goo blog サービス終了のお知らせ 

安全問題研究会(旧・人生チャレンジ20000km)~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

公共交通と原発を中心に社会を幅広く考える。連帯を求めて孤立を恐れず、理想に近づくため毎日をより良く生きる。

当ブログのご案内

当サイトは列車の旅と温泉をメインに鉄道・旅行を楽しみ、また社会を考えるサイトです。

「あなたがすることのほとんどは無意味でも、あなたはそれをしなくてはなりません。それは世界を変えるためではなく、あなたが世界によって変えられないようにするためです」(マハトマ・ガンジーの言葉)を活動上の支えにしています。

<利用上のご注意>

当ブログの基本的な運営方針

●当ブログまたは当ブログ付属サイトのコンテンツの利用については、こちらをご覧ください。

●その他、当サイトにおける個人情報保護方針をご覧ください。

●当ブログ管理人に原稿執筆依頼をする場合は、toukaihoutei*hotmail.com(*を@に変えて送信してください)までお願いします。

●当ブログに記載している公共交通機関や観光・宿泊施設等のメニュー・料金等は、当ブログ管理人が利用した時点でのものです。ご利用の際は必ず運営事業者のサイト等でご確認ください。当ブログ記載の情報が元で損害を被った場合でも、当ブログはその責を負いかねます。

●当ブログは、ネトウヨから「反日有害左翼ブログ」認定を受けています。ご利用には十分ご注意ください。

●管理人の著作(いずれも共著)
次世代へつなぐ地域の鉄道——国交省検討会提言を批判する(緑風出版)
地域における鉄道の復権─持続可能な社会への展望(緑風出版)
原発を止める55の方法(宝島社)

●管理人の寄稿
規制緩和が生んだJR事故(国鉄闘争共闘会議パンフレット「国鉄分割民営化20年の検証」掲載)
ローカル鉄道に国・自治体・住民はどう向き合うべきか(月刊『住民と自治』 2022年8月号掲載)
核のない未来を願って 松井英介遺稿・追悼集(緑風出版)

●安全問題研究会が、JRグループ再国有化をめざし日本鉄道公団法案を決定!

●安全問題研究会政策ビラ・パンフレット
こんなにおかしい!ニッポンの鉄道政策
私たちは根室線をなくしてはならないと考えます
国は今こそ貨物列車迂回対策を!

【質問主意書提出活動報告】バス事業の安全問題及び地方路線問題に関する質問主意書

2018-03-17 22:08:48 | 鉄道・公共交通/交通政策
安全問題研究会では、2014年以来4年ぶりに、国会議員による質問主意書提出活動を行った。提出は、前回と同じ山本太郎議員から。3つ目は「バス事業の安全問題及び地方路線問題に関する質問主意書」を政府からの答弁書と併せてご紹介する。

昨日及び一昨日にご紹介した鉄道関係の2件の質問主意書は、国交省の中でも鉄道局が担当であるのに対し、バスに関しては自動車局が担当している。両者を読み比べてみると、「お尋ねの○○の意味するところが必ずしも明らかではないが、~」「お尋ねの趣旨が明らかではない」「いずれにせよ、~~との御指摘は当たらない」等の慇懃無礼な言い回しや表現が、鉄道局関係の答弁書では多用されているのに対し、この記事で取り上げた自動車局関係の答弁書では一切使われていない。

また、この記事で取り上げた自動車局関係の答弁書では、各地方運輸局ごとに監査官の人数やバス・トラック・タクシー事業者の数を問う質問、国交省や独立行政法人からバス事業「適正化機関」への天下りの有無を問う質問にも、きちんと問い合わせの上人数を回答している。

国鉄分割民営化のどこで「効率的で責任のある経営ができる体制が整えられた」のかについて、具体的な根拠も示さないまま「全体としてサービスの信頼性や快適性が格段に向上した」と強弁している鉄道局の答弁書に比べて、はるかに誠意ある回答といえるだろう。

現代日本において、自動車は陸上交通の中心であるのに対し、鉄道は傍流。これを反映するように、国交省の中でも優秀な人材は自動車局に集まっており、鉄道局の人材は払底していてやる気もまったく感じられない。質問主意書を提出する活動を長く続けていると、各省庁や同じ省庁内でも部局ごとの状況が見えてくる。こうしたことがわかるのも、この活動のおもしろさだと思う。

安全問題研究会としては、バスに関してはある程度誠意ある回答が示されたと考えており、質問主意書提出行動はここでいったん打ち止めにしたいと考えている。一方、鉄道関係は誠意をまったく感じないことから、追加質問を行う予定だ。

----------------------------------------------------------------------------------------------
バス事業の安全問題及び地方路線問題に関する質問主意書

 平成二十八年十二月に道路運送法の一部を改正する法律(平成二十八年法律第一〇〇号。以下「道路運送法改正法」という。)が施行されバス事業の安全対策における大きな一歩を踏み出したが、まだ十分とは言えない。また路線バス事業への参入に係る規制緩和により地方のバス路線(以下「地方路線」という。)の維持も大きな問題となっている。こうしたことを踏まえ、以下質問する。

一 観光バス運転手などで構成する全国自動車交通労働組合総連合会(以下「自交総連」という。)関係者の証言によれば、全国でバス・タクシー・トラック事業者(約十二万社)を監査する国土交通省の監査官の平成二十七年度の定員は全国で三百七十一人しかいないとされる。単純計算で、監査官一人が担当すべきバス・タクシー・トラック事業者数は約三百二十社であるが、平成二十七年度当時から二年以上が経過した現在、国土交通省の監査官の人数及び監査対象となっているバス・タクシー・トラック事業者の数を地方運輸局ごとに示されたい。

二 政府は、現状における国土交通省の監査官の人数でバス・タクシー・トラック事業者に対する実効ある監査ができると考えているのか。

三 道路運送法改正法によって、民間の一般貸切旅客自動車運送適正化機関が一般貸切旅客自動車運送適正化事業を行うこととされたが、本制度で実効ある貸切バス事業の適正化が可能と考えているのか。国土交通省の監査官の増員ではなく、本制度により貸切バス事業の適正化を図ることとした理由を明らかにされたい。

四 一般貸切旅客自動車運送適正化機関の数を地方運輸局ごとに示されたい。また、同機関に役職員として再就職した国家公務員(独立行政法人の役職員を含む。)がいる場合には、その数も地方運輸局ごとに併せて示されたい。

五 平成二十四年十月に国土交通省に設置された「バス事業のあり方検討会」において、運転手の立場を代表する労働組合関係者で同検討会の委員に選ばれたのは、全国交通運輸労働組合総連合軌道・バス部会事務局長、日本私鉄労働組合総連合会交通政策局長及び日本鉄道労働組合連合会自動車連絡会顧問の三名であった。国土交通省の監査官の少なさを指摘した自交総連等の労働組合の代表は含まれていないが、国土交通省は同検討会における労働組合関係者の委員をどのような基準で選んだのか。

六 道路運送法は、一般乗合旅客自動車運送事業の許可基準について、同法第六条において、当該事業の計画が輸送の安全を確保するため適切なものであること、当該事業の遂行上適切な計画を有するものであること、当該事業を自ら適確に遂行するに足る能力を有するものであることと規定しているのみである。

 同条において地方路線も含めた公共交通全体の持続的な維持が許可基準として考慮されていないことは、当該事業への参入に係る規制緩和の最も典型的な弊害である。当該事業への新規参入を希望する者がいる場合、地方路線も含めた公共交通全体を持続的に維持できることを許可基準とするよう、同法の改正が必要と考えるが、政府の考えを明らかにされたい。

  右質問する。
----------------------------------------------------------------------------------------------
参議院議員山本太郎君提出バス事業の安全問題及び地方路線問題に関する質問に対する答弁書

一について

 旅客自動車運送事業者及び貨物自動車運送事業者に対する監査を実施する国土交通省地方運輸局の職員の数(本年二月末日時点)並びに旅客自動車運送事業者の数及び貨物自動車運送事業者の数の合計数(平成二十八年三月末日時点)を地方運輸局別にお示しすると、次のとおりである。

 北海道運輸局 三十八名 一万二千九百二
 東北運輸局 四十二名 一万六千九百八十七
 関東運輸局 百六名 十万六千三十九
 北陸信越運輸局 三十名 一万二千三百七十三
 中部運輸局 四十四名 二万四千八百五十七
 近畿運輸局 五十八名 四万六千百六十三
 中国運輸局 三十四名 一万七千百三十三
 四国運輸局 二十四名 八千八百九十八
 九州運輸局 四十四名 二万七千七百九十五

