アブソリュート・エゴ・レビュー

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エイリアン4

2013-08-24 23:58:19 | 映画
『エイリアン4』 ジャン・ピエール・ジュネ監督   ☆★

 エイリアン4作目。前作でリプリーが死んだのにどうやってつなげるのかと思ったらクローン再生するという大技に出た、今のところのシリーズ最終作(『プロメテウス』はとりあえずシリーズ外と考える)。今回「エイリアン・アンソロジー」を買って久しぶりに観たが、いくつかのグロいシーンを除いて、全然話を覚えていなかった。

 『エイリアン3』が地味映画だったとするなら、『エイリアン4』はグロ映画である。シリーズ中最高のグロさだ。今回私が観たのは例によってスペシャル・エディションで、冒頭の場面は劇場版にあったかどうかもう覚えていないが、男が昆虫を潰して汁を窓につけれそれをアップにするというこの場面から、本作のグロ趣味がすでに全開である。

 過去のエイリアンにも気持ち悪い場面があったが、それは観客の恐怖を掻き立てるための手段であり、目的はあくまで恐怖の醸成だったし、登場人物たち特に主人公のリプリーもその恐怖を観客と共有していた。そこがいわば、「健全」だった。が、この映画ではもはやグロが目的であり、監督はグロに魅了され、グロの描写に耽溺している。だから本作のリプリーはもう人間側ではなく、エイリアン側、つまりグロ側に身を置いている。彼女はエイリアンに共感するし、それだけでなく、終盤ではエイリアンに捕まって繭にされている人間でさえ、エイリアン・ベイビーの誕生を「なんと美しい」と賛美する。これは完全な「倒錯」である。この倒錯趣味が全篇を覆っているところが本作のなんともいえないグロさの源泉であり、これまで「健全」だった他のエイリアン作品との根本的な違いだ。

 そういうわけでグロ場面には事欠かないが、特にグロいのは、リプリーのクローン過程で誕生してしまった畸形たちの陳列室と、最後に出てくるエイリアン・ベイビーだろう。畸形たちの陳列室は監督のグロ趣味炸裂という感じで、まあとにかく気持ち悪いとしかいいようがない。しまいに生きている畸形を出してきた時はげっそりした。そこまでやるか。それからエイリアン・ベイビー。これはエイリアンと人間のあいのこみたいな奴で、不気味な造形ながら神秘的な美をたえたギーガーの硬質なエイリアンとはまったく違い、どろどろした感じで、顔は骸骨みたいだし、まさに気持ち悪いだけのクリーチャーである。しかもこれがリプリーを母と慕い、リプリーも「私の赤ちゃん」みたいに可愛がったりする。しかもしかも、最後にこれが泣き叫びながら体内組織を宇宙空間に吸い出されるという超グロな死に方をする。あー気持ち悪かった。

 その他、エイリアンに殺される人間の死に方や、リプリーが死んだエイリアンの舌(口の中のもう一つの口みたいになってる器官)をわざわざ引っこ抜くなど、気持ち悪い描写がたっぷりだ。一方、エイリアンから逃げる本筋のストーリーの方は定石通りで印象が薄い。実際、今回再見する前に私が覚えていたのは畸形陳列室とエイリアン・ベイビーの死に方だけだった。

 やはり、この監督はエイリアンを題材にグロを追求しただけと思わずにはいわれない。お好きな方だけどうぞ。


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