崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

アカシアの花

2009年05月08日 05時48分47秒 | エッセイ
 朝の散歩道でアカシアの花の満開と香りに、突然生まれ育った故郷が懐かしくなった。アカシアの葉をたくさんとって敷きつめてその上で花を取って食べたり、ままごとをしたりして遊んだ。子供の時には花を美しく思ったことがないのに今になって美しく感ずるのはなぜだろうか。「花より団子」のように花までも食料としたことを思い出す。韓国では山ツツジの花をはじめ菊など花をファジョン(花煎)としていた。花の香りを酒にしたり、食料とするのは世界的にも多い。
 「花より団子」の習慣から「人生の花」の思想は人間文化の原点であろう。動物は花を鑑賞しない。食料とはする。人間には花を美しく感じてきた長い歴史がある。屏風には花鳥が描かれたものが多い。花を描き、歌い、詩を吟味するなどの歴史を踏まえているから花が美の対象として視線に入る。しかし花がただの「屏風の中の花」ではない。その中身は食べた味や香りなどが含まれた懐かしさもある。今私が懐かしく思うアカシアの花は韓国では日本植民地の「悪カシア」といわれたが、私にとってはあくまでも「花は花である」。