駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

診断学診療に変革を

2019年02月09日 | 町医者診言

      

 

 私はもう五十年近く前に医学部を卒業し沖中の内科診断学を読んだ口なので今の若い先生方とは感覚が違うかもしれないが、それでも所謂診察診断学にはさほどの進歩はないような気がしている。これだけ検査診断が進歩したのに問診と五感を用いた診断法には革命的な変化というか進歩はないようだ。

 まあ中身に大きな変化はなくても運用には変化があったようで、三十年ほど前からは検査に頼り診察を軽んじるというか端折る傾向が出てきた。丁寧な問診は時間が掛かり、特に高齢者は要領を得ず、しばしば病気というよりは悩みというか不幸不運を愚痴るような内容のこともあり、簡単に済ませ検査検査薬薬という対応がでてくるのも分からないでもない。しかし、こうした診療スタイルは折角の専門職の技術を捨てるもので患者さんの満足度も低下するので、多くの医学部で反省がなされ、診察診断技術を磨かせようとする指導や講義の見直しが行われている。それは研修に回ってきている研修医を見ていても感じられる。しかし全体としてはまだ効果が不十分と感じる。特に今中心となって診療している年齢層の臨床医にその傾向があるようだ。

 どうも医学教育では医療費用のことを深刻に考えない傾向がある。教授回診(今でもあると思うが)で漏れなく検査投薬してあることが求められるのは大学病院の使命でも、市中の一般診療では検査検査薬薬の対応は費用対効果が悪く、医療費の高騰に繋がってしまう。医療費に敏感な厚労省がこの点に着目しないのは不思議だ。反論もあろうが、使える医療費をある程度限定すれば医師の腕による補完が働くと思う。私の医院の患者一人当たりの医療費は平均よりも10%ばかり低いのだが、平均以上?少なくとも平均の診療を提供できていると思う。限られた費用で妥当な診療をという方向転換が必要と世間に訴えたい。厚労省に訴えたいと言いたいのだが厚労省は難病で期待薄だ。

 

コメント (2)
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