病診連携という言葉をお聞きになったことがあるだろうか。総合病院と診療所がそれぞれの得意分野を生かしお互いに患者さんを紹介しあって診療してゆく合理的効率的な診療形態のことだ。十数年ほど前から各地の医師会で意識的に取り入れられ、今では厚労省も推進している。
当院は開院当初から、総合病院と診療所の棲み分けを意識し、積極的に病診連携を進めてきた。今では各病院の部長副部長の知遇を得て概ねスムースに連携が出来ている。しかしまあ怖いというか時の試練というか総合病院に病診連携の評価で差が生じてきている。
総合病院に居ると個人診療所の実態は中々わかりにくく、総合病院の医師は個人診療所からは総合病院の内側はわからないだろうと思っておれられるかもしれない。ところが実は手に取るようにと言えば大げさかもしれないが、紹介状の遣り取り、患者の言動から総合病院の実態はよく分かるのだ。
診療所の仲間内ではあそこの対応はもう一つと言われている某病院がある。勿論、中にはきちんと患者と個人診療所の方を向いた先生も居られるので、全部がもう一つというわけではないのだが、そういう印象を醸し出す遣り取りがある。
この患者さんは先生の近隣の方で、安定しているので個人診療所に戻したい、あるいは具体的に先生の所を希望されるのでと、総合病院から送られてくる高血圧症や糖尿病の患者さんが居る。概ね、良好に転院でき順調に診療出来るのだが、その中に年に一人くらいなんだか変わった患者さんだなあ、どうも上手く診療できないという症例がある。色々話を聞いてゆくと、もうここでは診ないので他のところへ行ってくれと言われたとか、私を指名した記憶などないという事実が明らかになる。患者さんの言うことが100%正確ということはないので、多少の脚色はあるかもしれないが、どうも紹介状の中身と違うなあと言わざるを得ない。
難しい病気は総合病院で難しい人物は個人診療所でというバーター関係もあるので、あながち困るというわけではないが、正確でないというか正直でないという印象を受けてしまう。結局、患者と医師の関係と同じで総合病院と診療所にも信頼関係が築けないと良い連携はできない。