二及び三について

 御指摘の道路運送法の一部を改正する法律(平成二十八年法律第百号)においては、旅客自動車運送事業者への巡回指導等の適正化事業を行うことにより国の監査機能を補完する役割を担う民間団体である適正化機関(道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)第四十三条の二第一項に規定する適正化機関をいう。以下同じ。)として指定された者が貸切バス事業について存在していなかったことから、貸切バス事業についての適正化事業の実施が図られることとなるよう、貸切バス事業に係る適正化機関である一般貸切旅客自動車運送適正化機関が貸切バス事業者から負担金を徴収し、適正化事業の実施に必要な経費に充てることができることとする等の措置を講じたものである。

 その結果、昨年六月までに、全ての地方運輸局の管轄区域内において一般貸切旅客自動車運送適正化機関が指定されており、これにより、一般貸切旅客自動車運送適正化機関が貸切バス事業者への巡回指導を行い、その法令の遵守状況を確認し、悪質な法令違反が認められた貸切バス事業者について国に報告する体制が整備されたところであり、実効ある貸切バス事業の適正化が図られるものと考えている。

 国土交通省の職員による旅客自動車運送事業者及び貨物自動車運送事業者に対する監査については、監査を実施する職員を平成二十九年度に五十四人増員したほか、一般貸切旅客自動車運送適正化機関、タクシー事業に係る適正化機関並びにトラック事業に係る地方貨物自動車運送適正化事業実施機関及び全国貨物自動車運送適正化事業実施機関と連携し、悪質な事業者に対し、重点的な監査を実施しているところであり、引き続き監査の実効性の確保に努めてまいりたい。

四について

 お尋ねの一般貸切旅客自動車運送適正化機関の数は、各地方運輸局の管轄区域内にそれぞれ一である。

 また、お尋ねに関し、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第百六条の二十四第二項の規定により再就職先の届出を行った国家公務員の退職者については、一般貸切旅客自動車運送適正化機関に役員として再就職した者はおらず、職員として再就職した者は、北陸信越運輸局を退職し、適正化事業巡回指導員として一般社団法人北陸信越貸切バス適正化センターに再就職した者の一名である。独立行政法人の退職者については、国土交通省が一般貸切旅客自動車運送適正化機関に対し確認したところによると、当該機関に役職員として再就職した者はいない。

五について

 御指摘の「バス事業のあり方検討会」における労働組合関係者の委員については、全国的な組織であって多数の運転者を構成員とするものの代表者を選定したものである。

六について

 御指摘の「地方路線も含めた公共交通全体」の維持については、我が国において人口減少や高齢化が進む中、重要な課題であると考えており、各地域における乗合バス事業の状況を把握し、検証しつつ、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律(平成十九年法律第五十九号)の枠組みを活用した地域の取組を支援することを始め、地域公共交通の維持のための政策を進めてまいりたい。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【質問主意書提出活動報告】国土及び海岸保全と鉄道復旧の関係に関する質問主意書

2018-03-16 22:02:18 | 鉄道・公共交通/交通政策
安全問題研究会では、2014年以来4年ぶりに、国会議員による質問主意書提出活動を行った。提出は、前回と同じ山本太郎議員から。2つ目は「国土及び海岸保全と鉄道復旧の関係に関する質問主意書」を政府からの答弁書と併せてご紹介する。

----------------------------------------------------------------------------------------------
国土及び海岸保全と鉄道復旧の関係に関する質問主意書

 JR北海道の日高本線は、平成二十七年一月の高波災害を受け鵡川から様似間が三年以上にわたって不通となっているが、相次ぐ高波災害の背景として海岸の長年にわたる浸食を指摘する声があることを踏まえ、以下、質問する。

一 自然災害による海岸線における土地の浸食を防ぐことは、我が国の領土の逸失を防ぐ観点から大変重要であるとともに、国防上の要請でもある。しかしながら、日高振興局管轄区域の海岸線は長年にわたる土地の浸食の結果、国道二百三十五号線や住民の居住地域にまで迫っている。海岸に沿って延びる国道二百三十五号線の沿線には陸上自衛隊静内駐屯地があるが、このまま事態を放置した場合、国道二百三十五号線も浸食されて使用不能となり、静内駐屯地への物資や兵員の輸送もできなくなることが確実である。

 政府の基本的な責務は国民の生命及び財産を守ることにある。我が国を攻撃しようとする勢力の日高沿岸からの上陸を阻止するため自衛隊の駐屯地を置きながら、一方では高波によって日高沿岸の土地が浸食され、海岸線が主要国道や住民の居住地に近づくのを放置したままにしていることは国防の観点からも問題であると考えられるが、政府の見解を明らかにされたい。

二 海岸法第二条第二項及び同法施行規則第一条の三によれば、鉄道事業法第二条第一項に規定する鉄道事業の用に供されている土地は、国又は地方公共団体が所有する公共海岸から除かれることになっている。同様に、軌道法第三条に規定する運輸事業の用に供されている土地、道路法第十八条第一項の規定により決定された道路の区域の土地、空港法第四条第一項各号に掲げる空港及び同法第五条第一項に規定する地方管理空港の用に供されている土地も公共海岸から除外されている。

 道路、空港の大部分は国又は地方公共団体が所有し管理しているから、海岸法に基づいて公共海岸から除外されていたとしても、その保全上何らの問題も生じないが、鉄道及び軌道(以下「鉄軌道」という。)はその大部分が民間鉄軌道事業者の所有地に敷設されているから、これを公共海岸でない旨規定している海岸法及び同法施行規則が現状のままである限り、原則として民間鉄軌道事業者による保全を待つしかないことになる。JR日高本線の線路が敷設されている用地もJR北海道の用地であるから同様である。鉄軌道だけこのような扱いになっていることは法令の不備であるとともに、道路や空港と比べて著しく均衡を欠くと考えられるが、政府はこれをどのように考えているのか。

 また、海岸における土地の浸食から国土を保全するのは国の役割である。鉄軌道が海岸線を走行している場合であっても、海岸法及び同法施行規則の規定にとらわれず、浸食された土地の復旧は国が責任を持つべきと考えるが、政府の考えを明らかにされたい。

  右質問する。
----------------------------------------------------------------------------------------------
参議院議員山本太郎君提出国土及び海岸保全と鉄道復旧の関係に関する質問に対する答弁書

一及び二について

 御指摘の「国防の観点」、「法令の不備」、「道路や空港と比べて著しく均衡を欠く」及び「海岸法及び同法施行規則の規定にとらわれず」の意味するところが必ずしも明らかではないが、海岸法(昭和三十一年法律第百一号)第三条の規定に基づき、都道府県知事は、海岸を防護するため海岸保全施設の設置等を行う必要があると認めるときは、一定の区域を海岸保全区域として指定することができることとされているとともに、同法第五条の規定に基づき、都道府県知事等は、海岸保全区域の管理を行うこととされているところ、御指摘の「日高振興局管轄区域」においても、これらの指定や管理が行われているものと承知しており、また、海岸保全区域以外の区域(同法第二条第二項に規定する一般公共海岸区域を除く。)については、当該区域内の土地を事業の用に供する鉄道事業者等の民間企業等において、その事業を行うために、その所有する施設の管理が行われているものと承知しており、いずれにせよ、「このまま事態を放置した場合、国道二百三十五号線も浸食されて使用不能となり、静内駐屯地への物資や兵員の輸送もできなくなることが確実である」及び「高波によって日高沿岸の土地が浸食され、海岸線が主要国道や住民の居住地に近づくのを放置したままにしている」との御指摘は当たらない。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【質問主意書提出活動報告】鉄道事業法における鉄道事業の許可と列車運行義務及び被災した鉄道の復旧に関する質問主意書

2018-03-15 21:52:14 | 鉄道・公共交通/交通政策
安全問題研究会では、2014年以来4年ぶりに、国会議員による質問主意書提出活動を行った。提出は、前回と同じ山本太郎議員から。まず初めに「鉄道事業法における鉄道事業の許可と列車運行義務及び被災した鉄道の復旧に関する質問主意書」を政府からの答弁書と併せてご紹介する。

