<安全問題研究会声明>
分割民営化による「国鉄解体・JR発足」30年 破たんしたJRを清算し、再国有化を実現する議論と国民運動を
国鉄を民営7社に分割する1987年4月1日の国鉄「改革」から30年を迎えた。
分割民営化に反対する国労組合員らを「人材活用センター」と称する労働者いじめ機関に送り込み、労働者から鉄道員としての誇りを奪い去ることで利益第一に変貌させようとする「新生」JRの枠組みを見て、反対派が危惧し、恐れていたことのすべてが、30年後の今日、最悪の形で現実になった。東中野駅事故、信楽高原鉄道事故、そしてJR最大の悲劇となった福知山線脱線事故で、乗客150人以上の命が奪われた。この間、自殺に追い込まれた国鉄労働者は200人に及んだ。物言う労働組合の解体は、日本の全労働者を「賃金定額制使い放題」のどん底に追い込む新自由主義「構造改革」の端緒となった。
全路線キロの半分が維持困難と発表されたJR北海道で、自分たちの雇用・身分や職場の将来に関わる重大問題であるにもかかわらず、声明などの形で何らかの見解を発表したのは少数派であるJR連合-北海道労組のみ。道内で集会などの闘いを組織したのも道労連-建交労のみにとどまっている現実がある。無慈悲に実行された労働組合解体と、企業活動に対する監視・チェック役不在の深刻さ、罪深さを物語っている。
JR東海の鉄道事業営業収益は5556億円であるのに対し、JR北海道はマイナス483億円。3島会社とJR貨物を合わせた4社の営業損失は741億円だが、本州3社で最も収益構造が脆弱なJR西日本でさえ1242億円と、4社合計の営業損失を大幅に上回る営業収益を上げている。これは、3島+貨物の全体をJR西日本だけで救済でき、お釣りが来ることを示している。これほどの凄まじい会社間格差を、心ある人なら誰も容認しないであろう。強い会社はより強く、弱い会社はより弱くなる格差拡大と弱肉強食こそJRの歴史であったことが鮮明になった。
分割民営化から30年を迎えた1日、札幌市で「JR30年を検証する札幌集会」が、当研究会も参加して開催された。会場では、JRの減便で沿線の高校生の部活動がまともに成り立たなくなっている実態や、廃線・減便のため沿線住民が通院をあきらめざるを得ない深刻な事例が次々と報告された。国の政策の誤りによる被害が最も弱い立場の者から始まることは古今東西共通であり、ここで闘わなければ1%の支配層以外のすべての市民にとって明日は我が身となるであろう。
会場で配布された1986年当時の資料「ペテン師たちの国鉄つぶし~分割・民営化のウソとホント」(国鉄の分割・民営化に反対する北海道共闘会議)には「分割・民営化されると北海道の国鉄路線はたったの5線に!」「国民の移動の権利を侵害」「大量首切り法案」「赤字のツケは国民に」「ローカル線はバッサリ切り捨て」との記述がある。30年後の今日、振り返ってみると、分割民営化反対派の「予言」は身震いするほど的確であった。
農協労組の組合員からは、北海道と本州を結んで走る貨物列車の輸送の4割が農畜産物などの食料品であることも報告された。北海道は、昔も今も鉄道輸送を通じて全国各地の食料を支え、そのことに誇りを持ってきた。その北海道が、分割・民営化当時、全路線の3分の1を失うという大きな犠牲を強いられた。それから30年後の今日、再び残った路線の半分が廃線の危機に瀕している。食料輸送の根幹を支える鉄道の除雪や保線の費用をみずから負担しながら、全国で最も多くの国鉄労働者が解雇され、最も多くの路線を失い、最も早く地域衰退に直面し、最も高いJR運賃に耐えてきた北海道に、これ以上どのような犠牲が必要だというのか。もしこれ以上の犠牲を強いられるなら、北海道民は、国鉄分割民営化とそれを生み出した政府・自民党に対し、重大な決意をもって臨むことになる。北海道に拠点を置き、活動している当研究会は「食料自給率1%の東京が200%の北海道より豊かな暮らしをしている根拠は何か。そこに正当性はあるのか」を全国民に問いたいと考える。
