カームラサンの奥之院興廃記

好きな音楽のこと、惹かれる短歌のことなどを、気の向くままに綴っていきます。

推敲版。

2016-07-23 19:36:30 | Weblog
3月の短歌メモ。推敲版。


閲兵式の空をやはらかに飛んでゆく 行方知れずの〈姫さま〉の傘


午前一時きつかりに息を呑む間(ま)ありて決まつて鳴り出す事務所の電話


秋原康三(あきはら)が受話器を取るとソファの上(へ)の毛布がズズズと床にこぼれる


きつと風の音に相違ないのだが向かうでは〈もしもし誰かさんですか?〉の声とも


呼吸音とも聴こゆる〈四分三十三秒〉の沈黙のあとの通話を切る音


受話器を手に秋原はソファに寝転がる 尻下には昨日の〈王党派新聞〉


〈姫さま発見〉の報(しら)せは今日も残念ながらなし カップつまんで珈琲揺らす


夜更け過ぎに飲む珈琲の苦さかな スバルはゆつくり梢を渡る


桜森の奥まつた草地にふるへつづけるあれは〈姫さま〉のケータイかもしれぬ


〈姫さま〉を行方知らずにした〈彼ら〉も、行方知れずの〈姫さま〉探す
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