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安全問題研究会(旧・人生チャレンジ20000km)~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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映画監督・土本典昭さん「お別れの会」

2008-07-26 23:20:55 | 鉄道・公共交通/安全問題
鉄道ファンの間で傑作として今も評価が高い映画「ある機関助士」(1963年)。この作品を制作した土本典昭監督が、去る6月24日に亡くなった。その土本監督の「お別れの会」が東京・如水会館で開かれたので参加してきた。

私は故人とは一面識もなく、作品を通じてしかその人となりを知らないが、優れた鉄道安全PR映画を制作した映画監督が、ひとりの鉄道ファンからも追悼されることなく旅立つという事態は避けなければならなかった。こう言っては「おこがましい」とお叱りを受けるかもしれないが、いわば「全国の鉄道ファンを代表しての参加」だという気持ちだった。

お別れの会は午後6時から始まり、実行委の予想を大きく超える400人以上が集まった。冒頭、生前に監督が遺言代わりに知人に託していた詩「もしもぼくが死んだら」が朗読された。

「もしも僕が死んだら/骨牌は海に流してほしい/きれいな水俣の海がいい/もしも僕が死んだら/戒名なんて付けなくていい おやじが付けてくれた偉そうな俗名のままでいい」…。
水俣病問題を生涯のライフワークとし、患者たちと心と心でぶつかり合った土本監督らしい「遺言」だった。家族による生前の土本監督を映したスライド上映の頃には、多数の立見客を出すほどになっていた。

続いて、早稲田大学時代の友人、映画を通じた仲間、水俣から上京参加した患者代表から挨拶があった。親族からは、実姉と妻の基子さんが挨拶した。基子さん制作の、土本監督を撮影した動画「記憶の形見」が上映された。基子さんは、土本監督の助手として長年、二人三脚で映画制作に携わってきた。

「ある機関助士」は、三河島事故を起こした国鉄が安全性の向上をPRするため、当時、新進気鋭の映画監督だったデビュー前の土本さんに制作を依頼してできたものである。土本監督は晩年、インタビューで「ある機関助士」撮影当時の苦労を語っている。この映画が特別列車を仕立てて撮影されたことを、このインタビューを読むまで全く知らなかった。

土本監督の作品には、すべてひとつの共通点があった。作品の基軸に「人間」を据えていることだ。水俣病であれアフガニスタンであれ「ある機関助士」であれ、それはいつも変わらなかった。有名人などひとりも登場せず、いつも庶民が中心になっている。「ある機関助士」もこの例外ではなかった。英雄などひとりも登場しないのに、鑑賞後はまるでヒーローものの映画を見た後のように爽やかさが残る作品に仕上がっているのだ。

今、日本映画界でこのような映画を制作できる人はいない。なにより鉄道自身が黄金時代といわれたあの頃の輝きを失って久しいからだ。
ピカピカに磨かれた新型車両が毎月のようにどこかで登場している現在、鉄道はあのときとは違った輝きを持っているといわれれば確かにそうかもしれない。だが、私の目には、当時の輝きと今の輝きは「異質」なもののように映るのだ。

鉄道人が職務にかける情熱や鉄道人としての矜持から来る美しさ。鉄道が持つ統合的なシステムとしての美しさ。そして、それらすべてを取り巻いていた希有の企業体…日本国有鉄道がもたらした美しさ、と言ったら美化しすぎだろうか。

その意味で「ある機関助士」を制作した土本監督には、時代に恵まれた側面があったことも事実である。だが、それだけでいい映画は作れるものではない。すぐれたシステムであった当時の鉄道と国鉄を珠玉の存在へと高からしめたのは、間違いなく監督自身の持つ感性と技術だった。

「お別れ会」の会場には記帳所が設けられていた。私はそこにこう書いた。
『監督とは直接のお付き合いはありませんでしたが、「ある機関助士」を見て感銘を受けた鉄道ファンです。JR福知山線事故などの大事故が続いている今、45年前に制作されたこの作品はますますその輝きを増しています』。

土本さんが安全を願った「国鉄」は既にない。
だが鉄道は日々走る。JR福知山線事故や羽越本線事故などで多数の乗客が亡くなり、また事故の後遺症に苦しむ多くの人がいる。その人たちがいる限り、土本さんが後世に託した「安全・安心の鉄道づくり」という課題に、終わりはない。

【土本監督作品・追悼上映会のご案内】
土本典昭監督作品の追悼上映会が、急遽、9月に東京で開催されることになった。日程・内容は以下のとおりである。「ある機関助士」も上映されるので、まだ見たことがない、見てみたいという鉄道ファンの方にも良い機会である。

日時:2008年9月6日(土)~9月19日(金)

場所:ポレポレ東中野(電話:03-3371-0088)

公開される主な作品(計19作品が公開予定)
「水俣~患者さんとその世界」
「パルチザン前史」
「不知火海」
「水俣一揆~一生を問う人びと」
「ある機関助士」
「ドキュメント路上」
「わが街わが青春」
「偲ぶ・中野重治」
「原発切抜帖」

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