
桜も大分開いてきました。冬の空気もシャキッとしていて好きなので少し惜しみつつ、暖かいのはやはり気持ちいいですね。庄司です。
今回ご紹介するのは水曜午前大人クラスより高橋さんのデッサンです。
ご本人は陽気でいつもクラスを湧かせて下さるのですが、実はとても地道に繊細で美しい線を描く高橋さん。油絵を描かれていたのですが、展覧会で他の方の作品を見て奮起!デッサンを何枚か描いて油絵、のサイクルで行こうと決心してから今回が2枚めとなります。
高橋さんのデッサンは繊細で美しい線の反面、強い調子が少なくまた布なども固い質感でしたので、今作は綿をメインに『やわらかさ』の表現を追求しました。更に綿の白さを際立たせるために今まであまり使わなかったB系の鉛筆を使い暗めの画面にも挑戦です!
そうして完成した作品からは丁寧な鉛筆使いが伝わってきます。暗い画面の中で綿の白が浮かび上がるように主張して美しいですね。はじめは固い質感でしたが、色を重ね最後に練り消しを強く押し付けて、ふんわりとしたやわらかさの表現に成功しました。
リンゴも黒い敷き布に濃い赤ですから、背景に埋もれてしまわないように途中で何度も描き起こしました。画面の中での色の明るさを意識していないといけません。デッサンだけのことではないですが、全体を把握して常に冷静な目を持つことが重要になります。ついつい細部の描写に拘りすぎて一部だけ描きすぎてしまった…ということは誰しも経験がありますよね。気付いた時に離れてみるだけでも、視界が画面でいっぱいになってしまっている時には見えていないものが見えてきます。手を洗ってみるのも感覚がリセットされて良いですよ。
最後に少し手を入れてモチーフの影を長くし、右の空間も境目をぼかしたことにより、寂しさと画面の中の空気感がより高まりましたね。
鉛筆で強い調子の色をのせていくのは、なかなかにためらわれるものだと思います。でも高橋さん、今回の作品でずっと新品のままだった6Bの鉛筆を削ってくれたので満足しております!大変嬉しいです!「いや~暗いところを描くのが楽だね!」とおっしゃっていましたが、そりゃそうですよー!(その場でついツッコんでしまいました)
しかし鉛筆を持ち替えても丁寧さはそのままにこつこつと地道に描くことで、このような美しい色調が生まれたのだと思います。ちょっと苦手だな…という道具もぜひ挑戦してみて下さいね。
さてさて高橋さん、次回は油彩に戻り尾瀬の風景を描く予定です。デッサンで培った力が油絵で発揮されるところが今から楽しみです!