----------------------------------------------------------------------------------------------
鉄道事業法における鉄道事業の許可と列車運行義務及び被災した鉄道の復旧に関する質問主意書

 JR北海道の日高本線は、平成二十七年一月の高波災害を受け鵡川から様似間が三年以上も不通となっているが、このうち鵡川から日高門別間はまったく被災しておらず、直ちに運行を再開できる状況にある。また、沿線の住民団体も再三にわたって運行再開を求めている。それにもかかわらず、JR北海道が多額の復旧費がかかることを理由として運行再開を拒んでいるのはきわめて不当である。また、根室本線も東鹿越から新得間が台風災害で被災し不通となった後、復旧が行われないまま、JR北海道はこの区間を含む富良野から新得間についてバス転換を含めた地元との協議を行いたい旨を表明している。こうしたJR北海道の姿勢は鉄道事業者、公共交通事業者としての責任放棄と言える。よって以下質問する。

一 鉄道事業法に基づく鉄道事業の許可は、鉄道事業を経営しようとする者の申請に基づき国土交通大臣が行うこととしている。JR各社においては、日本国有鉄道改革法の施行の際、国鉄が現に運営していた事業を引き継ぎ、当時でいう第一種鉄道事業の免許を受けたものとみなされたという事情があるものの、前記許可制度と基本的な考え方は同じである。すなわち、鉄道事業の許可は列車を運行する意思と能力を持つ者からの申請に対し国が与えるものであるから、許可後は特段の事情がない限り、当然に列車の運行義務を負っていると解するのが相当であり、国鉄の事業を引き継いだJR各社も同様に列車の運行義務を負っていると考えられる。

 このような考え方に立つならば、路線が実際に運行可能な状態にあり、かつ同法に基づく休廃止の届出も行われないまま運行がなされていない日高本線の現状は、同法の立法趣旨に反しているものと言わざるを得ない。

 JR北海道に対しては、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律に基づく勧告を出してでも日高本線(当面は鵡川から日高門別間)の運行を再開させるべきであると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

二 前記一の許可を受けた事業者が、当該許可を受けた路線において列車の運行を行わないことができる正当な理由に「赤字路線であること」は含まれないと考えられるが、政府の見解を明らかにされたい。

三 札幌から釧路方面へ向かう貨物の輸送は、昭和五十六年に石勝線が開通するまで、現在不通となっている区間を含む根室本線を使用して行われていた。根室本線の富良野から新得間では、現在、貨物輸送は行われていないが、釧路方面への貨物輸送を行っている石勝線が災害等で不通となった場合、同区間経由で貨物輸送を行わなければならない事態も十分考えられる。東日本大震災時に貨物輸送ルートの確保が問題となったことに鑑みると、過去に貨物輸送の実績を持つ同区間を廃止することは、災害時に食料、燃料等の生活物資の輸送ルートを確保することを通じて国民生活を守る観点から好ましくないと考えられる。この点について、政府の見解を明らかにされたい。

 また、JR北海道が旅客輸送密度だけを尺度として、災害時における重要な貨物輸送ルートまでバス転換を含めた地元との協議を進めようとしていることは、線路を保有する旅客会社が貨物輸送の重要性に配慮した経営を行うことができていないことを意味している。これは、旅客と貨物とを別会社に分離した国鉄分割民営化の弊害であると考えられる。平成二十九年二月八日の衆議院予算委員会において、麻生副総理兼財務大臣がJR北海道の経営について、根本的なところでの対処が必要である旨答弁するなど、JRグループの現状の見直しを必要とする考えは安倍内閣の一部閣僚からも示されている。政府として、国鉄分割民営化から三十年が経過したJRグループの組織再編を検討する考えはないのか。

四 国鉄改革関連法案が審議されていた参議院日本国有鉄道改革に関する特別委員会において、昭和六十一年十一月二十八日、「各旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社の輸送の安全の確保及び災害の防止のための施設の整備・維持、水害・雪害等による災害復旧に必要な資金の確保について特別の配慮を行うこと」を含む日本国有鉄道改革法案外七案に対する附帯決議が可決されるとともに、当時の橋本龍太郎運輸大臣、葉梨信行自治大臣が「附帯決議の趣旨を尊重する」旨を表明している。国民の公共交通機関としての国鉄を引き継いだJR各社の路線の災害復旧に国が責任を持つことは国権の最高機関たる国会からの要請であり、鉄道路線の災害復旧のための予算を大幅に増やす必要があると考える。

 私は「JR北海道の安全問題、ローカル線問題及びリニア中央新幹線に関する質問主意書」(第百八十七回国会質問第七四号)において、鉄道路線の災害復旧に対する国庫補助に関して、鉄道軌道整備法を改正する必要性の観点から質問しているが、前記附帯決議を踏まえ、改めて鉄道路線の災害復旧のための予算を拡充する必要性に関する政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。
----------------------------------------------------------------------------------------------
参議院議員山本太郎君提出鉄道事業法における鉄道事業の許可と列車運行義務及び被災した鉄道の復旧に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律に基づく勧告」の意味するところが必ずしも明らかではないが、北海道旅客鉄道株式会社日高線鵡川・様似間については、平成二十九年二月に、北海道旅客鉄道株式会社より沿線自治体に対して、復旧の断念とバス等への転換が提案されたことを受けて、これまで、沿線自治体において、バス等への転換の可能性も含めた検討が進められてきているものと承知している。引き続き、地域における検討及び協議を進めていく必要があるものと考えている。

二について

 お尋ねの趣旨が明らかではないため、お答えすることは困難である。

三について

 北海道旅客鉄道株式会社根室線富良野・新得間の在り方については、将来にわたって持続可能な交通体系を構築するため、地域における検討及び協議を進めていく必要があるものと考えている。なお、災害時における生活物資の輸送ルートの確保については、鉄道による輸送だけでなく、自動車や船舶による輸送を含め、総合的に検討すべきものと考えている。

 また、御指摘の「国鉄分割民営化の弊害」の意味するところが必ずしも明らかではないが、北海道旅客鉄道株式会社、東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社、西日本旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社、九州旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社においては、日本国有鉄道の分割民営化によって、効率的で責任のある経営ができる体制が整えられた結果、全体としてサービスの信頼性や快適性が格段に向上したものと認識している。

 御指摘の「JRグループの組織再編」については、東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社、西日本旅客鉄道株式会社及び九州旅客鉄道株式会社は完全民営化された企業であり、その経営判断の問題に関わることから、政府として見解を示すことは差し控えたい。

四について

 政府としては、鉄道の災害復旧に対する国庫補助のため必要な予算の確保に引き続き努めてまいりたい。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

リニア新幹線建設めぐる談合疑惑で強制捜査 「世紀の愚策」リニア建設を今すぐ中止せよ

2018-01-28 23:47:16 | 鉄道・公共交通/交通政策
(この記事は、当ブログ管理人が月刊誌「地域と労働運動」2018年2月号に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 2014年10月に事業認可され、長大トンネルや駅の非常口など難航が予想される部分から工事が始まったリニア中央新幹線。昨年12月、工事を受注した大林組、鹿島、清水建設、大成建設の大手ゼネコン4社が東京地検特捜部・公正取引委員会の強制捜査を受けた。4大ゼネコン(総合建設業社)の間で工事契約の「受注調整」(談合)をしていた疑いである。だが事業認可以前からリニアの問題点を追ってきた安全問題研究会にとって、談合は起こるべくして起きたものであり驚きはない。なぜならリニア新幹線事業は初めから安倍首相と「お友達」らによる利権事業として始まったからである。

 ●WTO「政府調達協定」からの突然のJR離脱

 大手ゼネコン4社すべてに均等に仕事を割り振ることは事業認可当初からの既定路線であり、むしろこの談合はそれに沿って政府が周到にお膳立てした官製談合なのではないだろうか。もちろん現時点で確証があるわけではない。だが単なる憶測では片付けられない官製談合の「状況証拠」ともいうべき情報を筆者は得ている。今日は、その驚愕すべき情報を皆さんにお伝えしておきたい。

