安全問題研究会~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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【質問主意書提出活動報告】バス事業の安全問題及び地方路線問題に関する質問主意書

2018-03-17 22:08:48 | 鉄道・公共交通/交通政策
安全問題研究会では、2014年以来4年ぶりに、国会議員による質問主意書提出活動を行った。提出は、前回と同じ山本太郎議員から。3つ目は「バス事業の安全問題及び地方路線問題に関する質問主意書」を政府からの答弁書と併せてご紹介する。

昨日及び一昨日にご紹介した鉄道関係の2件の質問主意書は、国交省の中でも鉄道局が担当であるのに対し、バスに関しては自動車局が担当している。両者を読み比べてみると、「お尋ねの○○の意味するところが必ずしも明らかではないが、~」「お尋ねの趣旨が明らかではない」「いずれにせよ、~~との御指摘は当たらない」等の慇懃無礼な言い回しや表現が、鉄道局関係の答弁書では多用されているのに対し、この記事で取り上げた自動車局関係の答弁書では一切使われていない。

また、この記事で取り上げた自動車局関係の答弁書では、各地方運輸局ごとに監査官の人数やバス・トラック・タクシー事業者の数を問う質問、国交省や独立行政法人からバス事業「適正化機関」への天下りの有無を問う質問にも、きちんと問い合わせの上人数を回答している。

国鉄分割民営化のどこで「効率的で責任のある経営ができる体制が整えられた」のかについて、具体的な根拠も示さないまま「全体としてサービスの信頼性や快適性が格段に向上した」と強弁している鉄道局の答弁書に比べて、はるかに誠意ある回答といえるだろう。

現代日本において、自動車は陸上交通の中心であるのに対し、鉄道は傍流。これを反映するように、国交省の中でも優秀な人材は自動車局に集まっており、鉄道局の人材は払底していてやる気もまったく感じられない。質問主意書を提出する活動を長く続けていると、各省庁や同じ省庁内でも部局ごとの状況が見えてくる。こうしたことがわかるのも、この活動のおもしろさだと思う。

安全問題研究会としては、バスに関してはある程度誠意ある回答が示されたと考えており、質問主意書提出行動はここでいったん打ち止めにしたいと考えている。一方、鉄道関係は誠意をまったく感じないことから、追加質問を行う予定だ。

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バス事業の安全問題及び地方路線問題に関する質問主意書

 平成二十八年十二月に道路運送法の一部を改正する法律(平成二十八年法律第一〇〇号。以下「道路運送法改正法」という。)が施行されバス事業の安全対策における大きな一歩を踏み出したが、まだ十分とは言えない。また路線バス事業への参入に係る規制緩和により地方のバス路線(以下「地方路線」という。)の維持も大きな問題となっている。こうしたことを踏まえ、以下質問する。

一 観光バス運転手などで構成する全国自動車交通労働組合総連合会(以下「自交総連」という。)関係者の証言によれば、全国でバス・タクシー・トラック事業者(約十二万社)を監査する国土交通省の監査官の平成二十七年度の定員は全国で三百七十一人しかいないとされる。単純計算で、監査官一人が担当すべきバス・タクシー・トラック事業者数は約三百二十社であるが、平成二十七年度当時から二年以上が経過した現在、国土交通省の監査官の人数及び監査対象となっているバス・タクシー・トラック事業者の数を地方運輸局ごとに示されたい。

二 政府は、現状における国土交通省の監査官の人数でバス・タクシー・トラック事業者に対する実効ある監査ができると考えているのか。

三 道路運送法改正法によって、民間の一般貸切旅客自動車運送適正化機関が一般貸切旅客自動車運送適正化事業を行うこととされたが、本制度で実効ある貸切バス事業の適正化が可能と考えているのか。国土交通省の監査官の増員ではなく、本制度により貸切バス事業の適正化を図ることとした理由を明らかにされたい。

四 一般貸切旅客自動車運送適正化機関の数を地方運輸局ごとに示されたい。また、同機関に役職員として再就職した国家公務員(独立行政法人の役職員を含む。)がいる場合には、その数も地方運輸局ごとに併せて示されたい。

五 平成二十四年十月に国土交通省に設置された「バス事業のあり方検討会」において、運転手の立場を代表する労働組合関係者で同検討会の委員に選ばれたのは、全国交通運輸労働組合総連合軌道・バス部会事務局長、日本私鉄労働組合総連合会交通政策局長及び日本鉄道労働組合連合会自動車連絡会顧問の三名であった。国土交通省の監査官の少なさを指摘した自交総連等の労働組合の代表は含まれていないが、国土交通省は同検討会における労働組合関係者の委員をどのような基準で選んだのか。

