びかける。この目的を達するため、当研究会は、みずからの生存権をかけて、今後もあらゆる取り組みを続ける。

 2017年4月1日
 安全問題研究会

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第89回選抜高校野球大会を振り返って(大会講評)

2017-04-01 21:09:00 | 芸能・スポーツ
第89回選抜高校野球は、史上初の大阪勢同士の対戦となった結果、大阪桐蔭が8-3で履正社を破り優勝を果たした。大阪桐蔭は、昨秋の近畿大会では履正社に敗れており、リベンジを果たしたことになる。同じ都府県同士の決勝対決は1972年の日大桜丘-日大三(ともに東京)戦以来45年ぶり、史上5度目。

では、例年通り大会を振り返っておこう。

今年の大会は、開会式直後の1回戦第1試合(呉-至学館)がいきなり延長戦となったのを初めとして、2回戦までに6試合が延長になるなど、延長戦の多い大会だった。特筆すべきなのは、なんと言っても大会7日目の3試合のうち、第2試合の福岡大大濠(福岡)-滋賀学園(滋賀)、第3試合の福井工大福井(福井)-健大高崎(群馬)の2試合がいずれも延長15回で決着がつかず再試合にもつれ込んだことだ。「2試合連続の延長15回引き分け再試合」「1大会で2試合の延長15回引き分け再試合」は長い高校野球の歴史でも、春夏の大会通じて史上初という珍しい記録が生まれた。

大会2日目の報徳学園(兵庫)-多治見(岐阜)戦で21-0のような極端なワンサイドゲームもあったものの、これは例外といってよく、接戦が多かったのが今大会の特徴といえる。各校とも守備が堅く、エラーはしても得点に結びつくような決定的なものは少なかった印象だ。全体的に要所要所を好守で締めるチームが目立ったことも接戦の試合を増やした要因といえよう。

ただ、延長戦となった6試合も、データを詳細に検討すると違う側面が見えてくる。全体的に、2桁安打を放ちながら得点が安打数の半分以下というチームが多かった。チャンスにあと1本が出ず、本塁が遠いチームが多かったことも接戦、延長戦を増やした理由として指摘しておく必要がある。高校野球は「春は投手力・守備力、夏は総合力」と言われることが多いが、全般的に「守高打低」で、打撃より守備のチームが目立ったことはこの定石通りといってよいだろう。

同一都道府県から複数の高校が出場する「アベック出場」が多かったのも今年の大会の特徴だ。大阪2校に加え、盛岡大付、不来方(21世紀枠)はいずれも岩手。群馬からは前橋育英、健大高崎。東京から早稲田実、日大三。報徳学園、神戸国際大付(いずれも兵庫)、智弁学園、高田商(いずれも奈良)に明徳義塾、中村(21世紀枠)はいずれも高知。九州からも、福岡大大濠、東海大福岡の福岡勢に秀岳館、熊本工の熊本勢。出場全32校のうち、18校と実に半数以上がアベック出場だ。こんなにアベック出場が多かった大会は記憶にない。これが単なる偶然なのかどうかは今後の推移を見守る必要があるが、「強い都道府県はより強く、弱い都道府県はより弱く」の格差拡大の結果がアベック出場の続出だとしたら、手放しで喜ぶことはできない。

ここ10年ほど、高校野球では関東・東北勢が際立って強く、関西、九州勢が弱い「東高西低」が続いてきたが、今回の大会は、この流れを覆すように西日本勢が久しぶりの強さを発揮した。特に、近畿勢の強さは当ブログ管理人が球児だった往年を偲ばせるものがあった。8強に残ったのは、決勝で対決した大阪勢のほか、報徳学園の近畿勢3校。福岡大大濠、東海大福岡、秀岳館の九州勢3校。東日本勢は健大高崎と盛岡大付の2校にとどまった。4強は、大阪2校に報徳、秀岳館。東日本勢は1校も残れなかった。

ただ、顔ぶれを見ると、大阪桐蔭、履正社、報徳の「常連」校が強さを見せたに過ぎず、これをもって近畿勢全体の底上げといえるかどうかは、これまた推移を見守る必要があろう。東日本大震災以降の東北勢の強さは一時、目を見張るものがあったが、震災から6年目を迎え、そろそろ震災の「魔法」も切れてきたのだろうか。

印象に残った学校としては、21世紀枠での出場を果たした不来方を挙げたい。春の選抜大会は、1年生が不在で、新2、3年生のみのチーム構成となるため、ベンチ入り選手が少ない学校が出場権を得ることがしばしばあるが、当ブログが調べたところ、ベンチ入りの選手が10人での出場は、1987年の大成(和歌山)があるくらいでほとんど例がない。11人での出場であれば、高校野球史上に残る名将・蔦文也監督に率いられ、「さわやかイレブン」の愛称で甲子園に旋風を巻き起こした池田(徳島)の例がある。こうしたベンチ入り選手数の少ない学校がしばしば旋風を巻き起こすのも、夏の大会にはない春の選抜独特の醍醐味といえる。不来方は惜しくも初戦敗退したが、1年生を加えた新布陣で、また夏に戻ってきてほしい。

春はセンバツからと言われる。当ブログ管理人の住む北海道では、3月中旬になっても時折、大雪の降ることが珍しくないが、選抜が終わる4月初旬には大雪が降ることもなくなり、皮膚を突き刺すような痛く冷たい風からようやく解放される。草花の芽吹く春、敗退した球児たちも、頂点を極めた球児たちも、草花とともに成長し、夏を目指して大輪の花を咲かせてほしい。

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