男と女は狐と狸の化かし合いとよく言われる。結婚後は片目を瞑れとも言われる。いやあどうも片目じゃあ足りないが、両目を瞑っては歩けないのでとお嘆きの方も多いかもしれない。
私は診察室で、総合病院では言えない不満や他院の医師には話しにくい愚痴を色々聞かされる。まだまだ修行が足りないので、いい加減にして欲しいと内心思うこともある。
先日、医者ばかりのちょっと遅めの納涼会で、「どうも病気の訴えよりも愚痴が多くて」と言うと、整形外科のY君が「先生、私は愚痴聞き係と悟っていますよ」。などと言う。彼は私より十歳も若い。「君は偉いなあ」。と感心すると「最近悟ったんです」。と悟りが遅い私に耳の痛いことを言う。尤も、「はいはいと言いながら、メイルを書いていますよ」。とS先生。「愚痴なんて聞いていられないすよ」。と子供から何でも見る神風医者のN先生。
どうも患者さんには愚痴の言いやすい医師とそうでもない医師があるらしい。私は愛想は良くないはずだが、愚痴は言いやすいらしい。愚痴を言うのは何処の医院でも殆ど女性のようだ。私の診察室からの観測では女性が強くなったと言っても、まだまだ虐げられているような気がする。横暴我儘亭主、時には不良息子のあれこれを聞く。八十の女性に、なんでこんな男と言われても、返す言葉がない。
そうは言っても、男は家の女房はとは言いにくいだろうから、圧倒的に女性群が被害を被っているとは言えないかもしれない。このあたりは風評統計の難しいところだ。