六 道路運送法は、一般乗合旅客自動車運送事業の許可基準について、同法第六条において、当該事業の計画が輸送の安全を確保するため適切なものであること、当該事業の遂行上適切な計画を有するものであること、当該事業を自ら適確に遂行するに足る能力を有するものであることと規定しているのみである。

 同条において地方路線も含めた公共交通全体の持続的な維持が許可基準として考慮されていないことは、当該事業への参入に係る規制緩和の最も典型的な弊害である。当該事業への新規参入を希望する者がいる場合、地方路線も含めた公共交通全体を持続的に維持できることを許可基準とするよう、同法の改正が必要と考えるが、政府の考えを明らかにされたい。

  右質問する。
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参議院議員山本太郎君提出バス事業の安全問題及び地方路線問題に関する質問に対する答弁書

一について

 旅客自動車運送事業者及び貨物自動車運送事業者に対する監査を実施する国土交通省地方運輸局の職員の数(本年二月末日時点)並びに旅客自動車運送事業者の数及び貨物自動車運送事業者の数の合計数(平成二十八年三月末日時点)を地方運輸局別にお示しすると、次のとおりである。

 北海道運輸局 三十八名 一万二千九百二
 東北運輸局 四十二名 一万六千九百八十七
 関東運輸局 百六名 十万六千三十九
 北陸信越運輸局 三十名 一万二千三百七十三
 中部運輸局 四十四名 二万四千八百五十七
 近畿運輸局 五十八名 四万六千百六十三
 中国運輸局 三十四名 一万七千百三十三
 四国運輸局 二十四名 八千八百九十八
 九州運輸局 四十四名 二万七千七百九十五

二及び三について

 御指摘の道路運送法の一部を改正する法律(平成二十八年法律第百号)においては、旅客自動車運送事業者への巡回指導等の適正化事業を行うことにより国の監査機能を補完する役割を担う民間団体である適正化機関(道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)第四十三条の二第一項に規定する適正化機関をいう。以下同じ。)として指定された者が貸切バス事業について存在していなかったことから、貸切バス事業についての適正化事業の実施が図られることとなるよう、貸切バス事業に係る適正化機関である一般貸切旅客自動車運送適正化機関が貸切バス事業者から負担金を徴収し、適正化事業の実施に必要な経費に充てることができることとする等の措置を講じたものである。

 その結果、昨年六月までに、全ての地方運輸局の管轄区域内において一般貸切旅客自動車運送適正化機関が指定されており、これにより、一般貸切旅客自動車運送適正化機関が貸切バス事業者への巡回指導を行い、その法令の遵守状況を確認し、悪質な法令違反が認められた貸切バス事業者について国に報告する体制が整備されたところであり、実効ある貸切バス事業の適正化が図られるものと考えている。

 国土交通省の職員による旅客自動車運送事業者及び貨物自動車運送事業者に対する監査については、監査を実施する職員を平成二十九年度に五十四人増員したほか、一般貸切旅客自動車運送適正化機関、タクシー事業に係る適正化機関並びにトラック事業に係る地方貨物自動車運送適正化事業実施機関及び全国貨物自動車運送適正化事業実施機関と連携し、悪質な事業者に対し、重点的な監査を実施しているところであり、引き続き監査の実効性の確保に努めてまいりたい。

四について

 お尋ねの一般貸切旅客自動車運送適正化機関の数は、各地方運輸局の管轄区域内にそれぞれ一である。

 また、お尋ねに関し、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第百六条の二十四第二項の規定により再就職先の届出を行った国家公務員の退職者については、一般貸切旅客自動車運送適正化機関に役員として再就職した者はおらず、職員として再就職した者は、北陸信越運輸局を退職し、適正化事業巡回指導員として一般社団法人北陸信越貸切バス適正化センターに再就職した者の一名である。独立行政法人の退職者については、国土交通省が一般貸切旅客自動車運送適正化機関に対し確認したところによると、当該機関に役職員として再就職した者はいない。

五について

 御指摘の「バス事業のあり方検討会」における労働組合関係者の委員については、全国的な組織であって多数の運転者を構成員とするものの代表者を選定したものである。

六について

 御指摘の「地方路線も含めた公共交通全体」の維持については、我が国において人口減少や高齢化が進む中、重要な課題であると考えており、各地域における乗合バス事業の状況を把握し、検証しつつ、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律(平成十九年法律第五十九号)の枠組みを活用した地域の取組を支援することを始め、地域公共交通の維持のための政策を進めてまいりたい。

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