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【質問主意書提出活動報告】鉄道事業法における鉄道事業の許可と列車運行義務及び被災した鉄道の復旧に関する質問主意書

2018-03-15 21:52:14 | 鉄道・公共交通/交通政策
安全問題研究会では、2014年以来4年ぶりに、国会議員による質問主意書提出活動を行った。提出は、前回と同じ山本太郎議員から。まず初めに「鉄道事業法における鉄道事業の許可と列車運行義務及び被災した鉄道の復旧に関する質問主意書」を政府からの答弁書と併せてご紹介する。

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鉄道事業法における鉄道事業の許可と列車運行義務及び被災した鉄道の復旧に関する質問主意書

 JR北海道の日高本線は、平成二十七年一月の高波災害を受け鵡川から様似間が三年以上も不通となっているが、このうち鵡川から日高門別間はまったく被災しておらず、直ちに運行を再開できる状況にある。また、沿線の住民団体も再三にわたって運行再開を求めている。それにもかかわらず、JR北海道が多額の復旧費がかかることを理由として運行再開を拒んでいるのはきわめて不当である。また、根室本線も東鹿越から新得間が台風災害で被災し不通となった後、復旧が行われないまま、JR北海道はこの区間を含む富良野から新得間についてバス転換を含めた地元との協議を行いたい旨を表明している。こうしたJR北海道の姿勢は鉄道事業者、公共交通事業者としての責任放棄と言える。よって以下質問する。

一 鉄道事業法に基づく鉄道事業の許可は、鉄道事業を経営しようとする者の申請に基づき国土交通大臣が行うこととしている。JR各社においては、日本国有鉄道改革法の施行の際、国鉄が現に運営していた事業を引き継ぎ、当時でいう第一種鉄道事業の免許を受けたものとみなされたという事情があるものの、前記許可制度と基本的な考え方は同じである。すなわち、鉄道事業の許可は列車を運行する意思と能力を持つ者からの申請に対し国が与えるものであるから、許可後は特段の事情がない限り、当然に列車の運行義務を負っていると解するのが相当であり、国鉄の事業を引き継いだJR各社も同様に列車の運行義務を負っていると考えられる。

 このような考え方に立つならば、路線が実際に運行可能な状態にあり、かつ同法に基づく休廃止の届出も行われないまま運行がなされていない日高本線の現状は、同法の立法趣旨に反しているものと言わざるを得ない。

 JR北海道に対しては、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律に基づく勧告を出してでも日高本線(当面は鵡川から日高門別間)の運行を再開させるべきであると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

二 前記一の許可を受けた事業者が、当該許可を受けた路線において列車の運行を行わないことができる正当な理由に「赤字路線であること」は含まれないと考えられるが、政府の見解を明らかにされたい。

三 札幌から釧路方面へ向かう貨物の輸送は、昭和五十六年に石勝線が開通するまで、現在不通となっている区間を含む根室本線を使用して行われていた。根室本線の富良野から新得間では、現在、貨物輸送は行われていないが、釧路方面への貨物輸送を行っている石勝線が災害等で不通となった場合、同区間経由で貨物輸送を行わなければならない事態も十分考えられる。東日本大震災時に貨物輸送ルートの確保が問題となったことに鑑みると、過去に貨物輸送の実績を持つ同区間を廃止することは、災害時に食料、燃料等の生活物資の輸送ルートを確保することを通じて国民生活を守る観点から好ましくないと考えられる。この点について、政府の見解を明らかにされたい。

 また、JR北海道が旅客輸送密度だけを尺度として、災害時における重要な貨物輸送ルートまでバス転換を含めた地元との協議を進めようとしていることは、線路を保有する旅客会社が貨物輸送の重要性に配慮した経営を行うことができていないことを意味している。これは、旅客と貨物とを別会社に分離した国鉄分割民営化の弊害であると考えられる。平成二十九年二月八日の衆議院予算委員会において、麻生副総理兼財務大臣がJR北海道の経営について、根本的なところでの対処が必要である旨答弁するなど、JRグループの現状の見直しを必要とする考えは安倍内閣の一部閣僚からも示されている。政府として、国鉄分割民営化から三十年が経過したJRグループの組織再編を検討する考えはないのか。

四 国鉄改革関連法案が審議されていた参議院日本国有鉄道改革に関する特別委員会において、昭和六十一年十一月二十八日、「各旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社の輸送の安全の確保及び災害の防止のための施設の整備・維持、水害・雪害等による災害復旧に必要な資金の確保について特別の配慮を行うこと」を含む日本国有鉄道改革法案外七案に対する附帯決議が可決されるとともに、当時の橋本龍太郎運輸大臣、葉梨信行自治大臣が「附帯決議の趣旨を尊重する」旨を表明している。国民の公共交通機関としての国鉄を引き継いだJR各社の路線の災害復旧に国が責任を持つことは国権の最高機関たる国会からの要請であり、鉄道路線の災害復旧のための予算を大幅に増やす必要があると考える。

 私は「JR北海道の安全問題、ローカル線問題及びリニア中央新幹線に関する質問主意書」(第百八十七回国会質問第七四号)において、鉄道路線の災害復旧に対する国庫補助に関して、鉄道軌道整備法を改正する必要性の観点から質問しているが、前記附帯決議を踏まえ、改めて鉄道路線の災害復旧のための予算を拡充する必要性に関する政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。
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参議院議員山本太郎君提出鉄道事業法における鉄道事業の許可と列車運行義務及び被災した鉄道の復旧に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律に基づく勧告」の意味するところが必ずしも明らかではないが、北海道旅客鉄道株式会社日高線鵡川・様似間については、平成二十九年二月に、北海道旅客鉄道株式会社より沿線自治体に対して、復旧の断念とバス等への転換が提案されたことを受けて、これまで、沿線自治体において、バス等への転換の可能性も含めた検討が進められてきているものと承知している。引き続き、地域における検討及び協議を進めていく必要があるものと考えている。

二について

 お尋ねの趣旨が明らかではないため、お答えすることは困難である。

三について

 北海道旅客鉄道株式会社根室線富良野・新得間の在り方については、将来にわたって持続可能な交通体系を構築するため、地域における検討及び協議を進めていく必要があるものと考えている。なお、災害時における生活物資の輸送ルートの確保については、鉄道による輸送だけでなく、自動車や船舶による輸送を含め、総合的に検討すべきものと考えている。

 また、御指摘の「国鉄分割民営化の弊害」の意味するところが必ずしも明らかではないが、北海道旅客鉄道株式会社、東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社、西日本旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社、九州旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社においては、日本国有鉄道の分割民営化によって、効率的で責任のある経営ができる体制が整えられた結果、全体としてサービスの信頼性や快適性が格段に向上したものと認識している。

 御指摘の「JRグループの組織再編」については、東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社、西日本旅客鉄道株式会社及び九州旅客鉄道株式会社は完全民営化された企業であり、その経営判断の問題に関わることから、政府として見解を示すことは差し控えたい。

四について

 政府としては、鉄道の災害復旧に対する国庫補助のため必要な予算の確保に引き続き努めてまいりたい。

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