駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

所信表明演説を読む

2013年10月16日 | 町医者診言

               

 朝刊で安倍首相の所信表明演説を読んだ。三分で読めるほど拍子抜けする簡素なものだ。経済的に成長してゆくことが日本の生きる道で、それを実行して行きます、それにはやり抜く意志が必要なのです、国民の皆さんもどうぞご一緒にというのが所信内容だ。

 震災被災地の復興に言及しているが、新しい視点や展開はない。外交では積極的平和主義という考え方を打ち出しているが、その意味するところは今ひとつ明確ではない。

 所信表明演説は網羅的で字数も限られているので、揚げ足を取られないように無難で具体性を避けた、方向性や気持ちを示すものになるのだろうと思う。

 しかし、それでも農業に関しては農地集積バンクを明らかにしており、これはTPPへの布石と思われる。また海上保安官や自衛官に対する感謝と誇りの気持ちを表明しているのは積極的平和主義への布石と思われる。

 政治力の源には言葉の運用力があると思う。騙すというと表現が過ぎるかも知れないが、目先の不利益や痛みを越えて、その先の果実を得るには、目先の利益と快に囚われがちな人達を動かさなければならない。そのための便宜に言葉を巧みに操るのは、政治家に欠かせない能力なのだろう。

 確かにそれは騙したように見える。しかしそれを騙されたと非難ばかりしていては万年野党に堕する。将来の果実がどのような物であるか、どのような方策でそこに辿り着こうとするのかを、言葉の裏を読み取って鋭く追求するのが本当の野党の仕事であるし、優れた対案を提示できれば与党になり得る資質があろう。

 下り坂を上り坂と言いくるめれば必ず脱落する人が出てくる。蜘蛛の糸は切れそうで切りたくなるが、果てどうしたものか。

コメント
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