アブソリュート・エゴ・レビュー

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助け人走る

2005-07-25 04:35:59 | 必殺シリーズ
『助け人走る』   ☆☆☆★

 DVDボックスを買ったのだが、先週下巻をすべて観終わった。

 これは必殺ファンとしてはなかなか評価しづらいシリーズではないだろうか。まず、基本的には地味である。ケレン味には欠ける。それは『仕置人』放映中に事件が起きたせいで、描写をマイルドにしなければならなかったという外部的な事情があり、仕方がないことなのだが、まず主人公達は殺し屋ではなく、人助けが仕事の助け人である。だから話も人助けを前提として展開する。それに主人公である文十郎と平内の性格が明朗闊達だ。全体の雰囲気も通常の明朗時代劇に近いものがある。
 殺し技も、平内のキセルは必殺的だが、文十郎は刀で立ち回りを演じるという、時代劇スタンダードである。中村主水も刀じゃないかと言われるかも知れないが、あっちは隙を見ていきなりブッスリという、必殺テイストな殺し方なのだ。それに対して文十郎の殺陣は、いかにも「悪党ども、かかって来い」的な殺陣なのだ。そんなセリフは言わないが。

 そういうわけで設定には面白味に欠けるところがある『助け人』だが、各エピソードはかなり充実しているのだ。しっかりした面白い話が多い。

 ところで『助け人』の最大の特色は、途中で為吉が殉職し、棟梁が旅に出て、普通なら最終回となるところがそうならず、その後ガラッと雰囲気が変わってそのまま話が続くという全体の構成にある。それまで明朗闊達だった雰囲気が、暗く緊張感漂うものに変わるのだ。仲間を失い、残ったものも奉行所の監視下にある状態ではそうならざるを得ない。文十郎の着流しも派手だったのが地味に変わり、いつも笠をかぶるようになる。
 この後半の展開はなかなか必殺的で良く、評価もされているのだが、個人的にはもう一つ食い足りない。チームはほぼ解散状態、ほとんど全員に監視がついている中で仕事を続けるとなれば、もっともっとハードな展開になっていいような気がするのだが、わりと普通に集まって普通に暮らしている感じだ。為吉が殉職する「悲痛大解散」の次の「逃亡大商売」はそういう意味では納得できるハードさで、傑作だが、その後はあまりその設定が生かされていないエピソードが多い気がする。平内も普通に女郎屋やバクチに通ってるし。全員が会わないようにしているわけでもなく、文十郎と平内がつるんで出かけたりもしている。こういうのを一切なくしたクラーイ展開にしたら凄かったような気もするが、それは欲張りというものかも知れない。

 ところで途中から宮内洋演じるところの龍が登場し、なかなか二枚目なのだが、殺し技に不満がある。怪力という設定で素手で殺すのだが、決め技は大体ブレンバスターである。ブレンバスターはあんまりである。やめて欲しかった。首の骨を折るとか、そういうのでいいじゃないか。面白いキャラクターだっただけにそれが残念だった。

 一方、『助け人』のカッコイイ殺し技といえばなんと言っても平内の仕込みキセルである。現れる前に、物陰からぷかあ~と煙が漂ってくるのがいいのだ。あと、障子に赤い光が明滅するというのもあったな。

 ただしなんだかんだ言って、明朗闊達な文十郎と平内のコンビはこれはそれで魅力があった。道楽者二人が自由気ままに呑気に暮らしつつ、陰では悪党どもを始末するという、閉塞感のある設定が多い必殺シリーズではかなり異色のチームと言える。この二人、とにかく頼もしいのである。こんな風に生きていけたらいいなあ、と男だったら誰でも憧れていしまうのではないだろうか。
 それに前に書いたように各エピソードのクオリティは高い。観て損はないシリーズである。

 あと、文十郎の妹が健気で明るくて、なかなか可愛いのだが、なんとこの女優さんは『暗闇仕留人』の最初の方に、誰とでも寝るオツムの弱い女として出てる人ではないか。そして主水に「あたしとどう? 旦那」などと言ったりするのだ。
 途中まで気づかなかったが、気がついた時は結構ショックだった。

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