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『マッチ工場の少女』 アキ・カウリスマキ監督 ☆☆☆☆
もはや辛抱たまらず、カウリスマキ・ブルーレイボックスの第一巻も買ってしまった。DVDでほとんど持っているからと思って我慢していたが、やはりブルーレイで観たいとの誘惑に勝てない。おまけに、私が持っているレターサイズの日本版DVDは画面の周りに黒い枠が出るやつで、画面が小さくてフラストレーションがたまる。やはり大画面で観たい。
というわけで入手したブルーレイボックス、さっそく『マッチ工場の少女』を観たがやはり違うぞ。見事に美しい映像だ。DVDではなんだかくすんだような色調と荒いグレインで、内容的にも陰鬱な映画なのでどんよりした貧相な印象があったが、今回のブルーレイによる鑑賞では美しい映像と残酷な物語があいまって鮮烈かつ辛辣な映画として見ることができた。
実際、この作品の色調はむしろ華やかで明るいと言ってもいい。カティ・オウティネンが着る服も赤くひらひらしたドレスだったり春めいたパステルカラーだったり、インテリアや街の風景にも明るい光が溢れている。決して暗くどんよりした画面ではないのだ。カティ・オウティネンもまだ若く、物語は残酷だけれども彼女自身には若さの輝きのようなものがある。
マッチ工場で働くイリス(カティ・オウティネン)は恋人もなく楽しみもなく、家では義父にこき使われる毎日。オシャレしてダンスパーティーに行っても誰からも声をかけられない。ある日ショウウィンドーのきれいな赤いドレスに目を奪われたイリスは、こっそりその服を買って踊りに行く。すると男が声をかけてきて、二人は一夜を過ごす。すっかり彼に恋してしまったイリスは書き置きを残し、電話を待ち、それでも連絡がないとアパートに訪ねていく。「あなたにお会いしたくて」しかし男は冷たく言うのだった。「遊びだよ。全然愛してない」数日後、イリスは自分が妊娠していることを知る。「私を愛することができなくても、子供を見捨てないで」と手紙を書いたイリスだが、男からは小切手が同封された手紙にたった一言。「始末しろ」そして家を飛び出したイリスは交通事故に遭ってしまう…。
不幸続きで、世の中から痛めつけられる一方のイリスが最後にどういう行動をとるかは映画を観てもらいたいが、まあ、バッド・エンディングであることは言うまでもない。カティ・オウティネンがまだ若い娘さんなので余計に痛々しい。後のカウリスマキの傑作、『浮き雲』や『過去のない男』のように沁み入るようなハッピーエンドではないので、その点であまり後味はよくない映画だ。カウリスマキにしてはユーモアが少なく、冷たいアイロニーの方が目立っている。ちょっと底意地の悪い映画で、傑作といわれることもあるが、私はカウリスマキ作品の中では一級品とまでは言えないと思う。ただその気になって観れば、冷たいポーカーフェースの奥に、痛ましい運命の少女に対するシンパシーが感じられないこともない…かな?
カウリスマキの映画はどれもセリフが少ないが、これはその中でも輪をかけてセリフが少ない。ストレートで直截で、寡黙で、残酷で、辛辣な映画である。尖ったナイフのように観客に切りつけてくる。
もはや辛抱たまらず、カウリスマキ・ブルーレイボックスの第一巻も買ってしまった。DVDでほとんど持っているからと思って我慢していたが、やはりブルーレイで観たいとの誘惑に勝てない。おまけに、私が持っているレターサイズの日本版DVDは画面の周りに黒い枠が出るやつで、画面が小さくてフラストレーションがたまる。やはり大画面で観たい。
というわけで入手したブルーレイボックス、さっそく『マッチ工場の少女』を観たがやはり違うぞ。見事に美しい映像だ。DVDではなんだかくすんだような色調と荒いグレインで、内容的にも陰鬱な映画なのでどんよりした貧相な印象があったが、今回のブルーレイによる鑑賞では美しい映像と残酷な物語があいまって鮮烈かつ辛辣な映画として見ることができた。
実際、この作品の色調はむしろ華やかで明るいと言ってもいい。カティ・オウティネンが着る服も赤くひらひらしたドレスだったり春めいたパステルカラーだったり、インテリアや街の風景にも明るい光が溢れている。決して暗くどんよりした画面ではないのだ。カティ・オウティネンもまだ若く、物語は残酷だけれども彼女自身には若さの輝きのようなものがある。
マッチ工場で働くイリス(カティ・オウティネン)は恋人もなく楽しみもなく、家では義父にこき使われる毎日。オシャレしてダンスパーティーに行っても誰からも声をかけられない。ある日ショウウィンドーのきれいな赤いドレスに目を奪われたイリスは、こっそりその服を買って踊りに行く。すると男が声をかけてきて、二人は一夜を過ごす。すっかり彼に恋してしまったイリスは書き置きを残し、電話を待ち、それでも連絡がないとアパートに訪ねていく。「あなたにお会いしたくて」しかし男は冷たく言うのだった。「遊びだよ。全然愛してない」数日後、イリスは自分が妊娠していることを知る。「私を愛することができなくても、子供を見捨てないで」と手紙を書いたイリスだが、男からは小切手が同封された手紙にたった一言。「始末しろ」そして家を飛び出したイリスは交通事故に遭ってしまう…。
不幸続きで、世の中から痛めつけられる一方のイリスが最後にどういう行動をとるかは映画を観てもらいたいが、まあ、バッド・エンディングであることは言うまでもない。カティ・オウティネンがまだ若い娘さんなので余計に痛々しい。後のカウリスマキの傑作、『浮き雲』や『過去のない男』のように沁み入るようなハッピーエンドではないので、その点であまり後味はよくない映画だ。カウリスマキにしてはユーモアが少なく、冷たいアイロニーの方が目立っている。ちょっと底意地の悪い映画で、傑作といわれることもあるが、私はカウリスマキ作品の中では一級品とまでは言えないと思う。ただその気になって観れば、冷たいポーカーフェースの奥に、痛ましい運命の少女に対するシンパシーが感じられないこともない…かな?
カウリスマキの映画はどれもセリフが少ないが、これはその中でも輪をかけてセリフが少ない。ストレートで直截で、寡黙で、残酷で、辛辣な映画である。尖ったナイフのように観客に切りつけてくる。
期待をこめて 中谷明生
akio1985@hotmail.com