もう三十年以上前と思うが、「赤信号みんなで渡れば恐くない」と漫才でたけしが言い放って笑いを取った。今でも記憶され、ことわざのように使われる。もっともこの言い回しには単純に笑えない、危ない警句のような意味合いも感じる。
実はみんなで渡っていたために気が付かなかった落とし穴は数多い。いろいろな分野でとあると思うが、医療の分野でもいくつか、単純に踏襲され誰でも何処でもやっていたことが、実は間違いだったり問題があったりということがある。最近ではそれこそトラックに何台も山のように使われてきた下剤の酸化マグネシウムに腎機能を損なうことがあったり、高マグネシウム血症を起こすことがあることが知られてきて、ちょっとした異変が起きている。実は海外では以前から指摘されていたことらしい。
しめたとばかりに新らしい下剤を売り込むメーカーに力が入っている。ひょっとしてお宅くが流布したんじゃないのと言いたくなるほどだ。新しい下剤は、頑固な慢性便秘に効くのだが、お値段は二十倍以上でちょっとというかかなり使いにくい。
酸化マグネシウムというのは常用量が0.6で、見よう見まねでその通りに使ってきたのだが、中には1.5など大量に使ってある場合もあったので、先輩に多いんじゃないですかと聞いたら「馬鹿者、こんくらい出さないと利かない婆さんは山ほど居る」と怒られた記憶がある。そうしたこともあって1.2くらいまでは増量したりして長年使ってきていた。それがここに来て腎機能に要注意となって、慎重に使うようになった。みんなが渡っているからそれで良いと言うことはないのだ。