アブソリュート・エゴ・レビュー

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海猫

2005-07-11 07:14:52 | 映画
『海猫』 森田芳光監督   ☆

 レンタルビデオで鑑賞。途中から笑いながら観た。

 こりゃ昼メロだ。女が猟師のところへ嫁に行く。夫はだんだん横暴になる。と、義弟が女に恋をする。義弟は絵を描いている。芸術家タイプである。女はとりあえず義弟を拒む。子供が生まれる。夫は浮気を始める。女はなぜか義弟のところへ行って抱かれる。また子供が生まれる。女は夫と姑にいびられる。義弟が助けにきて一緒に逃げようとする。修羅場になる。女と義弟は崖から身投げする。

 女と義弟が教会に行って絵を見るシーン。この、芸術家肌の義弟が兄嫁である女と一緒に教会に絵を見に行く、という設定がすでに昼メロなのだが、その展開がすごい。「もう出ましょう」女がおびえるような小声で言う。義弟はいきなり手を掴んで引き止める。後ろから抱きすくめる。「…あなたが寒いって言ったんだ」
 すごいシーンである。これが笑わずにいられるだろうか。
 ずっとこんな調子なので、女が義弟のところへ唐突に会いに行き、いきなりベッドシーンになるあたりで不安になる。これはひょっとしてギャグなのではないか。昼メロのパロディ映画なのではないか。

 それから、この映画は性交映画でもある。やたら性交シーンが出てくる。
 新婚初夜に性交する。昼間、畑のそばの小屋で性交する。たかしが遊びに来て娼婦と性交する。義弟が家に来た日に夫婦で性交する。夫が看護婦と不倫性交する。女が義弟と不倫性交する。次のシーンで夫がまた看護婦と性交する。女が体を壊して寝ていると、夫がやってきて無理やり性交する。
 最後の方では性交が始まると笑えるようになる。

 そういうわけで、泣かせどころであるはずの身投げシーンも微笑みながら見ることになる。大体、あの場面でも登場人物達の行動がまるで意味不明なのだ。普通に逃げればいいのに、子供が「お父さんかわいそう」と言ったばっかりに逃げるのを止める。そこまで子供の意見を尊重するか。足を縄でつながれてたお母さんはかわいそうじゃないのか。義弟が叫ぶ。「分かってくれ。薫は俺が幸せにする」おいおい、そう言われて、それじゃよろしくという夫はいないだろう。大体、体壊して縄につながれてた薫の救出劇だったんじゃないのか。趣旨が変わってないか。
 
 まあ、あまり突っ込んでも仕方がない。要は昼メロである。さすが『模倣犯』を撮った森田芳光のことだけある。駄作。
 星1個は、逃げ出そうとして縄でつながれるあたりの、いびりのエスカレートがちょっとだけ面白かったので進呈。

 

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