崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

雀様と崔様

2009年05月11日 06時08分05秒 | エッセイ
 山道を走る車の前に轢かれそうにいる小雀がいる。おそらく新しく巣立ったばかりの雀のようである。私の苗字の「崔」は「雀」と似ているため、「雀様」になる時が多い。以前、中部大学に在職中の同僚であった台湾出身の王氏と五島列島に一緒に調査に行った時旅館の歓迎の立て看板や食卓上に「王様」と「雀様」の対は、滑稽な思い出として残っている。韓国では雀は家禽な野生鳥であり、それに比したことばも多い。その一つに物忘れをすることを「雀肉(焼き鳥)を食べた」と比喩する。全く忘れたことは烏肉を食べたとも言う。
 人が車に轢かれても雀はひかれない。雀の機敏さと知恵は神秘的である。雀が私を見ているのを注視していると「雀様と崔様の対決」のような、もう一つ滑稽な風景になる。どうしてこの小鳥に知恵と飛ぶ能力が与えられたのだろうか。脳があり、心臓から温かい血液が流れ、それぞれの神経が作用し、立派に生きていると思うと突然小鳥が「雀様」に思える。一匹の蚊の命でも大切に思うべきである。