『鷲か太陽か?』 オクタビオ・パス ☆☆☆☆
パスのファンタスティックなコントが大好きなので、Amazonでこれを見つけて早速購入した。配送まで4~6週間になっていたがめげずに待った。他のパスの散文集なんてないからだ。評論ならたくさん出ているのだが。
パスの作品といえばみんな知っているのは『波と暮らして』だろう。私もそうだった。やたらあちこちのアンソロジーに収録されているからだ。私が知 . . . 本文を読む
『SUPER SIZE ME』 Morgan Spurlock監督 ☆☆☆
ケーブルテレビで鑑賞。どんな映画か知らないままぼんやりと見始めたが、始まってから噂を聞いたことを思い出した。要するに、マイケル・ムーア監督のような社会派のノンフィクション映画である。情報の正確さより、明確な主張をもって何事かを声高に叫ぶタイプの映画である。
本作の攻撃対象はマクドナルドを始めとするファーストフード . . . 本文を読む
昨日の続き。
『イノセンス』のDVD特典で押井守監督とジブリの鈴木敏夫が対談していて、なかなか面白い。押井守監督が宮崎駿の批判をしている。
簡単に言うと、宮崎駿はキャラクターの喜怒哀楽を通して何事かを語ろうとするが、押井監督はそれは危ういと考える。なので感情のない人間達の映画といわれるものができる。それの何が悪いんだ、と監督は言う。
それからまた、最近のアニメーターは人間の動きをちゃん . . . 本文を読む
『イノセンス』 押井守監督 ☆☆☆★
DVDを購入して鑑賞。公開時に映画館で観たので二度目だ。最初に観た時は完全に失敗作だと思ったが、今回見直してみるとわりと良かった。初めて観た時と違って期待がなかったこと、欠点に対して心構えが出来ていたこと、それから家のモニターで観るとサイズが小さいので映像の美麗さがより際立って見えること、などが理由だと思う。
とにかく、映像の美麗さは素晴らしい。音 . . . 本文を読む
『必殺仕置屋稼業』 ☆☆☆
中村主水シリーズ三作目。
殺しの実行部隊は例によって三名。主水(藤田まこと)、市松(沖雅也)、印玄(新克利)。サポートは捨三(渡辺篤史)、営業はおこう(中村玉緒)。全体の印象は明るく、華やか。髪結いであるおこうが客相手にお世辞を言ったり、主水と憧れの飯屋の娘とのやりとりなど、お約束の楽しいシーンも豊富。主水の手下となった岡っ引き(小松政夫)がせんとりつのスパイで . . . 本文を読む
『Loveless』 My Bloody Valentine ☆☆☆☆☆
ロックの名盤と言えば必ず名前が上がる傑作であるが、好きな人はものすごく好き、ダメな人は全然ダメという、なかなかオーディエンスを選ぶ作品である(らしい)。私はメチャメチャ好きだ。これがどういう音楽かというと、基本的にはポップでキャッチーなメロディに轟音ギターを組み合わせたという、非常にシンプルな音楽である。音が妙な感じ . . . 本文を読む
『死都ブリュージュ』 ジョルジュ・ローデンバック ☆☆☆★
昨日読了。短いのであっという間に読めた。ブリュージュというのは、知らない人はあまりいないと思うがベルギーはフランドル地方の古都である。現在でも中世の面影を残す美しい町らしい。いつか行ってみたい。
以下、ネタばれあり。まあストーリーを知っていたからといって楽しめなくなるような小説じゃないと思うが……。
本書は憂愁の都ブリュー . . . 本文を読む
『World Diary』 Tony Levin ☆☆☆☆
トニー・レヴィンは私が最も敬愛するベーシストである。ちなみに私もベースを弾く関係でこの楽器にはうるさい。これはそのトニー・レヴィンの最初のソロ作である。
トニー・レヴィンと言えばキングクリムゾン、そしてピーター・ガブリエル・バンドである。この二つの、それぞれにロック音楽の頂点を極めたかの如き音楽集団の中で中核を担うベーシストで . . . 本文を読む
『暗闇仕留人』 ☆☆☆★
中村主水シリーズ第二弾である。時代は幕末、殺し屋チームは主水(藤田まこと)、糸井貢(石坂浩二)、村雨の大吉(近藤洋介)の三人。サポートメンバーが仕置人に続いて半次(津坂匡章)とおきん(野川由美子)。
さて、『必殺仕置人』のパワフルさと打って変わって、『暗闇仕留人』はおそらく主水シリーズ中最も静謐な作品である。『仕置人』の基調がバイタリティと躍動感だとしたら、『 . . . 本文を読む
『日本幻想文学集成 (1) 化鳥』 泉鏡花 ☆☆☆☆★
先日読了。
鏡花の短篇集は初めてだった。国書刊行会の日本幻想文学集成ということでバリバリの幻想譚を期待したが、中にはそうでもない、普通小説に近いものもあった。もちろんそういう短篇にも幻想風味はある。ちなみに、私は鏡花のいわゆる人情物といわれる小説をまったく読んだことがないので、鏡花に対する見方はかなり偏っていると思う。私にとって鏡花 . . . 本文を読む