 1995年、それまでのGATT(関税と貿易に関する一般協定)に代わる国際間貿易ルールとして、各国間合意によってWTO協定(世界貿易機関を設立するマラケシュ協定)が発効した。そのWTO協定に基づいて締結された関連協定のひとつに「政府調達に関する協定」がある。加盟国の中央政府や地方政府、政府関係機関などが基準額以上の高額の契約を締結する場合、外国企業の参加も可能となるような形で国際競争入札により業者選定しなければならないことを定めたものだ。協定の内容を詳述する余裕はないが、基準額は物品調達・役務調達・工事など契約の種類ごとに決められており、工事の場合、それは日本円で20億円である。協定の適用対象となる「政府関係機関」も、加盟国間で紛争にならないよう、協定の附属書に名称を列挙する形で具体的に取り決められている。言うまでもないが、JR各社は旧国鉄を引き継いだ企業であり、民営化後もしばらくは国が全額を出資する国鉄清算事業団(その後の日本鉄道建設公団~現在の独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構)が全株式を保有していたことから、政府関係機関として協定の適用対象になっていた。

 このうち、JR東日本、東海、西日本の本州3社に関しては、2001年までに鉄建公団が保有していた全株式を放出し、完全民営化された。政府関係機関でなくなった本州3社は、本来であればこの時点で政府調達協定の適用から除外されるはずだった。だが、国内(域内)企業の日本の鉄道工事への参入を狙っていた米国、カナダ、EU(欧州連合)がWTOに対して異議を申し立てたため、JR本州3社は完全民営化後も政府調達協定からの離脱ができない事態に陥った。米国とカナダは2006年に異議を撤回するものの、EUはその後も撤回しなかった。異議申立の撤回に向けた日本政府からEUへの再三にわたる働きかけも実らず、JR本州3社の政府調達協定からの離脱交渉は暗礁に乗り上げたかに見えた。
ところが事態は急転する。2014年10月28日になって、EUが異議申立の撤回に同意したのだ。完全民営化から13年も経過して、ようやく「純粋な民間企業」と認められたJR本州3社は政府調達協定の適用から除外。20億円以上の大規模工事を発注する場合であっても、外国企業の参加も可能となるような形での国際競争入札により業者選定を行う必要がなくなったのである。総額9兆円ものビッグプロジェクトを推進する政府・JR東海にとって最大の障害が取り除かれたのだ。

 日本政府はこれを「EUに対する長年の外交上の働きかけが結実した結果」(2014年10月28日付け外務大臣談話)と自賛した。だが、ここでもう一度皆さんには思い出してほしい。リニア中央新幹線計画が事業認可されたのは2014年10月17日。EUによる異議撤回の、わずか11日前の出来事だ。

 あまりにも出来すぎたタイミングといえる。これを偶然の一致と思えるほど筆者はお人好しではない。どこをどう見ても、外国企業を排除し日本企業だけで「談合」できるよう、日本政府が政府調達協定からのJR東海の離脱を待ってリニア中央新幹線の事業認可をしたと勘ぐられても仕方のないタイミングだ。談合へのレールは最初から敷かれていたのではないか。

 李下に冠を正さずということわざもある。もしそうではないと言うのであれば、なぜわざわざ痛くもない腹を探られるような時期を選んで事業認可に踏み切ったのか。政府にはそのことに対する説明責任がある。

 ●アベ友右翼が君臨

 自分の存命中にリニアの完成を――そう執念を燃やす葛西敬之JR東海代表取締役名誉会長は国鉄分割民営化によってJR東海の取締役となった。国鉄時代は職員局長として分割民営化に反対していた国労組合員らの首切りに直接関与。2008年6月、被解雇者が起こした裁判では「規律違反を犯した国労組合員の採用率は低くて当然」だと言い放った。警察を監督する国家公安委員在任中には、差別集団・在特会を「新しい市民運動」などと持ち上げた。経済界内部の「アベ友財界人」による安倍氏支援組織「四季の会」の立ち上げにも関わった。一貫して安倍首相を支え「首相の後見人」を自認。自他共に認める「アベ友」右翼だ。国鉄「改革」を推進し、改革派三羽ガラスと呼ばれた松田昌士JR東日本元社長、井手正敬JR西日本元社長が引退する中、今もJR東海に君臨し恐怖支配を続ける。創業者社長が長期間君臨しワンマン体制を敷く田舎の中小企業のようだ。このような前近代的経営体制の企業が東海道新幹線という交通の大動脈を握っていること、リニア新幹線工事を通じて日本の国土まで改変しようとしていることには恐怖心を覚える。

 リニア新幹線は当初、建設費を全額JR東海が負担する民間事業とされた。だが1988年、葛西常務(当時)はすでに「建設費の3分の1は国費が必要。ナショナルプロジェクトとして実施しなければならない」と述べている。

 安倍首相と葛西名誉会長が初めからリニアを国策にするつもりだったことは、2014年の事業認可が全国新幹線鉄道整備法に基づいて行われたことからも明らかだ。この法律は、国が建設主体となる「整備新幹線」建設のために制定されたからである。

 政府はその後、リニアの大阪延伸を前倒しする目的で、財政投融資(財投、注)資金の投入を目指す。だが、JR東海は財投の引き受け機関でないため法整備が必要だった。2016年11月、鉄道・運輸機構を財投機関にできるよう鉄道・運輸機構法が改定される。財投機関となった鉄道・運輸機構が資金を国から受け入れ、JR東海に又貸しする手法が採られた。投入された財投資金は3兆円で、JR東海が見積もった建設費9兆円の3分の1。葛西名誉会長の狙い通りになった。森友・加計学園問題と同じ国政私物化でも金額はケタ外れだ。

 ネット上では、「リニアは大手ゼネコンの高い技術力が必要だから高額でも仕方ない」「財投は融資でいずれ返済されるから問題ない」と、安倍首相を擁護するコメントがあふれる。だが高い技術力が必要なら何をしてもいいわけではないし、リニアは当時の山田佳臣JR東海社長(現会長)自身「絶対にペイしない」と認めたいわく付きの事業なのだ。事業失敗で財投が返済できなくなれば、税金か運賃値上げでツケは市民に回される。

 注)かつての財投は郵便貯金などを原資として借り入れた資金を大蔵省資金運用部が公共事業などで運用、利益が上がり始めれば郵貯などに返済していく制度だった。郵政民営化で郵貯が国の資金でなくなって以降は国債の一種である「財投債」発行で国が資金調達する制度に改められたが、原資が借金であり返済する必要がある点は変わりがない。このため、制度運用上「採算性が見込めるものに限定」して融資することになっているが、今回のリニア事業に当たって、国が採算性を精査した形跡は見られない。

 ●世紀の愚策、事故も

 反対運動の市民らが懸念していた事故も起き始めた。12月15日、長野県中川村の県道59号線で道路脇の斜面が崩れた。迂回路は県道22号線の1本のみ。リニア走行ルートに当たる大鹿村の村民は、村内外を結ぶ重要道路が寸断され不便な遠回りを強いられている。原因はトンネル工事に伴う発破作業だ。この程度のこともまともにできないゼネコンのどこに談合を正当化できるほどの「高い技術力」があるのか。

 「リニアは少し軌道がずれただけでも走行できなくなる。完成などするわけがないし、できたとしても地震が起きれば新幹線より先にリニアが止まる可能性もある」。公共事業の融資審査の経験もある政府系金融機関OBはこう証言する。

 東日本大震災当時、太平洋側の路線がすべて寸断される中で、根岸製油所(横浜市)から東北への燃料輸送の大役を担ったのは新潟など日本海側の在来線だった。災害時に鉄道が輸送ルートとして機能するためには既存の路線とつながっていることが重要だ。災害に弱いばかりか既存のどの路線ともつながらず、貨物輸送もできないリニアが非常時の輸送ルートとして機能することは絶対にない。「東海道新幹線が災害で寸断された際の代替路線としてリニアが必要」というJR東海の説明はすでに崩れているのだ。

 東海道新幹線の代替路線が本当に必要なら、現在、金沢まで開通している北陸新幹線を関西(京都または大阪)まで延伸すればよい。金沢~大阪と聞くと遠いイメージがあるが、在来線の営業キロを当てはめれば267.6km。東海道新幹線・東京~新大阪間(552.6km)の約半分だ。1964年東京五輪に間に合わせる必要があったとはいえ、当時の技術力でこの区間をわずか5年で建設していることを考えると、当時より技術が進歩し、距離も半分しかない金沢~大阪間は2~3年あれば十分建設できるだろう。所要時間面で見ても、北陸新幹線は東京~金沢間を2時間半程度で走破している。金沢~大阪間の所要時間は1時間程度であることを考えると、東京~大阪間を北陸新幹線回りでも3時間半程度で行けることになる。おまけに新幹線なら山陽・九州新幹線(新大阪~鹿児島中央)にもそのまま乗り入れできるし、大宮駅に連絡線を設ければ、東京を経由せず東北方面とも新幹線で直通させることができる。現在、東海道本線で「スーパーレールカーゴ」(電車方式による貨物列車)がすでに営業運転していることを考えると、新幹線を利用した貨物輸送も数年の社会実験を経れば実用化できる水準にある。いざというときの代替路線としてはこのほうがはるかに有効だろう。本来、鉄道とはこのようなネットワーク、「面」として活用するものだ。

