3月の短歌メモ。推敲版。
閲兵式の空をやはらかに飛んでゆく 行方知れずの〈姫さま〉の傘
午前一時きつかりに息を呑む間(ま)ありて決まつて鳴り出す事務所の電話
秋原康三(あきはら)が受話器を取るとソファの上(へ)の毛布がズズズと床にこぼれる
きつと風の音に相違ないのだが向かうでは〈もしもし誰かさんですか?〉の声とも
呼吸音とも聴こゆる〈四分三十三秒〉の沈黙のあとの通話を切る音
受話器を手に秋原はソファに寝転がる 尻下には昨日の〈王党派新聞〉
〈姫さま発見〉の報(しら)せは今日も残念ながらなし カップつまんで珈琲揺らす
夜更け過ぎに飲む珈琲の苦さかな スバルはゆつくり梢を渡る
桜森の奥まつた草地にふるへつづけるあれは〈姫さま〉のケータイかもしれぬ
〈姫さま〉を行方知らずにした〈彼ら〉も、行方知れずの〈姫さま〉探す
閲兵式の空をやはらかに飛んでゆく 行方知れずの〈姫さま〉の傘
午前一時きつかりに息を呑む間(ま)ありて決まつて鳴り出す事務所の電話
秋原康三(あきはら)が受話器を取るとソファの上(へ)の毛布がズズズと床にこぼれる
きつと風の音に相違ないのだが向かうでは〈もしもし誰かさんですか?〉の声とも
呼吸音とも聴こゆる〈四分三十三秒〉の沈黙のあとの通話を切る音
受話器を手に秋原はソファに寝転がる 尻下には昨日の〈王党派新聞〉
〈姫さま発見〉の報(しら)せは今日も残念ながらなし カップつまんで珈琲揺らす
夜更け過ぎに飲む珈琲の苦さかな スバルはゆつくり梢を渡る
桜森の奥まつた草地にふるへつづけるあれは〈姫さま〉のケータイかもしれぬ
〈姫さま〉を行方知らずにした〈彼ら〉も、行方知れずの〈姫さま〉探す