アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

プロメテウス

2012-07-09 01:05:23 | 映画
『プロメテウス』 リドリー・スコット監督   ☆☆☆

 週末に『プロメテウス』を観た。映画の評価は賛否両論あって、酷評している人も多い。大体において映像重視派は賞賛、物語・脚本重視派は酷評、という図式になっているそうな。では物語・脚本のどこが駄目かというと、謎が放置されたまま映画が終わる、登場人物たちの誰にも感情移入できない、科学者集団の行動がアホ過ぎ、などが欠点として挙げられている。物語がスローペースで眠たい、なんてのもある。

 確かに物語は弱いが、私は駄作とまでは思わなかった。もともと私はオリジナルの『エイリアン』が大好きで、これは通俗的なモンスターものの要素と独特の生理的な忌まわしさに起因するぞっとする感覚、恐怖と不安の感覚が結びついた傑作だったが、その後のエイリアン・シリーズは分かりやすいモンスターものの要素を拡大継承してヒットさせたものの、もう一方の繊細で芸術的な恐怖感覚はきれいさっぱり消え失せ、雑駁なハリウッド娯楽映画となってしまっていた。この映画はそれらと逆で、オリジナルの『エイリアン』からモンスターものの要素を取り除き、暗くおぞましい恐怖と不安の感覚だけ残したような作品になっている。このムードはさすがに『エイリアン』を撮ったリドリー・スコット監督と思わせるもので、私はその一点でそこそこの満足感は得られたのである。

 映画のムード、そして展開はもはや娯楽映画のフォーマットを大きく逸脱している。スロースタートはまったくその通りで、映画の冒頭は『2001年宇宙の旅』のジュピター篇によく似ている。映像の質感は冷たく、神経質だ。開始からしばらく時間がたってもどういう物語になるのか一向に分からない。そして徐々に不気味さが亢進してくるが、分かりやすくクリーチャーが襲ってくるなんてことはなく、宙吊りになったような不安が続く。

 話は『エイリアン』の前日譚「のようなもの」だけれども、エイリアンよりスペース・ジョッキー(『エイリアン』に登場した巨大な宇宙船の中で死んでいた異星人)がメインである。あの天体望遠鏡みたいなのが出てきた時は「おお!」と思ったが、細かいところが説明され尽くして「そうだったのか」と腑に落ちる、なんてことはない。辻褄合わせはなしである。映画は謎だらけのまま終わってしまい、『エイリアン』にそのまま繋がるわけでもなく、天体望遠鏡(に似た何か)の前に座ったスペース・ジョッキーの胸からチェスト・バスターが飛び出さなければならないはずだがそういう場面はなかった。おまけに、ロボットがこっそり持ってきた微生物を人間に飲ませたり、エイリアン的生物に襲われた人間がゾンビ化したり、エピソード相互の関連性がよく見えない。全部謎解きしてくれなくてもいいが、話の全体像が見えないせいで物語の印象は薄い。

 細かいところに説得力がないのも確かで、開腹手術をしたヒロインがすぐに動けるのもそうだが、私がイラついたのはあの科学者たちの行動である。異星探検をする時に、どんな不気味なものが出てきてもとりあえず手で触ろうとする科学者たち。気味の悪いヘビっぽいクリーチャーが出てきても「ハイ、ベイビー」とか言いながら触ろうとする。そして襲われ、「わあー、助けてくれ」。アホですか?

 しかしまあ、とりあえず映像は見事で、さすが『エイリアン』『ブレードランナー』のリドリー・スコットだ。壮麗な光景の連続、目を奪う映像の連発である。色んな意味で。


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2 コメント

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謎です (ゆの)
2012-08-19 02:52:25
エイリアンの前章とは知らず
観ましたが

最初の
人類の親?なる人間が
滝の上で薬を飲んで
遺伝子が崩壊して死んだ
みたいなシーン

自殺?
実験の失敗?
DNAを撒くことで
新たな生物に発展?

いろいろ考えながら
最後まで観ていましたが
あれは
ストーリーのどこに繋がるのか…

解らず終いでした


ホラー映画より怖かった

人類の親?なる人間は
高度な科学はあっても
エイリアンと変わらぬ獰猛な生物
というのは
がっかりさせる展開でした

人類の親?なる人間が
住む星に行く
次回作があるなら
観てみたいと思います

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Unknown (ego_dance)
2012-08-19 10:11:04
確かに全篇謎でしたね。
冒頭のシーンは、あれで地球にDNAをばら撒いたということなんじゃないかと思った記憶がありますが、なぜそう思ったかはもはや記憶が定かではありません。
続編ができるという噂もありますので、気長に待つしかなさそうです。
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