 にもかかわらず、北陸新幹線の福井延伸でさえ現段階では20年後というかなり遠い未来の計画になっている。2~3年で実現できるはずの北陸新幹線大阪延伸がなぜ今ではなく20年後なのか。理由は簡単だ。ここがリニアより先に開通した場合、「東海道新幹線が寸断された場合の代替ルートは北陸新幹線で十分だ」ということになり、リニア不要論に一気に火がつく。また、北陸新幹線がJR東日本・西日本両社の営業区域内のみを走行し、「アベ友」葛西名誉会長が君臨するJR東海の営業区域内をまったく通らないことも影響しているに違いない。

 ●こんな予算の使い方でいいのか?

 東海道新幹線は、当初1972億円と見積もられていた建設費が最終的に2倍の3800億円まで膨れあがった。しかも国鉄は当初からこれを知りながら隠蔽。国会で予算不足を追及された十河信二国鉄総裁は開業日を待たず辞任に追い込まれた。

 今回のリニア談合も、そもそもJR東海の示した予定価格が安すぎることが背景にある。リニアにとって最初の大規模工事だった品川駅建設から早くも入札不調(全業者が落札できず)になっている。建設費が9兆円で収まる保証はどこにもなく、東海道新幹線と同様、2倍と考えると最終的に20兆円ほどに膨れあがることも容易に予想できる。

 そうでなくても、当研究会の活動拠点である北海道では、JR北海道が10路線13線区を「自社単独では維持困難」と公表、上下分離や路線廃止~バス転換も含めた地元との協議が始まろうとしている。実際のところ、JR北海道が維持困難と表明している路線を守るためには年に数百億程度の国の支援があれば足りる。地方の生活のための路線が危機を迎えているのに見向きもせず、それより2桁も多い金額をリニアに投入、今でも十分便利なところをさらに便利にして地域間格差を広げた挙げ句、ゼネコンが談合でつり上げたリニアの建設費のツケを利用者が支払わされるのでは踏んだり蹴ったりだ。

 リニア建設は始まったばかりで本体工事には着手していない。違法談合、莫大な国費投入による市民への負担転嫁、環境破壊、地震への安全対策。問題だらけのリニア中央新幹線工事は今すぐ中止すべきだ。

(黒鉄好・2018年1月28日)

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【管理人よりお知らせ】北海道の鉄道維持のための全道署名及び啓発リーフレット「こんなにおかしい! ニッポンの鉄道政策」を公開しました

2018-01-27 13:30:00 | 鉄道・公共交通/交通政策
管理人より、安全問題研究会公式サイト「深刻化するJRローカル線問題を考える」コーナーに以下の資料を公開しましたのでお知らせします。いずれもPDF版のみです。

1.「こんなにおかしい! ニッポンの鉄道政策」リーフレット

 「あの道路(空港)は赤字だから廃止してしまえ」なんて言う人は誰もいないのに、どうして鉄道だけ「赤字なのに残せと求めるのは地域エゴ」なんて言われるの? 同じ公共交通機関なのにおかしくない? と思っている皆さま、お待たせしました。安全問題研究会がこのたび作成したのは、そんな皆さんのためのリーフレットです。鉄道を残さなければ地元がもっと大変なことになってしまう、でも周りの人にそのことを話しても「仕方ないよ」と言われ、わかってもらえない――そんな悩みを抱えている方は、ぜひこのリーフレットをお使いください。きっと「言われてみると、おかしい気がするよね」と仲間を増やせると思います。

2.北海道の鉄道の存続・再生を求める道民署名

 JR北海道が「維持困難」路線・線区を公表して以降、JRと地元との協議はほぼ1年間膠着状態が続いていますが、本来、JR北海道の株主は国であり、北海道の鉄路は国民共有の財産です。地元とJRとの協議だけで存廃を論じてよいものではありません。一方、北海道が国に対し、鉄道・運輸機構の剰余金(特定業務勘定)を活用したJR北海道への支援策を国に要望し、ようやく北海道の鉄路をどのようにして残すかの議論が始まろうとしています。

 「北海道の鉄道の再生と地域の発展をめざす全道連絡会」では、このたび「北海道の鉄道の存続・再生を求める道民署名」を始めることにしました。早速、署名用紙をアップロードしますので、ダウンロードの上ご活用ください。もちろん、道外の方でも署名いただいてかまいません。なお、署名用紙は道知事宛て、道議会議長宛ての2種類です。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

福岡県・赤村村長との会話

2018-01-18 21:38:47 | 鉄道・公共交通/交通政策
正月休みに、鉄道関係で色々ネット検索をしていたところ、福岡県田川郡赤村の村長選の結果が掲載されているのを偶然、見つけた(赤村長選挙――選挙ドットコム)。選挙自体は昨年7月9日に投開票され、すでに半年近く経過している。私の目に留まったのは、現職だった春本武男氏をダブルスコアに近い大差で破り、新村長となった道広幸(みち・ひろゆき)氏の名前だ。

私はこの名前に記憶があったが、思い出すのにそれほど時間はかからなかった。私と赤村との関わりは1996年9月に開催された「トロッコフェスタin赤村」以外にないからだ。国鉄再建法制定によって工事が中止され、未成線のまま日の目を見ずに終わった「幻の線路」旧国鉄油須原線の線路跡を使ったイベントだった。当時、赤村役場の総務課長として、このイベント当日「開会宣言」をしたのが、新しく村長になった道さんだったのだ。

ちなみに、この日のイベントの模様は当ブログの親サイト「汽車旅と温泉を愛する会」に掲載している(イワハシ3号よ、ありがとう!悲劇の未成線に舞い降りた奇跡~そしてついに「列車」は走った)。まさに若気の至りとも言うべき、踊った文体で、恥ずかしい限りだ。

道さんの村長当選を知った私は、イベント当日の思い出話のほか、最近の北海道ローカル線をめぐる厳しい状況や、JR九州の完全民営化後、九州でもローカル線の大幅な減便が始まっている状況から「いずれ九州でも北海道と同じ問題が起きるでしょう。その際はお互いに協力しあいましょう」との内容をしたためた手紙を1月9日付で村役場宛てに郵送していた。

驚くことに、1月17日、道村長から私の携帯に直接電話がかかってきた。「トロッコフェスタin赤村」はもう21年半も前のことになるが、道さんは今もはっきりそのことを記憶していた。赤村トロッコの会によって今もトロッコの定期運行が行われていること(冬季除く)、2017年に未成線を抱える全国5自治体が未成線跡の活用に向けた会議を奈良県で開催し、赤村も参加したこと(後述)、平成筑豊鉄道の経営が苦しいが何とかやっていること等、道さんは矢継ぎ早にお話しされた。

「線路跡を活用したイベントは全国各地でやっていて、なかなか苦しいですが、現職をダブルスコアで破っての初当選は村民からの期待の証です。もう一度「トロッコフェスタin赤村」を開催した当時の初心に返って村おこしをやりたいと思っています。「源じいの森」もかれこれオープンから25年になりますがなかなか好評なので、地元に帰ってきた際はぜひお立ち寄りください。源じいの森の宿泊も、連絡くださればご用意したいと思っております」とのことだった。

国鉄末期の赤字ローカル線廃止政策の影響で、日本中が廃線跡だらけになり、廃線跡ビジネスも乱立状況になりつつある。これ以上廃線跡が増えれば過当競争で共倒れになりかねない。道さんの言葉からはそうした現状に対する危機感も垣間見えた。現役の鉄道には国の支援がほとんどなく、維持は地元と鉄道会社に丸投げされる形で放置され、乗客もまばらなのに、廃線になると跡地に税金で立派な記念公園が整備され、現役時代には考えられなかったほどの客が訪れる。つくづく日本の鉄道政策は歪でおかしいと思う。

