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最低賃金を巡るいろいろ(笑)

2009年07月25日 16時15分55秒 | 経済関連
前の記事に関連するけど。

日本には、経済学の専門家と称する、米国を見習えという礼賛主義者がいるわけだが、その米国では一体何が行われているか、というと、「最低賃金を引き上げ」である(笑)。こういうのは学者に限らず、経済団体のお偉いさんである大企業経営者なんかもいるわけである。愚かなり。

NIKKEI NET(日経ネット):主要ニュース-各分野の重要ニュースを掲載


この賃金引上げはブッシュ政権時代に決められたもののようであり、07年の5ドル85セントから今年の7ドル25セントまでの、1.4ドル引き上げということになる。5.85ドル→7.25ドルは、何と約24%もの引き上げに相当するのである。日本のマヌケ議論が笑えるかもしれない。

これは、時給600円→744円の引き上げに相当する。
07~08年にかけての米国の失業率は5%以下に落ちたので、賃金引上げは失業率を上昇させるということでもなかったわけである。金融危機以降には失業率がアップしたものの、これは世界同時に起こった変化あるので、どの国でも回避できないであろう。


米国での賃金が市場原理に基づいて伸縮自由なんていうのは、全くのガセネタなんじゃないのか?
それが証拠に、政府支援を受けた企業群でさえ、巨額賃金&ボーナスを止められないじゃないの。業績が急激に悪化したからといって、従業員がそう簡単に賃金引下げに応じたりなんかしないだろ。それは経営陣だってそうなのだよ。そういう「賃金の下方硬直性」が強く働いているからこそ、引下げには至らないんじゃないのか?

これって、新古典派の完敗なんじゃないの?(笑)



賃金に関するbojのペーパー

2009年07月25日 13時07分05秒 | 経済関連
これは中々よい分析ではないかと思った。

賃金はなぜ上がらなかったのか? ― 2002~07年の景気拡大期における大企業人件費の抑制要因に関する一考察 ―:日本銀行


拙ブログでも、過去に賃金に関する記事はいくつか書いてきて、日銀のペーパーは大体想像していた通りであったよ、と思って読ませていただいた。

分析としては、モデルがないので「primitive」(笑)というお断りが書かれていて、学問的にはそういう評価なのかもしれない。しかし、有り得ないような仮想モデルに更なる仮定を積み重ねることの意味は感じられず、そうであるなら日銀ペーパーの如くプリミティブな分析であろうとも、そちらの方にこそ事実を捉える分析結果があるのではないかな、と思った。他の経済学者たちの意見を聞いてみなけりゃ、評価は判りませんが。


参考記事:

価格とULC

デフレ期待は何故形成されたのか・3

続々・イルカはサメになれない~株主と従業員

イルカはサメになれない~補足編

無知が日本を不幸にする



ここ最近、日本の経済学分野への厳しい批判を書いていたが、こういう地道な分析を積み重ねていき、事実を得ることにもっと注力すべきなのでは。
仮説が違ったデータセットでも成り立つ議論なのか、影響度の重み付けはどうなのか、課題点はカバーされるか、或いは分析手法や考え方に批判を加えるべきかどうか、そういうことを複数の研究者が取り組むべきではないかと思う。一本のペーパーで確認できることは多くはないのだから、他の研究者たちの協力は必要であるし、彼らの「追試」に耐えうるものが求められるのも当然なのだ。他の研究者たちからも「同意できる」という評価を得られてこそ、共通理解として認識されるに至るのだから。