旅が好きでも、長い休みは取れないのでどうしても新幹線沿線に行くことが多い。それに、年齢のせいか馴染みのあるところの方が疲れないので、東京か京阪神へ行くことも多い。名古屋は大宅壮一が評した大いなる田舎のイメージが付きまとい、あまりお邪魔しない。手堅く実質実利の土地柄なので、買い物には良いかもしれないが。
神戸は震災から復活、昔からのオシャレな港町の雰囲気を今も色濃く留めている。旧居留地などは以前より垢抜けているかも知れない。そのせいか、三宮よりも元町大丸周辺が賑わっている印象がある。美形というのでは秋田には及ばないがオシャレという点では、シックで優れている感じがする。これは人間の女性だけでなく街並み店構えにも言える感じがする。
元町から新神戸までタクシーに乗ったのだが、運転手に「私、最古参で78歳ですわ」と話し掛けられ驚いた。確かにおつむの方が光ってはいたが、「とてもそんな年には見えませんね」と正直に返事をしたことだ。「御夫婦で丁度良い行き先、一番良いお客さんです。今朝の午前二時からで、これで上がらせて貰いますわ、みんなもう止めや言いますけど、九万円の年金ではとても、あと五年は働きますよ」と気炎を上げられた。
成る程そうか、本当に元気なら自分もあと五年は、可能なら十年近く働いても良いかなと遠隔地で思いがけぬメッセージのお土産を貰った。