JR北海道に続き、JR四国も路線別の収支を公表する構えを見せている。北海道に続き四国でも路線維持問題が遠からず噴出するであろう。持続可能な範囲をはるかに超える会社間格差の拡大は、JR体制を崩壊に導く爆弾になりつつある。
石破茂・元地方創生担当相が「JR北海道は誰が経営しても無理」と発言、麻生太郎副総理兼財務相までが「根本に手を付けずにこの問題を解決するのは無理」と国会で答弁するなど、自民党内の一部にも危機感を持つ人が出てきている。2000年にハットフィールド脱線事故を起こした英国は線路保有部門を再国有化、民営でスタートした米国の鉄道アムトラックも国有化されるなど、鉄道の「民営から公共的企業形態へ」は国際的潮流だ。この事実から目を背け、国民本位の公共交通再建に向けたJR改革を未だ拒み続ける最大の抵抗勢力は国交省である。
国民の公共交通であった国鉄を解体し、新自由主義を社会の隅々にまで浸透させ、絶望と対立と分断の淵に全国民を追いやる端緒となった国鉄「改革」。労働者、乗客・利用者、地方にすべての犠牲を押しつけ、利益はJR株主・経営者と財界が総取りしてきた「犠牲のシステム」――これこそ30年の歴史を通じて見えてきたJRの真実だ。
この巨大な犠牲のシステムと闘い、勝利するためには、これを単に地方や社会的弱者のための交通権の維持という課題にとどめることなく、みずからの生存権を確保する闘いにバージョンアップする必要がある。公共交通維持の社会的使命を失ったJRと、それをもたらした新自由主義の時代に終止符を打ち、全国の鉄道網が持続可能な新たな枠組みに向けた端緒を切り開くことは、今や日本の全市民に課せられた義務である。
当研究会は国鉄分割民営化の検証と責任追及、JR再国有化を通じた国民本位の公共交通、国民の足の再建を、政治・行政に対して強く求める。全国全市民が叡智を結集してこの問題を議論し、国民運動を起こすよう改めて呼びかける。この目的を達するため、当研究会は、みずからの生存権をかけて、今後もあらゆる取り組みを続ける。
2017年4月1日
安全問題研究会
分割民営化による「国鉄解体・JR発足」30年 破たんしたJRを清算し、再国有化を実現する議論と国民運動を
国鉄を民営7社に分割する1987年4月1日の国鉄「改革」から30年を迎えた。
分割民営化に反対する国労組合員らを「人材活用センター」と称する労働者いじめ機関に送り込み、労働者から鉄道員としての誇りを奪い去ることで利益第一に変貌させようとする「新生」JRの枠組みを見て、反対派が危惧し、恐れていたことのすべてが、30年後の今日、最悪の形で現実になった。東中野駅事故、信楽高原鉄道事故、そしてJR最大の悲劇となった福知山線脱線事故で、乗客150人以上の命が奪われた。この間、自殺に追い込まれた国鉄労働者は200人に及んだ。物言う労働組合の解体は、日本の全労働者を「賃金定額制使い放題」のどん底に追い込む新自由主義「構造改革」の端緒となった。
全路線キロの半分が維持困難と発表されたJR北海道で、自分たちの雇用・身分や職場の将来に関わる重大問題であるにもかかわらず、声明などの形で何らかの見解を発表したのは少数派であるJR連合-北海道労組のみ。道内で集会などの闘いを組織したのも道労連-建交労のみにとどまっている現実がある。無慈悲に実行された労働組合解体と、企業活動に対する監視・チェック役不在の深刻さ、罪深さを物語っている。
JR東海の鉄道事業営業収益は5556億円であるのに対し、JR北海道はマイナス483億円。3島会社とJR貨物を合わせた4社の営業損失は741億円だが、本州3社で最も収益構造が脆弱なJR西日本でさえ1242億円と、4社合計の営業損失を大幅に上回る営業収益を上げている。これは、3島+貨物の全体をJR西日本だけで救済でき、お釣りが来ることを示している。これほどの凄まじい会社間格差を、心ある人なら誰も容認しないであろう。強い会社はより強く、弱い会社はより弱くなる格差拡大と弱肉強食こそJRの歴史であったことが鮮明になった。
