アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

ハウルの動く城

2005-06-19 04:13:00 | 映画
 日本の皆さんにはとっくのお馴染みの『ハウル』が、ようやく、いよいよ、やっとニューヨークにやってきた。待ち遠しかったよ、ハウル。ちょっと前からリンカーンセンターの映画館だけではやってたが、昨日からあちこちの映画館でやり始めたので、さっそく42丁目の映画館で観てきた。驚いたのは吹き替えだと思っていたら字幕だったこと。別にアートシアターじゃないのに。あそこにいたアメリカ人達は知ってたんかいな? とにかく日本語のオリジナル声優で観れて良かった。


『ハウルの動く城』 宮崎駿   ☆☆☆☆

 やっぱ面白かった。ディテールにおける宮崎駿マジックは健在。空を歩くシーン、宮殿の階段を上るシーン、ハウルの変身、「お引越し」のシーン、などなど。映像に目を奪われる、というと普通は映像の精密さや美麗さを意味することが多いが、宮崎駿の場合は映像の動きの面白さに目を奪われる。CG映像でなく伝統的なセルアニメの手法でここまで目を奪う映像を作るとは、もうセンスが違うとしかいいようがない。特に「お引越し」のシーンは良かったね。

 笑えたのは、

●マルクルの変装(魔法?):何の意味があるのかよく分からないところが面白い。老人のふりをしているのか? それにしては子供が化けているのが丸分かりで可愛い。

●ヒーン : あの顔最高。階段を上れないで首だけ段に乗せて、尻尾をぱたぱた振っているところ最高。それから階段を上りきったソフィーに仰向けに下ろされ、足をばたばたさせて起き上がるところ、メチャ最高。

●老いぼれてしまった荒野の魔女 : ソフィー達が喋っている後ろで、窓からでかい顔出して外を眺めている、そのでかい顔が最高。

 ネットでレビューを読むとみんな言っているように、ストーリーは破綻している。戦争の背景が分からないし、ハウルが戦争にどう絡んでいるのか良く分からないし、主人公達が何をしたいのか良く分からない。ソフィーが急に若返ったり年取ったりするのもよく分からないし、ハウルと荒野の魔女やサリマンとの因縁もよく分からないし、ハウルがみんなに怖がられているのもよく分からない。とくかくあの唐突にとってつけたような結末が分からない。
 それぞれのシーンがなんかバラバラだ。だから酷評する人がいるのも分かる。ストーリー重視する人には「なんだこれ?」の世界だろう。米国メディアのレビューも、「やっぱり凄いが『千と千尋』(米国では"Spirited Away")ほどではない」というのが多い。私も『千と千尋』の方が傑作だと思う。宮崎駿を観たことない人にまず勧めるのは『ハウル』ではないだろう。しかし前に書いた通り、私はスクリーンの上に驚異を現出させる駿マジックを堪能したのでこれでOK。大抵の映画よりよっぽど凄いよ。
 
 ところで話題のキムタク声優だが、ちょっと微妙だった。どうしても頭の中であの声が「ハウル」になりきれなかった。演技が下手だとまでは感じなかったので、私の先入観の問題なのかも知れないが、うまい声優だったら顔と名前をよく知ってる人でもキャラクターに溶け込んでくれるような気もするので、そこまでうまくなかったということかも知れない。どうせ二度、三度観るだろうからじっくりチェックしよう。
    

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