崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

大統領の自殺

2009年05月25日 05時53分44秒 | エッセイ
韓国の前大統領の盧武鉉氏が自殺した。多くの国民は現政府が追い詰めたことによるものと思い、その手先機関の検察(?)に抗議するネチゾンが数十万ほど殺到している。政府は国民葬を決め、李明博大統領も弔問して焼香した。故人の葬儀祭壇が全国的に何か所に設けられている。賄賂事件により捜査されるべき人が自殺によってより英雄化されているようである。
 韓国は伝統的に政治的に犠牲になった人について正義や遵法精神で解釈することは稀である。李氏朝鮮の党争は多くの人を死刑、流配(島流し)をしたが、その罪を認める国民は少ない。ほぼ謀略によるものと思うからであろう。高麗王朝の忠臣の崔塋将軍が李成桂に処刑されて怨恨が強く、神様として民間から崇拝されるようになった。日本では菅原道実が怨霊信仰の対象になり、イエスはユダヤ人に殺されて怨恨強い神にもなったともいえる。このような信仰について私は主著の『恨の人類学』で分析した。今日本の検察もこのような英雄を生み出すのではないかと注意深く見ている。