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第89回選抜高校野球大会を振り返って(大会講評)

2017-04-01 21:09:00 | 芸能・スポーツ
第89回選抜高校野球は、史上初の大阪勢同士の対戦となった結果、大阪桐蔭が8-3で履正社を破り優勝を果たした。大阪桐蔭は、昨秋の近畿大会では履正社に敗れており、リベンジを果たしたことになる。同じ都府県同士の決勝対決は1972年の日大桜丘-日大三(ともに東京)戦以来45年ぶり、史上5度目。

では、例年通り大会を振り返っておこう。

今年の大会は、開会式直後の1回戦第1試合(呉-至学館)がいきなり延長戦となったのを初めとして、2回戦までに6試合が延長になるなど、延長戦の多い大会だった。特筆すべきなのは、なんと言っても大会7日目の3試合のうち、第2試合の福岡大大濠(福岡)-滋賀学園(滋賀)、第3試合の福井工大福井(福井)-健大高崎(群馬)の2試合がいずれも延長15回で決着がつかず再試合にもつれ込んだことだ。「2試合連続の延長15回引き分け再試合」「1大会で2試合の延長15回引き分け再試合」は長い高校野球の歴史でも、春夏の大会通じて史上初という珍しい記録が生まれた。

大会2日目の報徳学園(兵庫)-多治見(岐阜)戦で21-0のような極端なワンサイドゲームもあったものの、これは例外といってよく、接戦が多かったのが今大会の特徴といえる。各校とも守備が堅く、エラーはしても得点に結びつくような決定的なものは少なかった印象だ。全体的に要所要所を好守で締めるチームが目立ったことも接戦の試合を増やした要因といえよう。

ただ、延長戦となった6試合も、データを詳細に検討すると違う側面が見えてくる。全体的に、2桁安打を放ちながら得点が安打数の半分以下というチームが多かった。チャンスにあと1本が出ず、本塁が遠いチームが多かったことも接戦、延長戦を増やした理由として指摘しておく必要がある。高校野球は「春は投手力・守備力、夏は総合力」と言われることが多いが、全般的に「守高打低」で、打撃より守備のチームが目立ったことはこの定石通りといってよいだろう。

同一都道府県から複数の高校が出場する「アベック出場」が多かったのも今年の大会の特徴だ。大阪2校に加え、盛岡大付、不来方(21世紀枠)はいずれも岩手。群馬からは前橋育英、健大高崎。東京から早稲田実、日大三。報徳学園、神戸国際大付(いずれも兵庫)、智弁学園、高田商(いずれも奈良)に明徳義塾、中村(21世紀枠)はいずれも高知。九州からも、福岡大大濠、東海大福岡の福岡勢に秀岳館、熊本工の熊本勢。出場全32校のうち、18校と実に半数以上がアベック出場だ。こんなにアベック出場が多かった大会は記憶にない。これが単なる偶然なのかどうかは今後の推移を見守る必要があるが、「強い都道府県はより強く、弱い都道府県はより弱く」の格差拡大の結果がアベック出場の続出だとしたら、手放しで喜ぶことはできない。

ここ10年ほど、高校野球では関東・東北勢が際立って強く、関西、九州勢が弱い「東高西低」が続いてきたが、今回の大会は、この流れを覆すように西日本勢が久しぶりの強さを発揮した。特に、近畿勢の強さは当ブログ管理人が球児だった往年を偲ばせるものがあった。8強に残ったのは、決勝で対決した大阪勢のほか、報徳学園の近畿勢3校。福岡大大濠、東海大福岡、秀岳館の九州勢3校。東日本勢は健大高崎と盛岡大付の2校にとどまった。4強は、大阪2校に報徳、秀岳館。東日本勢は1校も残れなかった。

ただ、顔ぶれを見ると、大阪桐蔭、履正社、報徳の「常連」校が強さを見せたに過ぎず、これをもって近畿勢全体の底上げといえるかどうかは、これまた推移を見守る必要があろう。東日本大震災以降の東北勢の強さは一時、目を見張るものがあったが、震災から6年目を迎え、そろそろ震災の「魔法」も切れてきたのだろうか。

印象に残った学校としては、21世紀枠での出場を果たした不来方を挙げたい。春の選抜大会は、1年生が不在で、新2、3年生のみのチーム構成となるため、ベンチ入り選手が少ない学校が出場権を得ることがしばしばあるが、当ブログが調べたところ、ベンチ入りの選手が10人での出場は、1987年の大成(和歌山)があるくらいでほとんど例がない。11人での出場であれば、高校野球史上に残る名将・蔦文也監督に率いられ、「さわやかイレブン」の愛称で甲子園に旋風を巻き起こした池田(徳島)の例がある。こうしたベンチ入り選手数の少ない学校がしばしば旋風を巻き起こすのも、夏の大会にはない春の選抜独特の醍醐味といえる。不来方は惜しくも初戦敗退したが、1年生を加えた新布陣で、また夏に戻ってきてほしい。

春はセンバツからと言われる。当ブログ管理人の住む北海道では、3月中旬になっても時折、大雪の降ることが珍しくないが、選抜が終わる4月初旬には大雪が降ることもなくなり、皮膚を突き刺すような痛く冷たい風からようやく解放される。草花の芽吹く春、敗退した球児たちも、頂点を極めた球児たちも、草花とともに成長し、夏を目指して大輪の花を咲かせてほしい。

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