今、北海道では全営業キロの半分が「JR北海道単独では維持困難」と公表されているが、これでもし「維持困難10路線13線区」が新たに廃線に加わったらどうなるだろうか。もはや廃線跡ビジネスさえ成り立たないだろう。今ある鉄道をいかにして維持していくか、これほど地元の知恵と熱意が試されているときはないと、改めて実感した。せっかく、道村長とこうして直接お話しもさせてもらったことだし、道さんの在任中に、必ず一度は赤村を訪れたいと思っている。

なお、2017年3月4日に奈良県五條市で開催された「全国鉄道サミット」については、以下の記事の通り。

--------------------------------------------------------------------
鉄道全国サミット きょう、「未成線」活用考える あす、五新線路盤におもちゃ列車 五條/奈良(「毎日」2017年3月4日)

 計画や建設が中止になった鉄道「未成線」の活用を考える全国サミットが4日午後1時半、五條市西吉野町八ツ川、西吉野コミュニティセンターで開かれる。

 五條市には五條~和歌山県新宮市を結ぶ「五新線」構想があったが建設が中止され、一部路盤や橋などの跡が残る。サミットにはNPO法人五新線再生推進会議のメンバーのほか、今福線(島根)▽佐久間線(静岡)▽岩日北線(山口)▽油須原線(福岡)▽高千穂線(宮崎)--の関係者が参加。奈良先端科学技術大学院大の新名惇彦名誉教授が「負の産業遺産・未成線で地方創生」と題して基調講演し、近畿大の岡田昌彰教授らも交えてディスカッションする。

 5日午前11時~午後3時、西吉野町城戸の五新線路盤で約1000メートルの木製レール上でおもちゃの列車を走らせるイベントもある。【栗栖健】
--------------------------------------------------------------------

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日高線復旧求め、地元2団体がJR北海道本社に要請、署名提出行動を実施

2018-01-13 16:47:51 | 鉄道・公共交通/交通政策
不通から3年の日高線 2市民団体、JR北に要請書提出(苫小牧民報)

JR日高線が2015年新年の高波災害で不通になってから、早いもので3年が経過した。地元には北海道立静内高校があるが、列車通学を当て込んで2015年4月に入学した生徒達は、もしこのまま日高線が復旧しなければ、ついに一度も列車通学ができないまま卒業を迎えることになる。

しかし、安全問題研究会が昨年11月24日の講演会で指摘したように(資料)、鵡川~日高門別間は被災しておらずいつでも動かせる状態にある。法的にも物理的にも運行できる状態にある鉄道が、鉄道事業者の都合で一方的に運休させられている状況は、当ブログの知る限り戦時中くらいしか例がなく、日本鉄道史の中でこれほど情けない話もない。

12日の行動には、当研究会も休暇を取って参加した。冒頭、JR日高線を守る会、JR問題を考える苫小牧の会から、この間集約した署名4,988筆(記事では4,756筆となっているが、その後の集約でさらに増えた)を手渡し、交渉に臨んだ。

JR北海道は「列車を動かすだけでも年間180億円の経費がかかる中で、運行再開後も赤字確実な部分復旧にも応じられない」として私たちの要求を拒否した。だがそもそもJR北海道は新幹線を含め全線が赤字だ。JR北海道の言い分を認めるなら今すぐ北海道全線を止めなければならず、理由になっていない。

当然、提出後のぶら下がり会見では、「赤字というなら北海道は全線が赤字であり、日高線だけを復旧させないことに対しては納得できない」と抗議の意思を表明した。「今日の交渉を終えて感想は?」との質問に対しては「JRは鉄道会社として列車を動かすのが使命。動かせる線路があるのに動かさないのは社会的使命を担う公共交通企業として断じてあってはならない。今後も繰り返し運行再開を求める」と答えた。

両会が求めた代行バスの利便性向上、バスに乗れない障がい者のための低床車導入に対しては、地元議会でも質問が出ており、町当局の答弁も行われていることから「勉強させていただく」との回答だった。だがいわゆる「官僚用語」の世界では、勉強とは「検討」以前の段階に対して使われるものであり、不通から3年も経っている現状で使うべき言葉ではない。日高線を守る会としては、事実上の「ゼロ回答」と受け止めており、断固抗議する。

なお、当ブログ・安全問題研究会としても、今後、繰り返し運行再開を求めていく。署名も引き続き行うので、ぜひみなさまもお願いしたい。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

周到に準備されていた「談合」への道~リニア入札談合の真犯人は政府ではないのか?/安全問題研究会

2017-12-19 21:52:59 | 鉄道・公共交通/交通政策
(この記事は、当ブログ管理人が「レイバーネット日本」に寄稿した原稿をそのまま掲載しています。)

2014年10月、全国新幹線鉄道整備法に基づいて事業計画が認可されたリニア中央新幹線建設工事は、大林組、鹿島、清水建設、大成建設の大手ゼネコン全4社関係者が東京地検特捜部から任意の事情聴取を受けるとともに、ゼネコン各社も強制捜査を受ける事態に発展した。

だが、認可以前からリニアの問題点を追ってきた安全問題研究会は「やはり来たか」という思いであり驚きはない。それどころかこの事態は起こるべくして起きたものだといえる。大手ゼネコン4社すべてに均等に仕事を割り振ることは事業認可当初からの既定路線であり、むしろこの談合はそれに沿って政府が周到にお膳立てした官製談合なのではないだろうか。もちろん現時点で確証があるわけではない。だが単なる憶測では片付けられない官製談合の「状況証拠」ともいうべき情報を当研究会は得ている。今日は、その驚愕すべき情報を皆さんにお伝えしておきたい。

●WTO「政府調達協定」からの突然のJR離脱

1995年、それまでのGATT(関税と貿易に関する一般協定)に代わる国際間貿易ルールとして、各国間合意によってWTO協定(世界貿易機関を設立するマラケシュ協定)が発効した。そのWTO協定に基づいて締結された関連協定のひとつに「政府調達に関する協定」がある。加盟国の中央政府や地方政府、政府関係機関などが基準額以上の高額の契約を締結する場合、外国企業の参加も可能となるような形で国際競争入札により業者選定しなければならないことを定めたものだ。協定の内容を詳述する余裕はないが、基準額は物品調達・役務調達・工事など契約の種類ごとに決められており、工事の場合、それは日本円で20億円である。協定の適用対象となる「政府関係機関」も、加盟国間で紛争にならないよう、協定の附属書に名称を列挙する形で具体的に取り決められている。言うまでもないが、JR各社は旧国鉄を引き継いだ企業であり、民営化後もしばらくは国が全額を出資する国鉄清算事業団(その後の日本鉄道建設公団~現在の独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構)が全株式を保有していたことから、政府関係機関として協定の適用対象になっていた。

このうち、JR東日本、東海、西日本の本州3社に関しては、2001年までに鉄建公団が保有していた全株式を放出し、完全民営化された。政府関係機関でなくなった本州3社は、本来であればこの時点で政府調達協定の適用から除外されるはずだった。だが、国内(域内)企業の日本の鉄道工事への参入を狙っていた米国、カナダ、EU(欧州連合)がWTOに対して異議を申し立てたため、JR本州3社は完全民営化後も政府調達協定からの離脱ができない事態に陥った。米国とカナダは2006年に異議を撤回するものの、EUはその後も撤回しなかった。異議申立の撤回に向けた日本政府からEUへの再三にわたる働きかけも実らず、JR本州3社の政府調達協定からの離脱交渉は暗礁に乗り上げたかに見えた。

ところが事態は急転する。2014年10月28日になって、EUが異議申立の撤回に同意したのだ。完全民営化から13年も経過して、ようやく「純粋な民間企業」と認められたJR本州3社は政府調達協定の適用から除外。20億円以上の大規模工事を発注する場合であっても、外国企業の参加も可能となるような形での国際競争入札により業者選定を行う必要がなくなったのである。総額9兆円ものビッグプロジェクトを推進する政府・JR東海にとって最大の障害が取り除かれたのだ。

日本政府はこれを「EUに対する長年の外交上の働きかけが結実した結果」(2014年10月28日付け外務大臣談話)と自賛した。だが、ここでもう一度皆さんには思い出してほしい。リニア中央新幹線計画が事業認可されたのは2014年10月17日。EUによる異議撤回の、わずか11日前の出来事だ。

