時々本格四川を謳う店へ行く。ここは陳建民の薫陶?を受けた主人が奮闘している。店の壁に陳建民と主人が並んだ黒白写真が貼ってある。二人きりだし、主人が妙に緊張しているので、修行したのではなく何かの折に並んで撮って貰った写真かもしれないと少し疑っている。
麻婆豆腐を注文する、「辛さは控えめにできますよ」。といつも聞かれる。
「そのままでいい」。と答える。担当のウエイトレスによっては一瞬間があることがあるが、何食わぬ顔で頷く。
出てくる麻婆豆腐は、どうしてこれが並みの辛さかと聞きたくなるほど辛い。冬でも汗が出るのだが、当然旨そうにさして辛くなさそうに食べる。本格だから山椒も効いてはいるが、唐辛子が勝っている。陳建一さんに一度試食して貰って、これでいいのかと聞いてみたくなる。私は辛さに比較的強い程度で、劇辛は味と胃を壊す調味と評価していないのだが、ここの麻婆豆腐は劇辛の一歩手前で止まっており、食べ終えた時の爽快感は格別なのだ。
だからいつもこれが本当に並みの辛さなのかなあと疑問を感じつつも、そのままと注文してしまうのだ。ひょっとして臍曲がり同士の対決なのかもしれない。