米本 岩絵具・顔彩 / 和紙・パネル
大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、米本さんの日本画の作品です。こちらは長い時間をかけて制作され、ようやく完成しました。
制作中に近しい方に関わる事故があり、当時は絵を描く気力もなくしてしまったそうです。少しずつこの竹の絵と向き合いながら心を静めていかれたのでしょうか、ほの暗い竹やぶは奥に行くにつれ少しずつ明るくなっていきます。この明るい光の部分には銀なども使用されており、上品な輝きを持っています。ところどころに黄緑色も使われているおかげで、絵の中で白が強く出てきてしまうのを抑えているのでしょう。地面の土も細かく丁寧に書き込まれており、歩けば足に柔らかい感触が返ってくる様な質感がよく伝わってきますね。奥に行くにつれ青みがかった色に変化していく竹の色合いも美しいです。下書きの際に竹の位置や大きさに気を使われていた記憶がありますが、そのおかげで竹の配置のバランスも良く、安定した画面になりましたね。顔料そのものの色の良さも相まって、見る人の心の癒しになるような、全体的に優しく穏やかな雰囲気となっています。
生きていく上で、理不尽な悪意や不幸に傷付けられる事は少なくありません。まだ20年ちょっとしか生きてない私には想像も出来ないような事が沢山あるのだと思います。そうした傷の癒し方は人それぞれですが、ミオスで制作に取り組む時間が米本さんにとって少しでも癒しとなって下されば幸いです。