あまりにも出来すぎたタイミングといえる。これを偶然の一致と思えるほど当研究会はお人好しではない。どこをどう見ても、外国企業を排除し日本企業だけで「談合」できるよう、日本政府が政府調達協定からのJR東海の離脱を待ってリニア中央新幹線の事業認可をしたと勘ぐられても仕方のないタイミングだ。談合へのレールは最初から敷かれていたのではないか。

李下に冠を正さずということわざもある。もしそうではないと言うのであれば、なぜ政府はわざわざ痛くもない腹を探られるような時期を選んで事業認可に踏み切ったのか。政府にはそのことに対する説明責任がある。そうでなくても、当研究会の活動拠点である北海道では、JR北海道が10路線13線区を「自社単独では維持困難」と公表、上下分離や路線廃止~バス転換も含めた地元との協議が始まろうとしている。実際のところ、JR北海道が維持困難と表明している路線を守るためには年に数百億程度の国の支援があれば足りる。地方の生活のための路線が危機を迎えているのに見向きもせず、それより2桁も多い金額をリニアに投入、今でも十分便利なところをさらに便利にして地域間格差を広げた挙げ句、ゼネコンが談合でつり上げたリニアの建設費のツケを利用者が支払わされるのでは踏んだり蹴ったりだ。当研究会は、推進派からの反発も覚悟で今こそはっきり言う。「こんな馬鹿げたリニアはいらない」と。

<参考資料>
世界貿易機関(WTO)政府調達協定の対象からのJR本州3社の除外について(2014.10.28 国交省プレスリリース)

世界貿易機関(WTO)政府調達協定の対象からのJR本州3社の除外に際しての国土交通大臣談話

(文責:黒鉄好)

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

安全問題研究会がJR路線見直し問題で国交省要請を実施

2017-12-16 22:58:20 | 鉄道・公共交通/交通政策
安全問題研究会は、JR北海道の路線見直し問題に関して、12月15日に国交省要請を行いました。

その際の要請書をアップしました。なお、印刷に適したPDF版は安全問題研究会サイト内の「安全問題研究会が行った政府への要請・申し入れ」コーナーに掲載しています。

-----------------------------------------------------------------------------------------
2017年12月15日

 国土交通省鉄道局長 藤井 直樹 殿

安全問題研究会

JR北海道の路線廃止問題に関する要請書

 当会は、各鉄道の安全や地域公共交通の存続及び利便性向上のための活動を行う鉄道ファンの任意団体です。これまで、国内各地の鉄道を初めとする公共交通に乗車して点検を行う活動、鉄道事故の原因調査や学習会などを通じて安全問題や地方ローカル線問題の検討を行ってきました。その結果、日本の鉄道や公共交通を巡る政策について、改善を要するいくつかの事項が認められるに至りました。

 本日は、そのような改善を要する事項のうち、特に緊急を要し、影響も特に深刻なJR北海道の路線存廃問題に絞って、下記のとおり要請を行うこととしました。

 当会としては2015年以来の要請となりますが、貴職におかれましては、このような切実な事情及び本要請の趣旨をご理解いただくとともに、本要請書に対して、文書による回答を行われるよう希望いたします。

 なお、JR北海道が「自社単独で維持困難」と発表した道内10路線13線区について、同社は「上下分離」方式(沿線市町村が線路を保有し維持管理に当たる方式)の導入を地元に対して求めていますが、地方交付税法の規定により、現状では鉄道の線路を自治体が保有している場合であっても、道路等と異なり地方交付税の交付対象となっていません。当会としては、こうした制度の不備も上下分離が進まない原因のひとつと考えており、地方交付税制度の鉄道への適用を求める要請を、去る11月14日付け総務大臣及び総務省自治財政局長宛て要請書(別添)のとおり併せて実施していますので、念のため申し添えます。



【要請事項】
1.国鉄改革当時の国会決議等を踏まえ、JR北海道が検討しているローカル線の廃止を行わせないようにすること。


【説明】
 JR北海道が昨年11月、鉄道路線の廃止~バス転換または沿線市町村が線路を保有する上下分離方式による運営に切り替えたいと提案した路線(10路線13区間)の合計は1,137.2kmであり、JR北海道の鉄道全路線(2,499.8km)のほぼ半分に及んでいる。

 国鉄改革関連8法案が審議されていた参議院日本国有鉄道改革に関する特別委員会が、1986(昭和61)年11月28日、同法案の可決・成立に当たって行った附帯決議は、「(JR各社の)経営の安定と活性化に努めることにより、収支の改善を図り、地域鉄道網を健全に保全し、利用者サービスの向上、運賃及び料金の適正な水準維持に努めるとともに、輸送の安全確保のため万全を期すること」「各旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社の輸送の安全の確保及び災害の防止のための施設の整備・維持、水害・雪害等による災害復旧に必要な資金の確保について特別の配慮を行うこと」を国に対して求めている。この附帯決議の採択に当たり、国鉄改革関連8法案の担当である橋本龍太郎運輸大臣及び葉梨信行自治大臣(いずれも当時)が「その御趣旨を尊重」し、政府として努力・善処する旨答弁している。

 国鉄再建監理委員会における当時の議論やこうした歴史的経緯を踏まえ、経営が厳しくなると予想されたJR北海道・四国・九州の3社は国が設けた経営安定基金の運用益で持続的な経営を維持することとされたが、当初、7.3%と見込んだ金利が低下したため、期待通りの運用益が得られず、今日の事態を招くことになった。今日の事態は政府の責任と考える。

 国鉄再建監理委員会参事官や運輸事務次官を務めた黒野匡彦氏は、北海道新聞に対し「30年も前に作った仕組みは事情の変化に応じて変わるのは当たり前。現役の行政官が政策を変更しては先輩のメンツをつぶすなどと遠慮する必要はない。国鉄改革の仕組みにとらわれず、新しい政策を展開すれば良い」と、社会情勢の変化に応じた政策の柔軟な変更を促している。また、JR東日本第2代社長を務めた松田昌士氏も「JR北海道の株主は国であり、今も国家機関」だとして、国が主体となりJR北海道の経営改善を行うよう求めるなど、国鉄改革を推進した関係者からも、この間の社会情勢の変化を踏まえた国鉄改革見直しの声が上がっている。ローカル線の廃止を避けることは、地域衰退を防止し公共交通を守るため急務の課題である。

2.国鉄改革以降30年間の社会情勢の変化を踏まえ、JRグループの枠組みを見直すこと。とりわけJRグループが列車運行に専念できるよう、全国JRグループ全線の線路及び施設を国が保有し一元的に管理する仕組みを作ること。

【説明】
 現在、日本国内で上下分離方式が論じられる場合、「沿線市町村による線路保有」を前提としたものとなっているが、2000(平成12)年8月1日付け運輸政策審議会答申第19号「中長期的な鉄道整備の基本方針及び鉄道整備の円滑化方策について」においては「運行事業者とインフラの整備主体が原則として別人格であって、インフラの整備に公的主体が関与する場合」を上下分離と定義しており、インフラの整備の主体を市町村に限定するものとはなっていない。また、欧州連合(EU)でも「共同体の鉄道の発展に関する閣僚理事会指令」(1991年EU指令)によりインフラ事業と輸送事業を分離する改革が行われたが、国家や州政府など、市町村よりも大きな行政単位によって鉄道が運営されている例が多い。社会資本として整備に巨額の資金を必要とする鉄道の整備や維持を財政力の小さな市町村主体で行うことは困難であり、国や都道府県の関与が必要である。

 また、2016(平成28)年12月30日付け「北海道新聞」は、旧国鉄の経営悪化が深刻化した1982年、国が「日本鉄道保有公団」を設立して国鉄の線路・施設の保有管理をこの公団に移管、国鉄は列車運行に専念するという上下分離方式の導入が運輸大臣私案として旧運輸省で作成されたことを報じている。国が線路・施設を保有管理する形態の上下分離案が、私案とはいえ政府部内で作成されたことはこの手法の有効性を示している。

 北海道内の路線廃止を防ぐため、早急にJR北海道の線路維持管理に関する負担を軽減する必要があるが、仮に日本鉄道保有公団方式を参考として国が線路・施設の保有管理を行うとしても、全営業路線が赤字である北海道内だけをその対象とした場合、効果は限定的なものとなる可能性が高い。効果を最大限にするためには、列車本数の多い路線や収益性の高い路線から徴収する線路使用料によって北海道の線路保有管理の仕組みを支える必要があり、そのためには全国JRグループ全線を対象に国が線路・施設の保有管理を行う形態の上下分離方式を導入することが望ましい。