分割民営化から30年を迎えた1日、札幌市で「JR30年を検証する札幌集会」が、当研究会も参加して開催された。会場では、JRの減便で沿線の高校生の部活動がまともに成り立たなくなっている実態や、廃線・減便のため沿線住民が通院をあきらめざるを得ない深刻な事例が次々と報告された。国の政策の誤りによる被害が最も弱い立場の者から始まることは古今東西共通であり、ここで闘わなければ1%の支配層以外のすべての市民にとって明日は我が身となるであろう。
会場で配布された1986年当時の資料「ペテン師たちの国鉄つぶし~分割・民営化のウソとホント」(国鉄の分割・民営化に反対する北海道共闘会議)には「分割・民営化されると北海道の国鉄路線はたったの5線に!」「国民の移動の権利を侵害」「大量首切り法案」「赤字のツケは国民に」「ローカル線はバッサリ切り捨て」との記述がある。30年後の今日、振り返ってみると、分割民営化反対派の「予言」は身震いするほど的確であった。
農協労組の組合員からは、北海道と本州を結んで走る貨物列車の輸送の4割が農畜産物などの食料品であることも報告された。北海道は、昔も今も鉄道輸送を通じて全国各地の食料を支え、そのことに誇りを持ってきた。その北海道が、分割・民営化当時、全路線の3分の1を失うという大きな犠牲を強いられた。それから30年後の今日、再び残った路線の半分が廃線の危機に瀕している。食料輸送の根幹を支える鉄道の除雪や保線の費用をみずから負担しながら、全国で最も多くの国鉄労働者が解雇され、最も多くの路線を失い、最も早く地域衰退に直面し、最も高いJR運賃に耐えてきた北海道に、これ以上どのような犠牲が必要だというのか。もしこれ以上の犠牲を強いられるなら、北海道民は、国鉄分割民営化とそれを生み出した政府・自民党に対し、重大な決意をもって臨むことになる。北海道に拠点を置き、活動している当研究会は「食料自給率1%の東京が200%の北海道より豊かな暮らしをしている根拠は何か。そこに正当性はあるのか」を全国民に問いたいと考える。
JR北海道に続き、JR四国も路線別の収支を公表する構えを見せている。北海道に続き四国でも路線維持問題が遠からず噴出するであろう。持続可能な範囲をはるかに超える会社間格差の拡大は、JR体制を崩壊に導く爆弾になりつつある。
石破茂・元地方創生担当相が「JR北海道は誰が経営しても無理」と発言、麻生太郎副総理兼財務相までが「根本に手を付けずにこの問題を解決するのは無理」と国会で答弁するなど、自民党内の一部にも危機感を持つ人が出てきている。2000年にハットフィールド脱線事故を起こした英国は線路保有部門を再国有化、民営でスタートした米国の鉄道アムトラックも国有化されるなど、鉄道の「民営から公共的企業形態へ」は国際的潮流だ。この事実から目を背け、国民本位の公共交通再建に向けたJR改革を未だ拒み続ける最大の抵抗勢力は国交省である。
国民の公共交通であった国鉄を解体し、新自由主義を社会の隅々にまで浸透させ、絶望と対立と分断の淵に全国民を追いやる端緒となった国鉄「改革」。労働者、乗客・利用者、地方にすべての犠牲を押しつけ、利益はJR株主・経営者と財界が総取りしてきた「犠牲のシステム」――これこそ30年の歴史を通じて見えてきたJRの真実だ。
この巨大な犠牲のシステムと闘い、勝利するためには、これを単に地方や社会的弱者のための交通権の維持という課題にとどめることなく、みずからの生存権を確保する闘いにバージョンアップする必要がある。公共交通維持の社会的使命を失ったJRと、それをもたらした新自由主義の時代に終止符を打ち、全国の鉄道網が持続可能な新たな枠組みに向けた端緒を切り開くことは、今や日本の全市民に課せられた義務である。
当研究会は国鉄分割民営化の検証と責任追及、JR再国有化を通じた国民本位の公共交通、国民の足の再建を、政治・行政に対して強く求める。全国全市民が叡智を結集してこの問題を議論し、国民運動を起こすよう改めて呼びかける。この目的を達するため、当研究会は、みずからの生存権をかけて、今後もあらゆる取り組みを続ける。
2017年4月1日
安全問題研究会