3.JR旅客各社がJR貨物に対して設定している線路使用料について、いわゆるアボイダブルコスト(回避可能)ルールを見直し、貨物列車の走行実態に応じた線路使用料を設定できるようにすること。

【説明】
 国鉄改革により旅客と貨物が別会社に分離されて以降、JR旅客各社がJR貨物から徴収する線路使用料については、「新会社がその事業を営むに際し当分の間配慮すべき事項に関する指針」(平成13年国土交通省告示第1622号。以下「指針」という。)II-1-2により「貨物会社との協議を経て、貨物会社が当該鉄道線路を使用することにより追加的に発生すると認められる経費に相当する額を基礎として」定めることが規定されている。

 国鉄改革の契機となった国鉄財政悪化の原因が、1970年代中盤以降の国鉄における貨物輸送の急激な業績悪化を原因としていることから、国鉄改革に際してこのようなルールが設けられたものと考えられるが、トラック輸送分野における昨今の極端な運転手不足はJR貨物の業績にとって追い風となっており、JR貨物は2016年度決算で5億円の黒字決算となった。この結果、路線廃止を検討しなければならないほどの経営状態に追い込まれているJR北海道が黒字決算のJR貨物を支えなければならないという看過しがたい事態となっている。

 石勝線列車火災事故以降、JR北海道は安全対策に集中的に投資した結果、年間200億円程度の資金が不足している状態にあるが、JR貨物からの線路使用料を、貨物列車の走行実態に応じて適正化した場合、全列車キロの半分以上が貨物列車の北海道では、現在、16億円程度の線路使用料が100~200億円に上昇するとの試算もある。この試算通りであれば、線路使用料の適正化によってJR北海道は資金不足をほぼ解消できるとともに、必要な安全対策を十分実施しながら、現行通り路線を維持することも可能になる。

 国鉄改革から30年を経過、この間の社会情勢の変化によりアボイダブルコストルールも時代に合わなくなっている。JR旅客各社がJR貨物からの線路使用料を適正化できるよう、「指針」見直しが必要である。

 なお、この見直しを行った場合、今度はJR貨物が少なくとも100~150億円近い赤字決算となり、同社の経営に重大な影響を及ぼすことが確実である。整備新幹線開業時にJR旅客各社から経営分離された並行在来線を運営する第三セクター鉄道(以下「並行三セク」という。)に準じ、国が貨物調整金を支給することでこの問題は解決できるが、現在、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備機構法(以下「機構法」という。)附則第11条の規定により、貨物調整金の支給対象が並行三セクに限定されている。「指針」見直しと併せ、機構法附則第11条も併せて改正する必要がある。

4.地方交付税制度を鉄道にも適用できるような制度改正の要望を総務省に対して行うこと。

【説明】
 国鉄改革によって、旧国鉄の新幹線(東海道・山陽、東北(盛岡以南)、上越各新幹線)を新幹線鉄道保有機構(既に解散)に継承させるとともに、JR東日本・東海・西日本各社を列車運行に専念させるため上下分離方式が導入された。

 この上下分離方式が、地方路線を維持する上でも有効であることが認識されたため、近年、地方路線を上下分離方式で運営する例が徐々に増えている。しかし、地方路線の上下分離方式では線路・施設の保有管理主体は沿線市町村であることがほとんどであり、現行の地方交付税法では道路・空港・港湾と異なって、鉄道が地方自治体による線路管理であっても地方交付税の交付対象とならないことから、鉄道に上下分離方式を導入した地方自治体は全面的かつ長期的にその保有管理費用を負担しなければならない。

 当会は、このことが上下分離方式の全国的かつ大規模な普及が進まない原因のひとつであると考えており、先般、鉄道に対しても地方交付税の交付対象とするよう、総務大臣及び総務省自治財政局長宛て要請を実施したところである。

 この際、総務省自治財政局からは、「地方交付税はもともと国の金ではなく、地方から集めた金を各自治体の財政力の調整のために再交付するものであり、線路を持っている自治体の事例がちらほら出てきているに過ぎない現段階でそうしたものを地方交付税の交付対象に含めることは制度の趣旨にそぐわない」との説明を受けるとともに、(1)鉄道政策の制度設計をするのはあくまで国交省であり、総務省は、線路を持つ沿線自治体にも地方交付税を交付できるような制度を考えてくれるよう国交省から相談があれば知恵を出す立場ではあるが、メインで動くということにはならない、(2)将来、鉄道政策や地方交付税制度が大きく変わるようなことがあれば、考えないわけではない、(3)第三セクター鉄道に出資している地方自治体には、地方交付税を交付できる制度も一部ある――との回答を得た。

 当会としては、総務省の上記説明内容は十分理解できるものの、鉄道と同じ公共輸送目的の施設であり、またすべての自治体が保有しているわけではないにもかかわらず既に地方交付税の交付対象となっている空港や港湾の例もあることから、鉄道だけを地方交付税の交付対象から除外する積極的な理由もないものと考える。国交省と総務省との協議の進め方によっては、鉄道を地方交付税の交付対象とする方向での制度改正も十分可能と考えられることから、国交省に対し、総務省との協議を行うよう要望するものである。

(以  上)

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【管理人よりお知らせ】11/30、日高の未来を考えるフォーラムが開催されます

2017-11-27 00:18:21 | 鉄道・公共交通/交通政策
管理人よりお知らせです。

来る11月30日、「日高の未来を考えるフォーラム」が北海道新ひだか町で開催されます。日高線の復旧を目標として11月16日に結成された「日高線の未来を考える会」の主催で、当ブログ管理人は実行委員を務めています。

当日のフォーラムでは、酒井芳秀・新ひだか町長による「地域にとっての鉄道」と題した基調講演が行われます。その後は、酒井町長を含む3名の有識者がパネリストとして日高地域の観光振興をメインにパネルディスカッションを行います。日高線の復旧に関してはメインテーマにはなりませんが、「日高線の未来を考える会」は日高線の復旧を目指す団体であり、当ブログ管理人がメンバーになっている「日高線を守る会」と方向性は同じです。

詳しくは、チラシ及びレイバーネット日本のイベント情報をご覧ください。チラシがサムネイル表示になっている場合は、クリックすると拡大します。

なお、「日高線の未来を考える会」の結成については、11月22日付け「日高報知新聞」で以下のように報道されています。

-----------------------------------------------------------------------------
日高線復旧へフォーラム開催(日高報知)

 一昨年1月から鵡川―様似間116㌔で運休が続いているJR日高線の全線復旧に向けて、新ひだか町民有志による「日高線の未来を考える会」が16日に発足した。30日午後6時から新ひだか町公民館で酒井芳秀町長や学識・有識者を招きフォーラムを開催する。

 同会は町議の日向寺敏彦さん、NPO法人代表の三宅靖夫さん、農業の佐々木一夫さんが共同代表となり、町民約30人の組織。

 JR北海道が単独維持困難としている10路線13区間について、同社の島田修社長らが10月末、高橋はるみ知事に国への支援を要請する考えを示したことから、会は日高線の復旧に向けた地域の機運を盛り上げることが目的。復旧に向けた運動で先行しているJR日高線を守る会(村井直美代表幹事)とも連携する。

 フォーラムはその取り組みの一環で、酒井町長が基調講演する。また、日高町村会などによる「JR日高線(鵡川~様似間)沿線地域の公共交通に関する調査・検討協議会」に学識・有識者として参加した元エアドゥ代表取締役副社長の小林茂さんをコーディネーターに、JRA経営委員の青山佳世さん、元北海道新聞専務の岡田実さん、酒井町長をパネリストにパネルディスカッションも行う。

 共同代表の3人は「鉄道は経済と文化を運ぶもので、その目的は線路が敷かれたころと今も変わらない。ここには大きな観光資源があるので、各町の資源やイベントを有機的に結びつけることが将来は必要になってくる。そのときに鉄道があるのと無いのとでは大きく違う」。「今は新ひだか町だけの小さなうねりだが、フォーラムをきっかけに大きなうねりとなってオール日高で連携できるようになれば」と日高線存続への思いを話している。

 フォーラムは入場無料で申し込みは不要。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする